ほぼ毎日シュウマイを食べるシュウマイ研究家がナビゲート!

シュウマイを長く食べ続けるため「焼休日」を設けるほど、ほぼ毎日シュウマイを食べ続けている、シュウマイ研究家のシュウマイ潤です。この連載では、今まさにブームになりつつあるシュウマイの王道、新鋭、さまざまなシュウマイ名店を紹介します。


今回は「シュウマイとワインを味わうならココ!」という、東京・渋谷にある「焼売酒場小川」です。

今日の焼売酒場スタイルの先駆者/焼売酒場小川

▲前身の「ミニヨン坂ノ上」から定番メニューの「岩中豚 特製焼売」

▲前身の「ミニヨン坂ノ上」から定番メニューの「岩中豚 特製焼売」

今回は「ワインとシュウマイを味わうならココ!」ということで、東京・渋谷にある「焼売酒場小川」を紹介します。

 

ここ数年、東京を中心とした都市部では、シュウマイをメインとした「焼売酒場」スタイルの飲食店が増加しています。私が把握しているだけでも、関東圏だけでも50店舗前後はあると推測できます。なかにはエリアを代表する人気店になっているところもあり、「焼売酒場」が一つの飲食ジャンルとして定着しつつあるといえます。

 

私は2015年ごろから全国各地のシュウマイを食べ歩いてきましたが、当初は「焼売酒場」はもちろん、そもそも「シュウマイ」をメインにした飲食店自体、片手で数えられるほどでした。その頃を思い出すと、感慨深いです。

 

そんな私の感傷は置いておいて、「焼売酒場」人気の要因の一つに、「さまざまなお酒に合う」ということがあるといえます。ビールやレモンサワーなどにももちろん合いますが、ハイボール、焼酎、日本酒、さらにはワインにも合うことが分かってきて、人気の「焼売酒場」では、そうした従来の常識にとらわれないお酒とシュウマイとのマリアージュ(=シュウマリアージュ)を、積極的に提案している店も見られます。

 

なかでも最も革新的なシュウマリアージュは、ワインとの組み合わせでしょう。シュウマイのルーツは中国であり、現在も日本でシュウマイを提供する店の多くは中国料理店。そこでワインと合わせるという発想自体出てきませんし、中国料理の味付けでは、ワインよりも紹興酒など、中国のお酒の方が合う印象が強いです。

 

しかし、そのあり得ない「シュウマリアージュ」の扉を開いた先駆者が、今回紹介する「焼売酒場小川」です。

元ビストロシェフの発想から誕生したシュウマイ

▲右下から時計回りに「岩中豚 特製焼売」「季節焼売 鴨」「変わり焼売 羊」の断面。「特製焼売」は肉も玉ねぎも粗挽きでありながら一体感があることがわかる

▲右下から時計回りに「岩中豚 特製焼売」「季節焼売 鴨」「変わり焼売 羊」の断面。「特製焼売」は肉も玉ねぎも粗挽きでありながら一体感があることがわかる

「焼売酒場小川」のオープンは2019年。しかし、その前身は「ミニヨン坂ノ上」という和風ビストロであり、その時代から肉シュウマイ(現在の名称は「岩中豚 特製焼売」)は、名物メニューとして定着していました。

 

現在の店名の「小川」は、ミニヨン時代からシェフを務める小川将さんの名前に由来します。小川さんは、ミニヨンの前からフレンチレストランなどで腕を磨き、料理の考え方は今でもフレンチ的思考だと言います。実際、今も店で提供される料理の多くは、和風なつまみではあるものの、ビストロ的な調理、味付けのアクセントが随所に散りばめられています。

 

看板メニューの「特製焼売」は、一般的なシュウマイよりも大型(40g前後)。粗めに刻まれた、商品名にも冠されている東北のブランド豚「岩中豚」とタマネギが、ほどよい硬さを残したバランスで一体化し、噛んだ瞬間、しっかりとした噛み応えがありつつも、その後はほろりと粗挽き特有の気持ちよい食感が残り、岩中豚とタマネギのうま味が濃密に広がります。

 

「特製焼売」のうま味は、独自のスパイスや隠し素材により、「岩中豚」やタマネギの素材の力がグッと引き出されています。その材料や手法は、いわゆるシュウマイの本場である中国料理はもちろん、フレンチにすらとらわれない自由な発想であり、どこか別のひき肉料理を食べているような感覚にも陥ります。

中身の具材もタレも、従来の価値観にとらわれない

▲「揚げ焼売」は「特製焼売」を平たく形成して揚げている。つけるのはぽん酢

▲「揚げ焼売」は「特製焼売」を平たく形成して揚げている。つけるのはぽん酢

「特製焼売」はミニヨン時代からあるシュウマイですが、「焼売酒場小川」になったことで、さらに個性的なシュウマイが生まれることになりました。

 

