旅するパンマニアがナビゲート!多種多様な湯種パンがズラリ並ぶ注目店/dough-ist
10,000個以上のパンを食べ歩いた旅するパンマニア、片山智香子です。本記事では“湯種パン”を食べるなら絶対に外せない、笹塚のパン屋さんをご紹介します。
訪れたのは、京王線・京王新線の笹塚駅で下車し、北口から出て徒歩10分ほどのところにある「dough-ist(ドウイスト)」。
2024年5月にオープンしたばかりのこちらは、行列ができるほど人気のベーカリー「No.4」(麹町)でシェフを務めていた川原司さんが、新たにシェフとして立ち上げたお店です。
店名の「dough-ist」は「dough(生地)」+「ist(専門家)」を掛け合わせた造語。川原さんが生地に並々ならぬこだわりを持ち、特に“湯種製法”で作るパンをストイックに突き詰めていることを知っていたので、妙に納得した店名でした。
ちなみに“湯種”とは小麦粉を熱湯でこねて、小麦粉の中のでんぷんを糊化させたもの。その湯種を使ってパンを作る製法を「湯種製パン法」、作られたパンを「湯種パン」と呼びます。
最大の特徴はもっちりした食感。また、十分に水分を含ませることができ、劣化や乾燥しにくくなるという利点もあります。
自然光の入る開放的な店内には、シンプルなパンから食事パン、甘いパンまで40種類くらい並びます。
もともと“湯種のスペシャリスト”として知られる川原さんですが、パンは全種類に、焼き菓子もクッキー以外はすべてに湯種を使っているというのだから驚きです。
ここからは、dough-istで特にオススメしたいパンを3つご紹介しましょう。
まずは「ジャンボンブール」(450円)。看板商品である「ドウイスト(全粒粉)」の生地にスペイン産生ハムとピクルス、カルピス発酵バターをサンドしたものです。
気持ち小ぶりなパンは、見た目の焼き色からハードな食感なのかと思いきや、さくりと歯切れよく、ほどよい弾力は残しながらもやわらかさを感じさせるクラム(内側)です。
使用している全粒粉は“幻の小麦”とも呼ばれている品種「農林61号」。そして通常、湯種は小麦粉に対して10~20%の割合が一般的なところ、こちらは61%も入れているんですって。素人考えで、そんなに入れたら生地がまとまらないのではないかと思ったのですが、「これが不思議なことにまとまるんですよ」と川原さん。
全粒粉が入っていることと、ルヴァン種(発酵種)を使っていることもあり、生地自体が滋味深く酸味も感じられます。
とろけるようなスペインハムのうま味とカルピスバターのコク。全体の味をギュッと引き締めているピクルスの酸味には爽快感さえ感じます。
こちらは「湯種ブリオッシュフレンチトースト」(330円)。卵、生クリーム、バニラビーンズたっぷりのアパレイユ(卵液)に、湯種ブリオッシュを一晩漬けこんで作っているそうです。
全体的にやわらかく、ぷるんとプリンみたいな食感。一口食べた瞬間にじゅわっと口内に広がる甘み、うま味も印象的。そして、とにもかくにも生地自体がクリームみたいに滑らかなのです。
川原さん曰く、カヌレをイメージして作ったそうで、スポイト入りで提供されるのはラムバニラシロップ。半分以上食べたところで味変も兼ねてかけてみると、あら不思議!ちょっとビターさも感じる大人な味わいに。
「みたらしハニートースト」(350円)は、卵不使用の湯種クロワッサンを半分にカットして開き、30種類もの中から選び抜いたという香味発酵醤油を利かせたハニーバターを断面に塗り込んだアレンジクロワッサン。
ざっくり香ばしく、それでいて層から溢れ出るバターのまろやかさ、甘いのだけれどしょっぱいという絶妙なうま味。飲み込む寸前まで味にパンチが効いていて、最後まで堪能できる一品です。
実は以前から、クロワッサンにみたらし団子をサンドするという変わった食べ方が好きだった私。「絶対にクロワッサンはみたらしに合う!」と思っていたのだけれど、こちらはその想像を超える美味しさでした。
昨今のパンのトレンドの一つが“低温熟成発酵”ですが、そんな流れに逆らって「高温の世界でパンにアプローチしたい」と湯種の世界に没頭していった川原さんのパンは、小麦粉自体が持つ本来の甘さを感じことができるもの。
まずは看板商品から食べてほしいですが、もっちりした瑞々しい食感のパンが好きな方ならどのパンもオススメなので、何度も訪れたくなること間違いなし!
ぜひ、笹塚方面に行った際には立ち寄ってみてください。
〒151-0073
東京都渋谷区笹塚 3-12-5 ホワイトハウス1F
笹塚駅
〒151-0073
東京都渋谷区笹塚 3-12-5 ホワイトハウス1F
笹塚駅
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※本記事内の情報は2024年09月13日時点のものです。掲載情報は現在と異なる場合がありますので、事前にご確認ください。
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