シュウマイ好きシュウマイジャーナリストがナビゲート!
シュウマイを長く食べ続けるため「焼休日」を設けるほど、ほぼ毎日シュウマイを食べ続けている、シュウマイ研究家のシュウマイ潤です。この連載では、今まさにブームになりつつあるシュウマイの王道、新鋭、さまざまなシュウマイの名店を紹介します。
今回は「ホテル中華のシュウマイを味わうならココ!」ということで、横浜にある「桃花苑(トウカエン)」をご紹介します。
ホテル中華で味わう至高のシュウマイたち/桃花苑

私は中華料理研究の専門家ではないということを前提に、シュウマイを提供する中華料理店に限定して分類すると、大きく「お店の中華系」と「ホテル中華系」の二つに分けられます。
前者は、一部は高級スタイルであるものの、基本的には麺類やご飯類、炒め物や点心、定食など、日常で食べるカジュアルなメニューを提供する、いわゆる「町中華」と呼ばれる店が大半です。そのシュウマイは比較的シンプルな具材で構成され、味付けも控えめ。毎日食べても食べ飽きないものが多いです。
一方、後者はホテルの宿泊や結婚式などの利用客に向けた、「ハレの日」の普段食べないような豪華食材や、凝った調理法のメニューが中心。そのシュウマイは、具材そのものが「ハレの日」仕様のものだったり、シンプルな具材であっても味付けに一味も二味もこだわりを込めて「ハレの日」用に仕上げているものが多いと感じます。
もちろん、これらのどちらが良いという問題ではなくて、どちらもシュウマイとしては欠かせない存在ですが、ただ、どちらのタイプにも共通するのは、シュウマイのメニューが1種類であること。そもそもシュウマイがメニューにある方が少数派であり、あっても、数あるメニューの中の一品で、それほど力を入れているところは決して多くはありません。
とはいえ、「お店の中華系」のなかにはその1種のシュウマイの個性や特徴を打ち出し、看板メニューに掲げるところもありますが、「ホテル中華系」はどんなにこだわったシュウマイがあったとしても、あくまで脇役的存在にとどまっている傾向が強いように感じます。
そんななかでもシュウマイの聖地・横浜にある老舗「ホテル横浜キャメロットジャパン」の直営中華料理店「桃花苑」は、ハレの日中華を提供する「ホテル系中華」の一つでありつつも、シュウマイを看板メニューとして掲げる、非常に貴重な存在であります。
王道肉シュウマイはキングサイズでさらにワイルドに

▲「肉シュウマイ」の断面。豚肉、玉ねぎのシンプルな構成
「桃花苑」のシュウマイは全部で7種。
まず、基本の「肉シュウマイ」はオーソドックスに豚肉、玉ねぎを基本の具材としながら、貝柱を贅沢に用いており、1個が約30gと大きめ。噛み締めると、豚肉、玉ねぎのうま味とともに、貝柱のうま味が相まった、濃密かつ複雑なシュウマイの味わいが口中に溢れ出します。食感はかなりしっかり目で、肉料理を食べているという満足感も同時に感じられます。
その特徴と美味しさをさらに大胆に味わえるのが、「桃花苑特製シュウマイ」。素材の構成は基本の肉シュウマイと同じでありながら、その大きさは約60gと倍量。一般的に30gでもシュウマイとしては大きな部類に入りますが、60g級を定番として提供する飲食店は、私の知る限りでも数えるほどしかありません。
そして、この規格外の大きさのものを食べると、シュウマイという料理において「大きさ」が、味わいに大きな影響を与えることがよくわかります。
当然ながら、一粒のなかの肉の分量自体が多く、そのため、肉のうま味や食べた時の満足感が、基本の30gよりもより強く感じられます。また、皮の面積も大きいので、皮の食感、風味もよりくっきりと感じられるようにも思えます。
そして、サイズが大きいおかげか、シュウマイに「かぶりつく」というワイルドに食べる楽しみ方も。一口サイズ、せいぜい二口で食べられるシュウマイにおいて、こうした楽しみが感じられるのも、キングサイズの魅力の一つと言えます。
もち米を使った本場点心スタイルやエビ、カニなど豪華具材も

