シュウマイ研究家がナビゲート!

シュウマイを長く食べ続けるため「焼休日」を設けるほど、ほぼ毎日シュウマイを食べ続けている、シュウマイ研究家のシュウマイ潤です。この連載では、今まさにブームになりつつあるシュウマイの王道、新鋭、さまざまなシュウマイ名店を紹介します。

 

今回は「トレンドのシュウマイ酒場ならココ!」ということで、東京・渋谷にある「KAMERA(カメラ)」を紹介します。

中華、フレンチ、アジア…遊び心が詰まった多様なシュウマイたち/KAMERA

▲写真左「富士鶏と豆腐の水焼売」、写真右「鳳凰単叢(ホウオウタンソウ)」

▲写真左「富士鶏と豆腐の水焼売」、写真右「鳳凰単叢(ホウオウタンソウ)」

今回ご紹介するKAMERAは、近年増加する「シュウマイ酒場」において、さらに先のトレンドを創造する、次世代シュウマイ酒場の象徴ともいえる存在であります。


まず上の画像を見て「これがシュウマイ?」と驚かれた方もいるでしょう。こちらは「富士鶏と豆腐の水焼売」(550円)といって、いわゆる「水餃子」のようなスープで浸したシュウマイのこと。近年、新たなシュウマイを提供する形態が増え、水シュウマイはその一つですが、定番化しているのはまだ数えるほどです。


さらにKAMERAが他のシュウマイ酒場と大きく異なるのが、写真右に写っているウーロンハイをシュウマイと合わせること。

▲KAMERA外観

▲KAMERA外観

これは、全国のシュウマイ専門店を食べ歩いた私でも、一軒として同じスタイルを提案する店に出合ったことはありません。それ以前に、ウーロンハイをメインに提供する店自体、これだけ多様な飲食店がある中で、見かけることは皆無。


それをあえてシュウマイという、まだ酒場において目玉となることは少ない存在を合わせるという挑戦的姿勢。しかも、このシュウマイとウーロンハイという「シュウマリアージュ」が見事に合うんです。


初めてこの店でシュウマイとウーロンハイをいただいた時、正直、これはシュウマイ酒場の新しい流れがはじまるなと確信しました。

  • ▲「岩茶武夷水仙」

    ▲「岩茶武夷水仙」

  • ▲「四季春」

    ▲「四季春」

ちなみにウーロンハイは、中国茶の専門家が茶葉の選定から淹れ方までを監修。あわせる焼酎もウーロンハイの風味を最大限引き出すため、福岡の麦焼酎蔵に製造を依頼したオリジナルです。


私がここに連れてくる大半の人は、シュウマイの前にウーロンハイを飲んで、その完成度の高さと未知なる味わいに衝撃を受けます。それほどのインパクトと美味しさがあるのです。


KAMERAオリジナルのウーロンハイは3種(すべて715円~)。写真は芳醇な「岩茶武夷水仙(ガンチャブイスイセン)」。他にいわゆる熟成の進んだ風味ながらあっさりとしたあと口の「鳳凰単叢(ホウオウタンソウ)」、緑茶のような爽やかさあふれる「四季春(シキシュン)」があります。

従来の常識に囚われない創造性あるシュウマイ

攻めてるのに全てが絶品!渋谷のシュウマイ酒場「KAMERA」_1244049

と、このままだとウーロンハイが名物のお店という印象が強くなってしまいそうですが、あくまでKAMERAはシュウマイ酒場。冒頭の水シュウマイにとどまらず、あらゆるシュウマイに個性とそれに負けない裏付けのある美味しさが存在します。

 

私が取材した2023年8月現在、定番メニューのシュウマイは5種。


看板メニューである「山形豚の熟成焼売」(550円)と「子羊と黒米の熟成焼売」(770円)、先の「富士鶏と豆腐の水焼売」に加え、後から定番に加わった「蟹といくらの焼売」(1,100円)、「海老の水焼売」(770円)です。

▲KAMERAの看板シュウマイ「山形豚の熟成焼売」

▲KAMERAの看板シュウマイ「山形豚の熟成焼売」

はじめてKAMERAを訪れた際には、必ず看板シュウマイの「山形豚の熟成焼売」は注文していただきたいです。


見慣れた中華せいろで登場するので、中華的なシュウマイを想像しますが・・・せいろを開けると、その要素はゼロではないものの、和風でもあり洋風でもありアジアンでもある、シュウマイという料理の多国籍性を表したような見た目で登場します。


豚肉は熟成というだけあり、肉肉しさは少し落ち着き、むしろしみじみとした豚のうま味が感じられます。そして最大の特徴は、添えられているトマトソース


熟成された豚肉とともにいただくと、一瞬洋風な肉料理のように思えます。しかし包まれている皮がシュウマイのものだからか、絶妙なバランスでしっかり“シュウマイ”になっているのです。この見事なバランス感覚に、シェフの技術とシュウマイへの愛を感じます

