ライター
“ソロ活”の達人が教える「ガード下のはしご酒」のススメ
やったことのある「一人○○」の種類がだんだん増えていくと、なんだか自分が強くなった気分になる。こんなことも一人でできたと誇らしくなり、自分の幅が広がることで自信がつくからなのだと思う。
その中でも、「ガード下のはしご酒」は、初めてできたときの喜びが大きかった。常連さんが多そう、女性の一人客は浮きそう、独自のルールがあるかもしれない、居合わせた客やお店の人と軽妙なトークができないとダメかも・・・など、不安なことがたくさんあったのだ。
しかし勇気を出していざやってみると、これらは杞憂にすぎず、そこでしか味わえない体験が目白押しだった。この記事では、日本が誇る“ガード下文化”の中心地である有楽町を舞台に、「ソロせんべろ」(※せんべろ:1,000円でべろべろに酔うという意味の造語)のススメを書いていきたい。
最初が肝心!「せんべろセット」で肩慣らし/大衆スタンド 神田屋 魁 有楽町日比谷口店

まずは「大衆スタンド 神田屋 魁 有楽町日比谷口店」へ。
ここは居酒屋チェーンの「天狗」の系列店でもあり、ソロせんべろ初心者でも入りやすい雰囲気がある。いきなり“ガード下”感の強い濃厚な店へ行くよりも、ここで肩慣らしをしておきたい。

▲メニューは取材当時の内容。2024年12月現在は変更されています
この店の最大の利点は、「せんべろセット」があること。なんと、その名の通り1,100円でお酒とおつまみを最大10種類も注文できるのだ。立ち飲み席でのみ、14時~18時までの限定で利用可能となっている。

注文に使うのは麻雀の点棒。点棒の500点や1,000点といった数字はここでは関係なく、麻雀を知らなくても大丈夫なのでご安心を。
単に「1点」のメニューならば1本渡し、「2点」のメニューならば2本渡す、という使い方をする。メニュー表に、どれが何点なのか書かれているので、メニューを見ながら手持ちの10本の配分を考えるのだ。

▲メニューは取材当時の内容。2024年12月現在は変更されています
私は、2点ドリンクの「地酒 大山」と、3点料理の「クリーム明太卵焼き」、2点料理の「アンチョビポテトフライ」「クリーム明太ポテト」、1点料理の「ポテトサラダ」を注文。これで合計10点だ。どの組み合わせで10点を使い切るかを考えるのも楽しい(※注)。
だが、今回のこの注文は「はしご酒」としては失敗しているので、ぜひとも反面教師にしてほしい。見ての通り、イモだらけになってしまったのだ。注文する時点でちゃんとバランス考えろよ、というご指摘、ごもっとも。目についた好きそうなものを注文したら、「明太子」か「クリーム」か「ポテト」のいずれかが必ず入る事態になっていた。ウケを狙っていたわけではなく、本当にナチュラルにやらかしてしまった。点数をうまく使い切ることに気を取られていたのかもしれない。
はしご酒のコツは、胃袋と相談しながら注文を決めることで、これがなかなかどうして難しい。美味しそうだな、と欲望の赴くままに注文していると、あっという間にお腹がいっぱいになってしまうのだ。もう少し軽めのツマミにしておくんだった・・・。
さて、イモだらけとはいえ、味はもちろんどれも美味しい。そりゃあ、イモや卵が塩辛い味付けをされていたら、うまかろう。「クリーム明太卵焼き」が見た目以上に辛いため、シンプルな「ポテトサラダ」と交互にいただくと、より美味しさが増した。一緒に食べると相性のいいツマミの組み合わせを自分なりに見つけていくのもソロせんべろの面白さの一つなのだ。
(※注)メニューは取材当時の内容、2024年12月現在は変更されています。また「クリーム明太卵焼き」は取り扱いが終了しています。

〒100-0006
東京都千代田区有楽町 1-3-6 吉川ビル 1・2F
日比谷駅
〒100-0006
東京都千代田区有楽町 1-3-6 吉川ビル 1・2F
日比谷駅

こぢんまりした空間で、日本酒とツマミをいただく/登運とん

次は、有楽町ガード下を代表する二大酒場を紹介したい。まずは「登運とん(トントン)」。
まさにThe・ガード下、といった佇まいだ。構造上、壁が斜めになっているのも面白い。この絶妙にこぢんまりとした空間は、秘密のほら穴でお酒を楽しんでいる気分になれる。

