“おもてなしの達人”の仕事現場に密着!
おもてなし大国といわれる日本。東京にも、さまざまな分野で活躍する“おもてなしの達人”が存在しています。そんな人々のおもてなしの真髄に触れてみたい!というわけで、レッツエンジョイ東京編集部では、各種おでかけ施設で活躍する“おもてなしの達人”に密着。その仕事ぶりを現場からレポートします。
“伝説のプラネタリアン”と呼ばれる星空解説員/コスモプラネタリウム渋谷・村松修さん
やってきたのは、渋谷駅から徒歩5分ほどの場所にある「渋谷区文化総合センター大和田」。図書館や文化ホール、多目的室などがそろう地上12階建ての文化施設です。
建物を見上げると、てっぺんに巨大な丸いドームが見られます。今回密着する方は、あのドームの中で働いていらっしゃいます。
「ようこそ、『コスモプラネタリウム渋谷』へ!今夜の空では、どんな星が見えるのでしょうか?早速、空の旅へ出かけてみましょう」
朗らかな笑顔で迎えてくれたのは、「コスモプラネタリウム渋谷」の星空解説員・村松修さん。その豊富な知識と経験から、“伝説のプラネタリアン”という愛称で親しまれています。
※プラネタリアン=学術的な定義語でなく、プラネタリウム施設で星空解説の専門業務に携わる職員の俗称のこと
▲開演前のロビー
“伝説のプラネタリアン”と呼ばれる理由も気になるところですが、まずは村松さんが解説を務める番組を体験してみることに。ロビーに延びる観覧客の行列に接続して、いざドームの中へと向かいます!
まるで実況中継を聞いているような臨場感/今夜の星めぐり
体験するのは、「コスモプラネタリウム渋谷」が誇る人気番組『今夜の星めぐり』。その日の夕暮れ~明け方の空の様子を、解説員による生解説で楽しめる番組です。取材したのは11月1日。一体どんな星に出会えるのかワクワクしながらドーム内の席につくと・・・
「XX座(星座の名前)なら、こっちの席の方がよく見えますよ」
と、お客さんへ声がけしている村松さんの姿がありました。そのフレンドリーな応対のおかげか、ドーム内は開演前から和やかなムードに包まれていきます。
▲左下から時計回りに、くじら座、ペルセウス座、カシオペア座、ケフェウス座、ペガスス座。中央がアンドロメダ座
そして、約40分間にわたる番組がスタート。夕暮れ時の空の様子が映し出されたオープニングで村松さんは、今の時期に関東方面から見えるダイヤモンド富士のこと、取材の前日に渋谷の街をにぎわせたハロウィンのことなど、星以外のエピソードを交えながら観客を空の世界へと誘い込んでいきます。
夜が更けてくると、ドームいっぱいに満天の星が!時間の経過に合わせて移動する星々について、村松さんのテンポの良い解説が展開されます。
なお、上写真で白い光で投影されているのは、秋を代表する星座群。神話の世界では、海の怪物である化けクジラに襲われそうになっているアンドロメダ姫を、勇者ペルセウスが助けに来たシーンとされているのだそうです。村松さんの卓越したストーリーテリングのおかげで、そのシーンが脳裏に鮮明に浮かび上がっていきます!
▲番組中の様子(番組後に照明をつけて再現してもらいました)
後々知って驚いたのは、村松さん自ら投影機を操作していたこと。左手で盤面を操り、右手のレーザーポインターで注目する星を指しながら解説するのが基本なのだそうです(ほかの解説員も同様)。
その影響もあるのか、「さて、東の方向からひときわ明るい星が見えてきました!」など星の動きに合わせて絶好のタイミングで繰り出されるトークは、スポーツの実況中継を聞いているような臨場感。村松さんの歯切れの良いトークと美しい星空に引き込まれているうちに、約40分間の番組は終了しました!
番組の上演前から“おもてなし”は始まっている

▲デスクに向かう村松さん

▲執務室の本棚には、天文に関する学術書がギッシリ
終演後、解説以外のお仕事の様子も覗かせていただきました。
『今夜の星めぐり』を担当する日は、その日の星座盤をPCで動かしながらトークの予行練習をするのだとか。「星の動きは日々そんなに変わらないので、トークの内容もほぼ変わらないのでは?」と質問すると、「話す内容は毎日変わります。開演直前に決めることもあるんですよ」との返答が。
すると「ピンポーン」という来客チャイムが鳴り響き、村松さんがロビーへと出ていきます。

▲この日は外国からの来館客も

▲チケット販売機は多言語対応している
村松さんが応対するのは、この日上演される番組のチケットを購入に訪れたお客さん。村松さんは、一人一人に番組の内容や購入方法を丁寧に案内していきます。村松さん曰く、こうした日々のお客さんとの触れ合いが非常に大切なことなんだそう。
「お客さんの特徴を予め把握しながら、その日に話す内容を決めているんです。大人の方が多い場合は大人向けの解説にしようとか、子どもさんがいらっしゃる場合は子ども向けの話をしようとか。その際に『今日は僕の誕生日だけど、誕生日の星座は見られるかな?』なんて会話が聞こえてきたら、『いただきました!』と(笑)。今日はこのお客様のためにその星座について話そう、ということになるんです」
なるほど。だから見える星はほぼ同じであっても、トークの内容は一日として同じにならないんですね。