一つは、羊肉を使った「変わり焼売 羊」、もう一つは、鴨肉を使った「季節焼売 鴨」。どちらも過去にシュウマイに使われることがほとんどなかった肉食材でありつつも、見事に小川さんのフレンチ的な手法で羊、鴨の肉の個性を出しつつ、シュウマイらしい余韻もしっかりと出すことに成功しています。

 

さらには「岩中豚の揚げ焼売」も追加。基本となる中身は「特製焼売」と同じですが、平たく形成して揚げることで、メンチカツ的な香ばしさやジューシーさが加わりながら、口の中には、しっかりとシュウマイらしい風味が残ります。

 

シュウマイにつける「つけだれ」も、小川さんは従来の枠組みにとらわれない「マリアージュ」を提案しています。

 

「特製焼売」には、醤油とともに「山椒」を提供。一般的な「醤油+からし」の場合も、からしが味のアクセントとなっていますが、その役割を「山椒」が代行することで、スパイス的な効果も加わり、豚肉のうま味がさらに増幅する印象です。

 

「羊」には「トマトとパセリのソース」、「鴨」には「ほおずきと辛子のソース」を提供。ほうずきによって従来のシュウマイにはなかった「甘み」も加わりますが、羊肉、鴨肉、それぞれの持つうま味や個性を見事に引き出し、それでいてシュウマイらしさを損なわない、絶妙のバランスになります。

 

ちなみに「揚げ焼売」にはポン酢を合わせます。羊や鴨のソースに比べると普通に感じるかもしれませんが・・・揚げることで蒸すよりも若干くどさが残るシュウマイを、ぽん酢によりさっぱりと食べることができます。見事な「マリアージュ」です。

ソースを合わせるように、お酒も自由な発想で合わせる

「焼売酒場」が定着しつつある今でこそ、これまで紹介してきたような多様なシュウマイの中身やソースは珍しくなくなってきていますが、「焼売酒場小川」ができた頃の2019年は、そんな多様な挑戦をしている店は数える程。言い換えれば、この店は今日の「シュウマイの多様性」に挑戦した、「シュウマイ業界の革命児」と言えるのです。

 

とはいえ、前出の「トマトとパセリのソース」「ほおずきと辛子のソース」のような発想は、今日の「焼売酒場」でもまだほとんど見られません。土台にあるフレンチのアプローチ自体が珍しいこともありますが、引き続き「シュウマイ業界の革命児」として、新たな挑戦を続けて欲しいと願います。

▲「特製焼売」には白ワインの「シュウマリアージュ」を。写真は「一升瓶ワイン」

▲「特製焼売」には白ワインの「シュウマリアージュ」を。写真は「一升瓶ワイン」

さて、前置きがなくなりましたが、そんな自由な発想で新たなシュウマイを作り上げてきた小川さんですが、合わせるお酒も同じような感覚で、常識にとらわれない提案をしています。

 

「特製焼売」には、ミニヨン時代から「白ワイン」との「シュウマリアージュ」を提案。肉料理なので赤ワイン?と思いきや、独自のうま味とスパイス、さらには山椒が、白ワインのすっきりとした酸味とマッチし、豚肉のうま味を膨らませます。それだけではなく、肉特有の個性を程よくカットし、さらにもう一個シュウマイを食べたくさせてくれます。

 

「羊焼売」「鴨焼売」も、ワインが見事に合います。「特製焼売」よりも赤ワインの相性が良いですが、個人的には白ワインとの「シュウマリアージュ」が好み。おそらく、どちらもソースの風味が白ワインに合うようで、私はシュウマイを食べ終わった後でも、ソースをつまみに白ワインをちびちび飲んでいました。

 

そんなわけで、一時期、白ワインばかりを飲んでしまい、最近では日本酒、山椒サワーなどに浮気することも多いですが(これらもまたこの店のシュウマイたちに合うから不思議です)、「焼売酒場小川」のシュウマイの個性を最初に体感するのであれば、まずは白ワインとの「シュウマリアージュ」をぜひ試してみてほしいです。

▲シュウマイと並ぶ定番メニューの「ダッチオーブンで焼く玉子焼」

▲シュウマイと並ぶ定番メニューの「ダッチオーブンで焼く玉子焼」

最後に、この店のもう一つの看板メニューが「ダッチオーブンで焼く玉子焼」。従来の玉子焼きの概念を覆すふんわり感と、卵の風味とうま味をじっくり味わえる名品で、存在感あるシュウマイたちとも絶妙な相性を見せます。もちろん、こちらもワインに合いますので、「シュウマリアージュ」のお供にぜひとも。

焼売酒場 小川
  • 所在地

    東京都渋谷区渋谷3-1-10

  • 最寄駅

    渋谷

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※本記事は2022年11月23日時点の情報です。掲載情報は現在と異なる場合がありますので、事前にご確認ください。
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