ライター
3,000基以上の古墳を巡ってきた古墳シンガーがナビゲート!
「古墳は空から見ないと意味がない」「歴史苦手だから無理」・・・いえいえ、そんなことはないのです。1500年前には16万基も造られたという古墳は、現在でもコンビニの約3倍の数があり、実は今でも身近に残る“誰でも楽しめる”存在なのです。
本記事では、古墳シンガーで「古墳にコーフン協会」会長の私まりこふんが、アツ~い夏にピッタリな古墳の魅力を感じられるスポットをご紹介します。
古墳見学に不向きな夏は、博物館へ「埴輪」を愛でに行こう!/東京国立博物館

▲東京国立博物館の本館
夏は、古墳見学にはあまり向いていない季節です。
遠くからもっこりとしたかわいい墳丘の様子を眺めるだけならば良いのですが、草が生い茂り行く手を阻む上、生き物たちが活発に動き回るので、古墳に登ったり、埋葬施設に入ったりすることは困難。そのため夏は、古墳から出土したものを見ることができる博物館や資料館で古墳の魅力を堪能するのがオススメです。
古墳からは発掘調査によってたくさんの埋葬品が出土しますが、その中でも子どもから大人にまで愛されているのが「埴輪」。これからご紹介する「東京国立博物館」は、そんな埴輪を数多く収蔵するスポットです。

▲考古展示室入り口。埴輪が迎えてくれる
上野駅から徒歩約10分、上野恩賜公園内にある東京国立博物館は“トーハク”の愛称で親しまれる国立の博物館。
「本館」「平成館」「東洋館」など6つの展示館に分かれていて充実の展示を楽しめるほか、レストランもあるので、一日中過ごすことができます。
古墳・埴輪好きの皆さんにはぜひ、平成館1階の「考古展示室」へ、とにかく最初に向かってほしいです。なぜならそこに古墳にまつわるものがたくさんあるからです。
▲考古展示室の埴輪広場
▲埴輪広場はどこを見ても埴輪一色
考古展示室では全国で発掘された貴重な埋葬品をたくさん紹介していますが、ひと際目を引くのはやはり「埴輪」です。

▲円筒埴輪 静岡県湖西市利木出土 古墳時代・5~6世紀
円筒埴輪は古墳の周囲をかたどるように並べられていた。埴輪として一番最初に作られたとされる種類

▲埴輪 切妻造家(祭殿) 宮崎県西都市 西都原古墳群出土 古墳時代・5世紀ほか
家形埴輪は魂のよりどころとして、主に墳丘上に置かれていた

▲埴輪 馬 群馬県出土 古墳時代・6世紀
動物埴輪は写真のような馬の埴輪が有名だが、鳥、犬、猪、鹿などさまざまな種類がある

▲重要文化財 埴輪 盛装女子 群馬県伊勢崎市豊城町横塚出土 古墳時代・6世紀
人物埴輪は埴輪が作られていた時期の中でも後の時期に作られたものが多い。地域によってだいぶ造形が異なる
埴輪は古墳のために作られた素焼きの造形。いろいろな説がありますが、古墳時代前期は古墳を守る魔除けとしての役目、古墳時代後期は埋葬者が悪霊になるのを防ぐ役目として作られたのではないか、と考えられています。
はじめに作られたのは円筒埴輪や家形埴輪などで、動物埴輪や人物埴輪はそれよりだいぶ後に作られたことが分かっています。

▲埴輪 片手を挙げる男子 群馬県伊勢崎市豊城町出土 古墳時代・6世紀
口の曲がり方が尋常じゃない埴輪。悪だくみしていそう・・・

▲埴輪 笑う男子 群馬県伊勢崎市 赤堀村104号墳出土 古墳時代・6世紀
「おなか空いたな~」という声が聞こえてきそうな埴輪

▲重要文化財 猿形埴輪 伝茨城県行方市 大日塚古墳出土 古墳時代・6世紀
背中に子猿が乗っていたのかもしれない跡がある(※現在は展示していません。特別展「はにわ」出品予定)