まずは飲み物の注文から。「藤村にごり酒」(500円)をいただくことにした。
ちなみに、私はこの店でも一つ前の店でも、いきなり日本酒を注文している。なぜならば日本酒を飲みたいからだ。一杯目からグビグビと。そう、ソロ活is自由。好きなものを好きなタイミングで飲んで何が悪い。最初から飲みたいものを堂々と飲むスタイルを提唱したい。
一杯目にはビールを飲みたいならば飲めばいい。だが、飲みたくもないのに「みんなに合わせてビールにしたほうが良いかな」などという気遣いは不要。まあ、そもそもが人と一緒に飲みに行っても最初から好きなものを注文していいはずなのだが、そうもいかない局面がいまだにあるこの世の中。そんなあなたのためにソロ活がある。わたくし、「ストップ・とりあえずビール」をスローガンに活動しております。

ツマミは「カシラ(ハラミ)」(190円)を注文。うま味たっぷりで、かじると肉汁がギューギュー出てくる。塩気もちょうど良くお酒が進む。塩気はお酒のお友達だ。肉を噛み締めながらお酒を一口ずついただく――これぞガード下のもつ焼き店の醍醐味である。
ちなみに、「登運とん」の串はすべて2本で出てくるため、お腹いっぱいになりすぎないよう、一種類だけにした。ほかにも「つくね」や「牛もつ煮込み」などがオススメ。ぜひお気に入りの一品を探してみてほしい。

〒100-0006
東京都千代田区有楽町 2-1-10
有楽町駅
〒100-0006
東京都千代田区有楽町 2-1-10
有楽町駅

〆は“ガード下らしさ”が詰まったお店でもつ煮込み/ふじ

次はお向かいにある「ふじ」へ。
「登運とん」と「ふじ」が並ぶこの一角は、“ガード下らしさ”が詰まっていて、いるだけでワクワクする空間なのだ。どちらももつ焼きの店なため、両方の店から串を焼く煙がもくもく漂う。これを浴びながら飲むのもまた一興である。
この店でももちろん「日本酒」(680円)をいただく。斜めになっている壁にはメニューがズラリ。

ツマミは「もつ煮込み」(450円)にした。軟らかくトロトロで、しっかりと煮込まれている。向かいの「登運とん」のもつ煮込みは牛で、こちらの「ふじ」は豚。食べ比べてみるのもオススメだ。
汁の味はとことんやさしく、はしご酒のシメにうってつけの一品でもある。

私は一人で飲むとき、その場に居合わせた人とのコミュニケーションは取らずに静かに飲みたいタイプだ。目の前のお酒とツマミに全力で集中したいのである。
一人飲みを躊躇する理由として「知らない人と話したくない」というのを意外とよく聞く。確かに、世の一人飲みには、お店の人やお客さんとその場での会話を楽しむイメージがある。でも実際は、私のようにスンと黙りこくって飲んでいても、全く問題ない。必要以上に話しかけてくる人も今のところ見たことがない(そういう人も中にはいるかもしれないが・・・)。
一方で、会話を楽しんでいる一人客も見かける。つまり、自分の好きな過ごし方をして良いというわけだ。飲みソロ活って、思っている以上に懐が深い。
特に有楽町界隈は、ガード下の店特有のガヤガヤ感がすべてを包み込んでくれる感覚がある。時折、上から聞こえてくるガタンゴトンの音。電車が通るたびに小刻みに揺れる椅子。煙、音、振動、それらすべてがお酒を美味しくしてくれるのだ。

〒100-0006
東京都千代田区有楽町 2-1-10
有楽町駅
〒100-0006
東京都千代田区有楽町 2-1-10
有楽町駅

終わりに

ほどよく酔いが回った状態で歩きながら浴びる風が好きだ。少し涼しくなった秋の空気は、お酒でほてほてとした体に心地よかった。
あなたにオススメの記事
- 本記事内の情報に関して
-
※本記事内の情報は2024年12月25日時点のものです。掲載情報は現在と異なる場合がありますので、事前にご確認ください。
※本記事は2023年11月22日に公開した内容を一部加筆・修正した上で、2024年12月25日に再公開しております。
※本記事中の金額表示は、税抜表記のないものはすべて税込です。