▲「コスモプラネタリウム渋谷」のエントランス

▲取材時はハロウィンに関するイラストが
同館は、ロビーに手作り感のある展示が多い点も特徴です。村松さん曰く、これらの展示物もお客さんをおもてなしする上で重要な役割を果たしているのだとか。
「例えばエレベーターを降りてすぐの黒板には、絵の得意なスタッフによる手描きのイラストが描かれています。これがとてもありがたくて。当館のアットホームな雰囲気をお伝えできますし、イラストに興味を示してくれたお客様がいた場合は、それに関するエピソードを番組内でお話しすることもできます」
▲2025年11月現在の様子。開館15周年を記念し、過去番組のポスターなどが展示されている
ロビーの壁一面には、貴重な展示の数々も。これらを見るだけでも博物館を訪れたような満足感を味わえます。
「これらの展示物は、スタッフ全員で知恵を出し合いながら定期的に入れ替えています。私は、プラネタリウムという体験は、ドームの中だけでなくロビーに入った瞬間から始まっていると考えています。そのような考えを持つスタッフが当館には多く、『お客さんに星を最大限楽しんでもらいたい』という思いのもとに一人一人が日々いろんな工夫をしています。そういった思いがお客様にも伝われば良いなと思っています」
投影機の技術職としてスタートした“プラネタリアン”人生
最後に、現在に至るまでの村松さんの歩みを伺いました。
プラネタリウムにまったく縁のない子ども時代を過ごしたという村松さん。学生時代、かつて渋谷駅前にあった「天文博物館 五島プラネタリウム」(以下「五島プラネタリウム」)へ何気なく入ったところ、その後の人生を決める大きな出会いがあったのだとか。
「ドームの中に入ると、見たこともない黒い物体が光を放ちながら輝いていました。『これは一体何だ!?』 と。技術系の学校に通っていた私は、当時まだ珍しかったプラネタリウム投影機に夢中になったんです」
その後は、星よりも投影機を観察するために「五島プラネタリウム」へ通うように。顔見知りになったスタッフから「そんなに好きなら職員募集を受けてみたら?」という誘いを受けて、同館の採用試験に応募したところ、見事に技術職として採用されたそうです。
▲「渋谷区文化総合センター大和田」2階には、「五島プラネタリウム」時代の投影機も展示されている
技術員として働く中で、星の世界にも魅せられていった村松さん。その熱意が認められて星空解説も担うことになりましたが、その過程で編み出していったのが、現在のトークスタイルなのだとか。
「運良く解説の仕事も担当することとなりましたが、いざ挑戦してみると失敗ばかりで。天文学の知識を備えた専門の解説員が、いかに修練を積んでいるのかということを痛感しました。そんなときに思いついたのが、野球の実況中継でした。私は天文学の知識は乏しいけれど、その場で起きていることを臨場感たっぷりに話すことはできる。それを極めれば、自分なりの解説の色を出せるんじゃないかと思ったんです。それがうまくいったので、現在もそのスタイルを貫いています」
▲「コスモプラネタリウム渋谷」ロビーに掲示された星空解説員の紹介パネル
なお、昭和32(1957)年の開館以来、渋谷の街に星を届け続けてきた「五島プラネタリウム」は、建物の老朽化に伴い平成13(2001)年に閉館。村松さんの約48年間にわたる勤務生活も一旦終わりを迎えます。
しかし、渋谷区民の要望と渋谷区行政の“次世代教育のために”という想いにより、平成22(2021)年に「コスモプラネタリウム渋谷」が開館すると、村松さんも再び星空解説員として同館で働くことに。
現在「コスモプラネタリウム渋谷」には8名の解説員が在籍していますが、中でも「渋谷におけるプラタリウムの歴史」を熟知し、技術職から解説員に転身した異色の経歴を持つ村松さんは、いつしか“伝説のプラネタリアン”という名で親しまれるようになったのです。
なお、天文教育普及への長年の貢献が認められ、村松さんは「2024年度日本天文学会天文教育普及賞」も受賞されています。
▲星空解説員の佐々木さんと
そんな村松さんに、「コスモプラネタリウム渋谷」の魅力について語っていただきました。
「まず、渋谷のような繁華街にありながら、満天の星を見られることが最大の魅力だと思っています。さらに、星空解説員の個性が豊かなことも当館の大きな魅力です。たとえばこちらの佐々木さんは、私とまったく違う解説スタイル。彼は世界の星空を渡り歩く解説員なので、世界のいろんな場所から見える星空や天体現象を解説しているんです。ときには南半球の星空だったり、北欧のオーロラだったり・・・。ほかの解説員もバラエティー豊かなので、ぜひ何度も当館に訪れて、その日だけの星との出会いを楽しんでいただけたらうれしいです」
村松さんをはじめ、個性豊かな星空解説員たちが案内する一期一会の空の旅。ぜひ、そのおもてなしの極意も感じるべく「コスモプラネタリウム渋谷」へ足を運んでみては?
- 今回体験した番組
-
-
番組名
今夜の星めぐり
-
所要時間
約40分
-
上演時間
平日4回、土日祝9回
-
備考
上演時間はイベントなどにより変更あり。詳しい時間は施設の公式サイトでご確認ください
-
〒150-0031
東京都渋谷区桜丘町 23-21 渋谷区文化総合センター大和田12F
渋谷駅
〒150-0031
東京都渋谷区桜丘町 23-21 渋谷区文化総合センター大和田12F
渋谷駅
ほかの“おもてなしの達人”の仕事現場も覗いてみる
よく読まれている記事ランキング
ライター
- 本記事内の情報に関して
-
※本記事内の情報は2025年11月25日時点のものです。掲載情報は現在と異なる場合がありますので、事前にご確認ください。
※本記事中の金額表示は、税抜表記のないものはすべて税込です。









