日本刀を学び、じっくりと鑑賞できる刀剣専門の博物館
日本刀は近くでじっくり鑑賞することで、一つ一つの異なる味を楽しめます。つまり、周りに流されることなく動けるソロ行動は、日本刀の鑑賞にぴったり! そこで、今回は名刀を鑑賞できる都内の2大スポットを紹介したいと思います。
まずは初台にある、刀剣専門の博物館「刀剣博物館」。公益財団法人日本美術刀剣保存協会の付属施設で、国宝や重要文化財を含む刀剣を初め、刀装・刀装具といった刀剣の外装や、甲冑に金工資料など貴重な約190点を所蔵しています!
やはり「とうらぶ」の影響か、最近は若い女性が一人で訪れることも多いそうで、筆者が訪問した日もソロの方をちらほらと見かけました。
▲施設の2階が展示室になっています。
展示室は2階。壁面が展示ケースになっていて、ゆったりとした間隔で展示してあるので、一つ一つをじっくり鑑賞できます。案内をしてくれた同館の学芸員の田中宏子さんによると、刀剣を鑑賞する際のポイントは以下の3つ。
【刀剣鑑賞のポイント】
(1)姿
(2)地鉄(じがね)
(3)刃文(はもん)
まず、1つ目の姿。これは、棟(背の部分)の反り具合や刀身の幅や厚さ、鋒(きっさき/先のとがった部分)といった、日本刀全体の形状のこと。日本刀が誕生してから1000年ほど経ちますが、姿からは作られた時代などが読み取れるそうです。
たとえば、平安時代後期から室町時代初期まで使用された刀剣は、太刀(たち)と呼ばれます。太刀は馬上戦での使用を想定したもの。馬の上から相手を切りつけやすいように刀身が長めに作られています。当時、太刀は刃を下にして腰に下げていたため、展示も刃を下にして飾ってあるそう。
▲国宝「太刀 銘 国行(来)」/刀剣博物館所蔵 2016年3月27日(日)まで展示。
上の写真は鎌倉時代中期の太刀、国宝「太刀 銘 国行(来)」。長さは二尺五寸三分……76.6cmほど。とても優美な姿で思わず息を飲みましたが、「とうらぶ」に出てくる明石国行の元と気づいてからは若干鼻息荒く鑑賞してしまいました。
ソロだとミーハー丸出しでも引かれないから安心ですね! もちろん、鑑賞の際は夢中になりすぎて周囲の迷惑にならないようにお気をつけて。
ちなみに、刃を上にして展示してある日本刀もあります。こちらは、刀(打刀)。馬上戦闘が減った室町時代中期以降から江戸時代にかけて作られた日本刀で、歩兵戦で扱いやすいように、長さが短くなっているのが特徴です。
洋服や生活と同じように、日本刀の姿も時代に合わせて変化していたとは、おもしろいですね。
▲作品を置く間隔が広いので、一口ずつじっくりと鑑賞できます。
さて、ポイントの2つめは「地鉄(じがね)」そして、3つめが「刃文(はもん)」です。この2つには、流派や刀工などの特徴がよく表れるそうです。
地鉄は刃の上にある黒っぽく見える部分のこと。地鉄をよく見ると、波打つようだったり木の年輪のようだったりと、細かな文様が見えてくるそうです。
一方の刃文は、切れ味をよくするための焼き入れという工程で生ずる模様のこと。日本刀の刃の部分は白っぽく見えますが、その白っぽい部分と地鉄との境目は、一点一点、形が違っていて刀剣の個性がよく表れています。
▲重要美術品「太刀 銘 来国俊 元亨元年十二月日」/刀剣博物館所蔵 2016年3月27日(日)まで展示。
▲近づくと、地鉄や刃文など刀剣の個性を示す部分も鑑賞できる
2つのポイントは、正面からだけではなく、屈んだり左右から覗き込んだりと、じっくりと見つめると発見があるかも。
刀剣博物館では、日本刀1口に対して1つずつライトが正面上方からあたるようになっていて、地鉄や刃文を見るのに適した展示方法をとっているのが魅力ですよ。
しかし、田中さん曰く「慣れないと地鉄を見るのはむずかしい」とのこと。私もなかなか見えませんでした。通って目を鍛えないといけませんね……(笑)
なお、展示内容は定期的に入れ替えが行われています。現在の展示は、2016 年3月27日(日)まで。ちょうど「刃文 -一千年の移ろい-」という、刃文の魅力を紹介する内容になっています。
同時開催で「刀装具にみる猿のしぐさ」という展示もされているので、合わせてチェックしてみてください。
ちなみに刀剣博物館は、平成29年度には墨田区に移転予定とのこと。新施設にも期待が高まりますね!