▲もう一つの看板シュウマイ「子羊と黒米の熟成焼売」。美味しさのあまり同行した編集担当さんはおかわりしていました

▲もう一つの看板シュウマイ「子羊と黒米の熟成焼売」。美味しさのあまり同行した編集担当さんはおかわりしていました

そして、初回は冒頭の水シュウマイも食べていただきたいので、もう1種類ほどシュウマイを食べるとすれば・・・ぜひ「子羊と黒米の熟成焼売」を注文してください。

 

羊のシュウマイは、中華の枠組みを超えた次世代シュウマイの“先駆者的存在”。同じく渋谷のシュウマイ酒場の先輩にもあたる「焼売酒場小川」をはじめ、最近注目を集める「ガチ中華」の北京系の料理店でも見られるようになりましたが、KAMERAのシュウマイは全く異なったアプローチで非常に面白いです。

 

羊肉は店の機械でミンチしているため、他店より荒めで密度が高く、ガッチリとした噛みごたえ。それでいてスパイスを上手く効かせているため、羊肉の個性を程よく残しつつも臭みは一切ないのです。シュウマイの例えとしては適切ではないかもしれませんが、“上質な羊肉のソーセージ”を味わっているような錯覚に囚われます。


しかし、そこもシェフのシュウマイ愛がなせる技か、表面をコーティングした黒米による食感と蒸されたことによる風味が、やはりシュウマイ。さらに、ともに提供されるスパイスの効いた辛味ダレ(写真左)が、肉感あふれる羊肉の風味を一段と際立たせます。

サイドメニューも店内の雰囲気も、挑戦的かつ大満足のクオリティ

  • ▲「特製よだれ鶏」(1,100円)は鶏肉のコンフィをフルーツ風味のソースでいただく

    ▲「特製よだれ鶏」(1,100円)は鶏肉のコンフィをフルーツ風味のソースでいただく

  • ▲右「干し豆腐とツルムラサキ(季節限定)のナムル」(605円)、左「自家製昆布きゅうり」(605円)

    ▲右「干し豆腐とツルムラサキ(季節限定)のナムル」(605円)、左「自家製昆布きゅうり」(605円)

  • ▲「岩海苔ときのこの春巻き」(715円)はたっぷりの粉チーズが

    ▲「岩海苔ときのこの春巻き」(715円)はたっぷりの粉チーズが

  • ▲「お茶ティラミス」(660円)。ほうじ茶の風味ながらしっかりとした甘さ

    ▲「お茶ティラミス」(660円)。ほうじ茶の風味ながらしっかりとした甘さ

シュウマイとウーロンハイという意外な組み合わせにもその一端が表れているように、KAMERAは現時点での東京、ひいてはアジアの先進的な要素が凝縮されたお店と言えます。さらに各要素は(あくまで私が経験している中で)どれもかなり高いレベルにまで達していながら、それでいてカジュアルに利用できる店だということが大きな魅力です。

 

実際、シュウマイ専門家としては悲しいですが、常連とおぼしきお客さまはシュウマイはほどほどに他の小皿料理をメインで楽しまれている方が多い印象・・・。それくらいどの料理もクオリティが高いんです!中華・フレンチ・和それぞれの要素が良い塩梅で融合されつつ、小技も効いていてとにかく美味しい

 

ドリンクもウーロンハイのみならず、「ジャスミンハイ」「金木犀緑茶ハイ」など多彩な酎ハイがあり、さらにナチュラルワインも豊富で、日本酒にもこだわっています。さまざまな“シュウマリアージュ”を試すこともできます。

▲写真提供:KAMERA

▲写真提供:KAMERA

さらにさらに。店内はスタイリッシュかつネオアジアな要素が融合した空間。私前後の年代(40〜60代の昭和世代)がシュウマイがある店=町中華的空間を想像して行ったら、間違いなく腰を抜かします。


そのため、お客さまの中心は20~30代のまさに渋谷のトレンドの中心にいる女性たち。その人々が楽しげに、シュウマイとウーロンハイを食べている光景を見ているだけで・・・シュウマイ不毛時代からシュウマイを食べ続けている私としては、感慨深くもう一つシュウマイとウーロンハイを頼んでしまいたくなります。

 

最後に。店名の由来は、三軒茶屋「Bistro Rigole」出身の亀谷剛シェフと、オーナーの目良慶太さんの名前から取った2文字「亀良=KAMERA」をつなげたもの。初めての誰かを連れて行くとき、会話の小ネタとして頭の片隅に置いておいてください。

スポット
KAMERA

〒150-0043
東京都渋谷区道玄坂 2-20-5 1F

渋谷駅

〒150-0043
東京都渋谷区道玄坂 2-20-5 1F

渋谷駅

本記事内の情報に関して

※本記事内の情報は2023年09月20日時点のものです。掲載情報は現在と異なる場合がありますので、事前にご確認ください。
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