▲「珍球団子(もち米シュウマイ)」の断面。赤く色づいたもち米の皮には、中身の肉のうま味がうつり、食感もジューシー
大きさ違いの肉シュウマイ2種に加え、5種のシュウマイからはさらなる「ホテル系中華」らしい「ハレの日中華」の引き出しの多さが感じられます。
まず、見た目の華やかさ。
私は過去7年間で1,500種類以上(2022年10月現在)のシュウマイを取材し続けてきましたが、どのシュウマイも、基本的に見た目が地味です。その理由は、小麦の皮一色という、色彩の単調さにあります(そのシンプルな佇まいがまた侘しくていい、とも言えるのですが・・・)。しかしこの店の5種は、赤・黄・緑・ピンクと鮮やかな色彩を演出、「観て食べる」楽しみがあります。
そして、1種ごとの味わいは、見た目以上の多彩な個性と内容。赤色の「珍球団子」は、小麦の皮の代わりにもち米で具材を包む、本場中国では珍しくない点心の調理法で作られたもの。もち米が中身の豚肉の余分な脂身などを吸収し、程よいバランスで具材のうま味を引き出してくれます。さらにそのうま味を吸収したもち米自体が、ジューシーな食感を倍増させてくれます。
黄色の「花咲焼売」は、こちらも小麦の皮の代わりに錦糸卵を刻んだもので包まれており、緑色の「翡翠焼売」は、ほうれん草を練り込んだオリジナルの皮を使用。
前者は錦糸卵が適度な甘みを余韻に残し、後者の皮は厚めに仕上げているため、それぞれ味の中心が真ん中(具材部分)にありながらも皮の風味と食感も加わった、重奏的な美味しさが感じられます。そしてそれぞれの具材も「ホテル系中華」的な多彩かつ贅沢な食材を使用。それが何なのかは、ぜひ食べて確かめてみてください。

▲「上海蟹焼売」の断面。カニのほぐし身がたっぷり混ぜ込んであるのがわかる
残り2種は、まさに「ハレの日」中華ならではの贅沢な世界観が凝縮。「エビ焼売」は具材がほぼエビで構成され、切り身、焼売の肉餡がミルフィーユ状に重なり、2種の食感が同時に楽しめます。
「上海蟹焼売」も、具材に贅沢にカニのほぐし身と上海蟹の味噌を混ぜ込んでおり、そのうま味の凝縮具合は、ある意味、カニ単体で食べるよりも密度が濃く感じます。とくに秋から冬にかけての季節は、カニのうま味、香りともに一層強くなるそうで、その時季はカニ単体だけでなく、シュウマイも食べ忘れないようにしましょう。
シュウマイを引き立てるお酒と「食べる辣醬」

▲七種のシュウマイにはお酒と「食べる辣醬(ラージャン)※右中の調味料」は忘れずに
中華料理では、エビ、カニなどの魚介はもちろん、豚、鶏、牛などの肉料理も多彩で、なかでも「ホテル系中華」はそれらを豪華な形で味わえるワケですが、問題が一つ。それは、大皿料理が中心であり、どんなに大勢で卓を囲んだとしても、一度に食べられる食材や料理を取捨選択しなければならないのです。
しかし、この「七種のシュウマイ」であれば、「ホテル系中華」でしか食べられない多彩かつ贅沢な食材の美味しさを、蒸すというシンプルながら食材の個性をストレートに味わえる調理法で、一度に楽しむことができます。ただ、全てを食べると300g近くの肉料理を食べることになるので、数名でシェアしながら食べるのがオススメです。
そして、この「七種のシュウマイ」をより引き立てるのが、お酒の存在。ビール、サワー、ハイボール、紹興酒・・・・どのお酒にどのシュウマイがピッタリ来るのか、お酒との「シュウマリアージュ」をイメージしながら味わうのも、「七種のシュウマイ」の楽しみ方の一つだと思います。
そして、ともに食べるのを忘れてはならないのは、この店の料理長・阮(げん)さんが10年をかけて独自開発した「食べる辣醬(ラージャン)」。唐辛子、干し海老、ガーリック、ナッツ、揚げ葱などが絶妙なバランスで構成された辛うま調味料で、シュウマイにつけると、そのものの濃密なうま味とともに、それぞれのシュウマイの異なるうま味、風味も見事に引き出してくれます。
ちなみに、シュウマイだけでなく卵ご飯などに添えても美味。お土産としても購入できるので、まずはシュウマイとともにお試しを。
中国料理 桃花苑
所在地 :神奈川県横浜市西区北幸1-11-3 ホテル横浜キャメロットジャパン2F
電話番号:045-312-3490
最寄駅 :横浜
ライター
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※本記事内の情報は2022年12月19日時点のものです。掲載情報は現在と異なる場合がありますので、事前にご確認ください。
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