※本記事内の写真は許可を得て撮影しています。通常作品の撮影は禁止されています。
【刀剣博物館】
刀剣博物館・公益財団法人日本美術刀剣保存協会
住所:東京都渋谷区代々木4丁目25-10
開館時間:10:00 ~ 16:30 (入館は16:00まで)
休館日:毎週月曜日(祝日は開館)
入館料:一般600円、会員・学生300円 (中学生以下 無料)
団体割引 300円(10名以上)
※特別展の際は入館料が変わることがあります。
電話:03-3379-1386
最寄駅:京王新線 初台駅、小田急線 参宮橋駅
美術の名品が集う上野で刀剣鑑賞
名刀鑑賞スポット2つ目は、上野にある東京国立博物館。本館・13室では本館・13室では、刀剣が常設展示されているんですよ。
▲13室では刀剣12口と刀装具など数十件を展示している。
東京国立博物館は、昨年の夏には「とうらぶ」の人気キャラクターの元にもなった「三日月宗近」が展示されたことでも話題になりました。展示は約3か月に1度のペースで入れ替えているそうです。3月13日(日)までは、新年をテーマにした展示になっています。
▲国宝「太刀 伯耆安綱(名物 童子切安綱)」平安時代・10~12世紀/東京国立博物館所蔵 3月13日(日)まで展示。
3月13日までの展示の中で、とくに注目したい刀剣が国宝「太刀 伯耆安綱(名物 童子切安綱)」です。13室に入ってすぐのケースに展示されています。
平安時代後期の作とされるこの刀は、数ある日本刀の中でも特に名刀といわれる「天下五剣」の1つです。「童子切(どうじきり)」の名は、鬼・酒呑童子の首を切り落としたという伝承からついたそう。
▲「桐鳳凰図三所物」後藤乗真・室町時代・16世紀/東京国立博物館所蔵(川田龍吉氏寄贈) 3月13日(日)まで展示。
室内中央のケースでは、刀装具も展示されています。
▲13室中央のケースでは刀装具などの展示もされている。
こちらは、鐔(つば)。鐔は、刀身と柄(つか・手で握る部分)の間に挟んで、柄を握る手を防護するものです。こうした一つ一つは小さい刀装具ですが、細かな細工が施されていたり様々な素材が用いられていたりと、工匠の技術が詰まっています。
刀身の美しさに負けない華やかさや、見る楽しさがあるので必見です。刀身だけで満足して帰ってしまうのは、もったいないですよ!
▲左から、「鶴丸図鐔」「三階松透鐔」「寿老図鐔」いづれも江戸時代・18世紀/東京国立博物館所蔵 3月13日(日)まで展示。
東京国立博物館も展示内容を定期的に入れ替えています。本記事で紹介している作品は3月13日(日)までの展示なので、気になる方は今すぐでかけましょう。
また、次回展示は3月15日(火)から公開されるそう。同日から4月17日(日)までは、東京国立博物館の本館全体で「博物館でお花見を」という、毎春の恒例イベントも開催。
桜をモチーフにした作品が多数展示されるほか、桜スタンプラリーなどのイベント、さらには庭園で10種類以上の桜を楽しめるので、刀剣鑑賞と合わせて楽しみたいですね。
※本館13室など、総合文化展については、個人利用にかぎって写真撮影ができます。撮影禁止マークのついている作品の撮影、また、三脚や自撮り棒などの使用・フラッシュの使用は禁止されています。不明点は係員にお尋ねください。
【トーハク】
東京国立博物館
住所: 東京都 台東区 上野公園13-9
開館日:9:30~17:00
3月~12月までの特別展開催期間中の毎週金曜日は20:00まで開館。
3月26日~9月までの土曜、日曜、祝日、休日および5月2日は18:00まで開館。
(注)入館は閉館の30分前まで
(注)時期により変動あり
休館日:月曜日(休日の場合は翌平日)、年末年始
ゴールデンウィーク期間とお盆期間中(8月13日~8月15日)は原則として無休。
入館料:一般:620(520)円、大学生:410(310)円
※( )内は20名以上の団体料金
電話:03-5777-8600(ハローダイヤル)
最寄駅:上野(徒歩10分) /鶯谷(徒歩10分) /京成上野(徒歩15分)
【まとめ】
日本刀は遠くからだと一見どれも似たように見えますが、その魅力はグッと近づかないとわかりません。日本刀の鑑賞に行くなら、まずは自分のペースで向き合えるソロがおすすめです。この春はぜひ、日本刀の世界に足を運んでみてくださいね。
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※本記事内の情報は2016年03月03日時点のものです。掲載情報は現在と異なる場合がありますので、事前にご確認ください。
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