ロケ地巡りが趣味の映画ソムリエがナビゲート!

映画ソムリエという肩書で映画を独自の切り口で紹介している、東紗友美です。今回は「過去を振り返りたい時に訪れるならココ」というNetflixオリジナル映画『ボクたちはみんな大人になれなかった』のロケ地をご紹介します。

明け方の渋谷で現在~未来に向かって走り抜ける・・・名シーンのトンネルへ/上渋谷ガード

作家・燃え殻さんの人気小説が原作で、昔の恋人のFacebookアカウントを見つけてしまったボク(森山未來さん)が主人公。90年代のカルチャーや時代の空気感を織り交ぜながら、ボクの過去と現在や忘れられない恋人との出会いと別れを描いた同作は、1995年と2020年の時の隙間を、現在から過去に向かって駆け抜けていく、エモーショナルな恋愛映画です。


東京の風景。そこに暮らす人物。その切り取り方が、刹那的ながらも魅力に溢れた映画で、傷つきながらも闘い、立ち上がることのできたこの東京という街をより一層好きになれる作品です。


そして映像美にのせて、主人公が自分史に関わってくれた人を思い出していく作品なので、少し立ち止まって人生を振り返りたいときに心からオススメしたい映画です。

映画『ボクたちはみんな大人になれなかった』ロケ地のトンネルへ!映画ソムリエ・東紗友美のイチ推し。_718207

さてさて、本日の記事の撮影は2022年7月8日。渋谷のTOWER RECORDと大変身を遂げたMIYASHITA PARKに挟まれた場所にあるこのトンネル。


ここは「上渋谷ガード」というトンネルで、森山未來さん演じる主人公が明け方の渋谷で、このトンネルを走り抜けるという重要シーンに登場します。そのシーンで主人公は、これまでの人生で”自分にとって影響をもたらした存在たち”を一斉に思い出すのです。

映画『ボクたちはみんな大人になれなかった』ロケ地のトンネルへ!映画ソムリエ・東紗友美のイチ推し。_718208

一見人通りが多いイメージですが、日中でもトンネルを挟む信号が赤になったタイミングであれば、人が通ってない映画の世界観そのままの空間を味わうことが可能です。行かれる方は、信号を少しだけ待ってみてくださいね。


トンネルを潜ると昼間でも少し暗く、葬り去っていた記憶を引きずり戻すブラックホールのような不思議な引力を感じました。

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そして個人的に鳥肌が立ってしまったのは、この「未来」と「→」(やじるし)のアート。


作中でも森山未來さんが、入り口に「未来」と描かれたトンネルを「→」の導くままに、現在、そして未来に向かって、走り抜ける。そのシーンは本当にゾクゾクしました。


なお、こちらのアート作品はシブヤ・アロープロジェクト(※)の一環として描かれたもので、災害発生時の一時退避場所を指し示しています。トンネル内への落書きや張り紙は禁止されています。

▲映画のワンシーンを真似して歩いてみました

▲映画のワンシーンを真似して歩いてみました

本作のメガホンを握った、森義仁監督に伺ったところ、このメタ構造は偶然の産物だったそう。


渋谷には高架下がいくつかありますが、このトンネルを見つけた際は“ピンときた”“ここしかないと思った”そうです。撮影は2021年2月ですが、私の行ったタイミングでもこのアートは残っていました。


日本でも有数の人口に溢れたこの街で、私も出会いと別れを繰り返し、どうにか今日も立っている。


雑踏の中、一瞬だけ磁場が歪んだようなこのトンネルで、主人公と同様に自分の人生で出会った印象的な人々を思い出していました。今でもつながっているあの人のことも、永遠に間に合わなくなってしまったあの人のことも・・・。


酸いも甘いも色々あったけれど、気付けば限りある人生で関わってくれた人に、出逢えた人々に感謝したいと思えていました。甘酸っぱくてエモくて少し切なくて、さまざまな感情がこみあげてきます。


色褪せた記憶を逆再生してくれるようなこんな映画ロケ地で、かつて向き合ってきた人々との時間を鏡に、ふと立ち止まってみてはいかがでしょうか?

上渋谷ガード

所在地:東京都渋谷区神南1-22−14

最寄駅:渋谷



※注)シブヤ・アロープロジェクト:渋谷区の一時避難場所(青山学院大学、代々木公園)の位置を外国人を含めた多くの来街者に認知してもらうために、発災時だけでなく日頃から人々の注目を集めるようなアート性あふれるデザインの「矢印サイン」を区内の必要な場所に設置し、一時避難場所へ誘導するもの。外国人を含む多くの方が訪れる街「渋谷」において、言葉の壁を超え、多くの人が一目見て、理解できる記号として矢印を盛り込んだアートになっている。

本記事内の情報に関して

※本記事内の情報は2022年07月29日時点のものです。掲載情報は現在と異なる場合がありますので、事前にご確認ください。
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