▲(中央)帽子形埴輪 神奈川県横浜市 瀬戸ヶ谷古墳出土 古墳時代・6世紀
現代の感覚だと「なぜこんな物を埴輪に?」と思ってしまうが、当時帽子は高貴な位を表す物だったらしい
中には写真のように思わず二度見してしまうもの、目が離せなくなるようなものもあります。
よく見ると個性豊かで面白い、一点ものの埴輪などは関東の古墳から出土したものが多いようです。古墳時代の中心、大和政権があった関西から離れていたからこそ、自由な発想による“おもしろ埴輪”が生まれたのかもしれません。
考古展示室とあわせてチェックしてほしいのが、館内に3つある「ミュージアムショップ」。ショップには埴輪グッズが充実しており、新作グッズも不定期に登場しています。ぜひトーハクで埴輪鑑賞を楽しんだ記念に気になるグッズをゲットしてみてください!
全国約50カ所から埴輪が集結!絶対に見逃せない特別展「はにわ」

▲特別展「はにわ」(写真提供:東京国立博物館)
東京国立博物館は常設展示の埴輪だけでも十分に楽しめるので、この夏ぜひ訪れていただきたいところなのですが、10月16日(水)からは埴輪にフィーチャーした展覧会、特別展「はにわ」が開催されるので、こちらも見逃せません!
「埴輪 挂甲(けいこう)の武人」が国宝に指定されてから50周年となることを記念して開催される特別展で、全国約50カ所からさまざまな埴輪が集まる、まさに古墳好き&埴輪好き必見の展覧会。せっかくなので開催に先駆け、見どころをちょっとだけご紹介しましょう。
国宝になった「埴輪 挂甲の武人」には、同じ工房で作られたかもしれないそっくりな埴輪がほかに4体あります。そのうち1体は現在アメリカの「シアトル美術館」に収蔵されているので普段なかなか見ることができないのですが、特別展「はにわ」ではその埴輪もアメリカから里帰り!5体の「挂甲の武人」が一緒に展示されるのは史上初なのだそうです。
「挂甲の武人」5体が並んでいる様はまるでアイドルグループ!最初で最後(かもしれない)はにわアイドルグループのステージに大コーフン間違いなしです。
こちらが5体の中で唯一国宝となった「埴輪 挂甲の武人」。一見すると他の4体とあまり変わらないように思えるのですが、なぜこの1体だけが国宝になったのか。
「埴輪 挂甲の武人」をバラバラに解体して隅から隅まで調べた東京国立博物館考古室主任研究員の河野正訓さんにそんな疑問を投げかけたところ、「たとえば足の部分や靴まで甲(よろい)なのはこの埴輪だけなんですよね。他と比べて精巧さが際立っていて、美術的価値があるんです」。なるほど確かに・・・!
このように一見似ているように感じられても、よく見てみると少しずつ異なり、それぞれに個性があるというのもアイドルグループならでは。よ~く見比べて、自分の“推し武人”を見つけるというのも楽しいかもしれません。
ちなみに現在、考古展示室では特別展の準備のため、「埴輪 挂甲の武人」を含めいつもいるメイン埴輪たちは見ることができません。しかしそのおかげで、普段は収蔵庫にいて見ることができない埴輪たちがたくさん並んでいるのです!
10月からの特別展ももちろん楽しみですが、今だからこそ見ることができる個性豊かな埴輪たちにまずは会いに行ってみてくださいね。

〒110-8712
東京都台東区上野公園 13-9
上野駅
〒110-8712
東京都台東区上野公園 13-9
上野駅

東京国立博物館とセットで立ち寄りたい!上野恩賜公園内の古墳/摺鉢山古墳

▲東京国立博物館から徒歩約7分。地図には「摺鉢山」と書かれている
最後に、東京国立博物館の埴輪鑑賞前後に立ち寄ってほしいスポットをご紹介。実は博物館から上野駅に向かう途中に「摺鉢山(スリバチヤマ)古墳」という古墳が残っているのです。

摺鉢山古墳は全長約70mの前方後円墳で、現状、形はよく分からなくなってしまっていますが、しっかり高く盛り上がっていて摺鉢の形は保たれています。
3カ所に階段が設けられていて、のぼった先にはベンチがあり、ちょっとした休憩所になっています。私が行った時もベンチに座って休憩している人がたくさんいました。緑が多く、古墳浴にもピッタリです。
古墳に興味があって博物館に行くのに、ここを知らずに通り過ぎて帰ってしまうのは非常にもったいない!ぜひあわせて立ち寄って、古墳の魅力を存分に堪能する一日を過ごしてみてくださいね。

〒110-0007
東京都台東区上野公園 5-20
京成上野駅
〒110-0007
東京都台東区上野公園 5-20
京成上野駅

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※本記事内の情報は2024年07月29日時点のものです。掲載情報は現在と異なる場合がありますので、事前にご確認ください。
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