人が密集するのを避けなければならない昨今、この連載のテーマである「ソロ活」こそが今、人類に求められているもののように思うが、実はそう物事は単純でもない。このサイトでは基本的に「おでかけするソロ活」を取り扱っているため、むしろかなり肩身が狭いのである。


いくら一人で行動していたって、街に繰り出せばそこには人間がいる。人のいない場所に行こうにも、行く過程の交通機関にはやっぱり人間がいる。判断が難しい日々が続くが、できる範囲のおでかけを・・・というスタンスのもとに今回も細心の注意を払ってソロ活したい。


この記事が公開されるのは8月10日の「山の日」だそうだ。けれど、残念ながら今、東京都民が自然豊かな地方へGo Toするのは推奨されていない。東京にある高尾山なら良いのかもしれないが、実はそもそも私自身が特に山へ行きたくない。「山の日」をテーマに書くという前提を根底から覆すことになるけれど、私はできる限り疲れることはしたくないのだ。


そこで、“山的な何か”の代用品を考えてみることにした。


山の何が嫌って、斜面を上へ上へとのぼることにある。下りは良くても、上りは嫌だ。重力に逆らうからなのか、信じられないくらい疲れる。登らなくて済む山があれば良いのにと思うが、よく考えたらそれはもはや山ではなく、平地か谷である。


一方で、山で味わえる自然自体は好きだ。とりわけ、「山頂で食べるカップ麺」というものに昔から憧れている。大自然の空気を吸いながら食べるカップ麺は、さぞ美味しかろう。山登りがのぼるものでさえなければ、疲れるものでさえなければ、いつかやってみたいと思っている。だったら車で富士山五合目にでも行けば良かろう、というツッコミが入りそうだが、そういうことではないのだ。そんな大がかりなことではなく、もっと手軽で、生活に根差していて、等身大で、親しみやすい、そういうソロ活をしたいのである。それに、一応疲れない程度の“歩いた感”はほしい。

都内でその望みを叶えるのに最も近そうなのは、等々力渓谷ではないかと考えた。等々力渓谷は世田谷の等々力駅付近にある谷沢川沿いの散策路のことで、渓谷という名の通り都会とは思えないほどの自然が広がっている。


しかも、渓谷なら「のぼり」ではなく「くだり」だ。山の持つ欠点が見事に解決されている。当然だ。山ではなく、谷だからだ。もう、8月10日は「谷の日」にしよう。

そんなわけで、細かいことは気にせず、保温性のあるボトルにお湯を入れて等々力渓谷までやってきた。等々力渓谷でカップ麺を食べるのだ。食事をするので念のためアルコール消毒液も持参した。ちなみに、事前に等々力渓谷を管轄する区の管理事務所に許可を取りに行ったところ、「山でカップ麺を食べる行為が羨ましいから、等々力渓谷でカップ麺を食べる」と書かれた企画書は難なく通った。よく通ったなと思う。

すごい。駅前にある成城石井を横目に階段を降りたら、急に渓谷が広がっていた。

川沿いには、狭い狭い階段をのぼって行ける、良い雰囲気のイタリア料理屋があり、この店の目の前は大通りで車も通っている。何かの間違いなんじゃないかというくらい、階段の上と下でまったく世界が違う。こんな空間が東京にあったのか・・・。

しばらく散策し、いよいよカップ麺の時間だ。

お湯の温度も問題なさそうだ。家を出る直前にお湯を沸かし、ここへ来るまでに一時間半はたっていたが、そんなに冷めていない。


お湯を入れただけで、カップ麺の良い匂いが漂ってきた。木漏れ日のさす木々と、人工的な匂いのギャップがすごい。めちゃくちゃ体に良さそうな場所で、体に悪そうなものを食べるという、ちょっといけないことをしている気分になる。それがまた食欲をそそる。


そして・・・。

うまい!!!!!!!!!

想像していたよりもはるかに美味しい。なんだろう、この感覚は。


そういえば以前、カップ焼きそばを出す居酒屋に行ったときのことだ。「ペ」から始まるどこでも買えるあの焼きそばを、コンビニで買うよりも高い値段で注文したら、それはもうめちゃくちゃ美味しかったのだ。その店で注文した他のどんな絶品ツマミをも凌駕していた。一応、カップ焼きそばに炒めた野菜を混ぜてくれていたのだが、野菜のおかげで美味しくなっていたわけではなく、どう考えてもカップ焼きそば自体のグレードが上がっている感覚があった。


他にも、徹夜をしているときに食べるカップ麺や、飲んで帰ってきたあとのカップ麺は、普段より少しだけ美味しい。


つまり、カップ麺というのは、非常に余白の多い食べ物なのではないだろうか。悪いことをしているような背徳感や、普段と違う環境、意外な場所など、あらゆるシチュエーションを受け入れる余白がカップ麺にはある。余白に受け入れたもの次第で、味はいかようにも変わる。そういうことだったのか。それが「山頂で食べるカップ麺」の正体だったのか。


また、もしかしたら、暑い中で蒸し風呂のようになっていたマスクを外して食べる解放感も手伝っての美味しさだったのかもしれない。

渓谷の中でのカップ麺、ぜひともオススメしたいところだが、実は今回一つ誤算があった。等々力渓谷には、思っていたより人がたくさんいたのである。「密」ではないが、そこそこにぎわっている川沿いくらいには人がいる。もしかしたら、密閉でもなく密集でもなく密接でもないこの場所は、適度に外出気分を味わうのに重宝されているのかもしれない。つまり、何が言いたいかというと、ここでおもむろにカップ麺を取り出すのは、まあまあ恥ずかしいのである。


そんな中、三脚を立てて一人カップ麺をすすることで、私はまた一つ、強くなった。

一人等々力渓谷を楽しむ三か条

その1 都会と自然とのコントラストを楽しもう

その2 当たり前だけど捨てる場所がないのでカップ麺の残り汁は飲み干すこと

その3 等々力渓谷の奥のほうへずっと歩いていくと、お茶屋さんや滝もある

等々力渓谷
  • 所在地

    東京都世田谷区等々力1-22、2-37~38

  • 電話番号

    03-3704-4972

  • 最寄駅

    等々力

※2020年8月10日時点の情報です。掲載情報は現在と異なる場合がありますので、事前にご確認ください。

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