“おもてなしの達人”の仕事現場に密着!
おもてなし大国といわれる日本。東京にも、さまざまな工夫で人々を迎えるお仕事に専念する“おもてなしの達人”が存在しています。そんな彼らのおもてなしの真髄に触れてみたい・・・というわけで、レッツエンジョイ東京編集部では、さまざまな業界で活躍する“おもてなしの達人”に密着。その魅力と人気の秘訣を、現場からレポートします。
人気ツアーを数多く担当する看板バスガイド/はとバス・鈴木亜也さん

朝9時過ぎの東京駅丸の内南口バスのりば。沿道には、見覚えのあるレモンイエローのバスがズラーッと並んでいます。
この日やってきたのは、都内を中心に多くの観光バスツアーを催行する「はとバス」の東京駅丸の内南口バスのりば。昭和23(1948)年の創業以来、「おもてなしの心」を第一に事業を続ける同社には、どんな“おもてなしの達人”がいるのでしょうか。

「おはようございます!今日は、東京スカイツリー(R)と東京タワーのほか、浅草やベイエリアにも足を運ぶ大人気ツアーにご案内します。天気も良いので、東京のステキな景色が見れると思います!」
元気良く迎えてくれたのは、この日の達人であるバスガイドの鈴木亜也さん。はとバスツアーのガイドを日々務めるほか、後進の指導やメディア出演など、多岐にわたって活躍する同社のガイドさんです。それでは、鈴木さんの“おもてなしの現場”を覗いていきましょう!
最後には一体感のある、修学旅行のバスのような雰囲気を目指す

集合時刻を迎え、乗客の受付を始める鈴木さん。一人一人のチケットを確認しながら座席を案内していきます。聞けば、この乗客とのファーストコンタクトがとっても重要なのだそう。
「最初の受付の段階で、お客さまの特徴をつかむようにしています。お話し好きな方なのかな?とか、静かに観光したい方なのかな?とか。あと、杖を突いている方など身体的なサポートが必要な方もこの段階で把握して、ツアー中に気を配るようにしています」(鈴木さん、以下同)

バスが出発すると、鈴木さんの流れるようなトークがスタート。時折、乗客に話を振ったり質問を投げかけたりしながら、車内を和やかな空気で包んでいきます。
「お客さまとは積極的にコミュニケーションを取るようにしています。時には、あえてマイクを通して、お客さまとお話しさせていただくことも!そのように距離を縮めて、車内の空気を一つにしたいと思っています。目指しているのは、“修学旅行のバスのような雰囲気”とでも言いましょうか。東京駅で終了するときには、車内のお客さまが元から知り合いだったような雰囲気を目指しています」
ネタの引き出しは無限大!?ほぼノンストップで話し続けるガイドの秘密

取材していて驚いたのは、信号待ちや渋滞でバスが停車した場合でも、鈴木さんの話がほとんど途切れないこと。車窓の景色を糸口に、歴史秘話、時事ネタ、自身の体験談・・・と次から次へと話を広げていきます。
一体どこまで計算してトークしているのか聞いてみると、「計算はしていませんよ!」と鈴木さん。
「移動中は基本的にお客さまの方(バスの後方)に向かって立っていますが、バスが止まるときは、ドライバーがクラッチを踏む音でだいたい分かるんです。それを頼りに、『あ、ここで止まるならもう少し話せるな。じゃあ、あの話をしようかな』などと頭を回転させながら、話すネタを引っ張り出しています」

▲お客さまとの会話から情報収集することもあるそう
はとバスでは、自社作成の都内教本をベースに話を展開し、話の肉付けは各ガイドの創意工夫に委ねられているのだとか。鈴木さんの場合、日々東京の情報を収集し、なおかつ“自身で見た、食べた、行ったことのあるもの”を交えて話をすることを心掛けているそうです。
「自分で体験したモノ・コトでないと、お客さまに共感していただけないと思うんです。あと、お客さま層によって反応の良い話題が違うこともあり、お客さまの年代に応じて話すネタを変えられるよう、日々情報収集しています」
2大タワーに浅草、ホテルビュッフェも!ガイドのおかげで楽しみ2倍

▲東京タワーのエントランスにて
実はこの日、はとバス初体験だった筆者。個人的に目からウロコだったのは、各地で自由行動がたっぷりと用意されていたこと。「お客さまを各地の入り口まで送り届けた後、私たちバスガイドはバスで待機しているんです」と鈴木さん。筆者の勝手なイメージから、バスガイドさんが付きっきりでガイドしてくれるのかと思っていたけれど、そうじゃないんですね。

▲鈴木さんが「ぜひ体験して!」と車中で話していた東京スカイツリーのガラス床。立っただけで背筋が凍る
しかし、実際に各地を見学してみると、自由行動なのにとても充実した時間を過ごせていることに気づきました。その理由は、各地に向かう車内で鈴木さんが見どころをたっぷりと紹介してくれていたから。「このルートで回ると効率的に楽しめますよ」「浅草仲見世では、〇〇の雷おこしがオススメですよ」など、車内で聞いた情報を頼りに見学した結果、プライベートで訪れたときには気づかなかった魅力に出会えたのです。
なお、この日は鈴木さんと一緒に「東京スカイツリー」と「東京タワー」に上らせていただいたところ・・・乗客の記念撮影に応じたり、「さっきバスで言ってたアレってどういうこと?」などの質問に応じたりする鈴木さんの姿が印象的でした。

▲ランチ会場のシェラトン・グランデ・トーキョーベイ・ホテル「グランカフェ」

▲お客さまと同じビュッフェ・ランチで昼休み(奥はドライバーの髙木さん)
本ツアーのランチには、舞浜にあるシェラトン・グランデ・トーキョーベイ・ホテル「グランカフェ」のランチ・ビュッフェが用意されています。シーズンごとに代わる同レストランのフェアをチェックし、お客さまに伝えるのも鈴木さんの大切な仕事なのだとか。「ビュッフェに加えてフェアが開催されていると、お客さまのランチへの期待度がより高まるので、調べてお伝えしています」

▲「バスガイドのお仕事に興味があって」とツアーに参加した都内在住の少女と記念撮影
こうして、約7時間半におよぶツアーはあっという間に終了。東京の名所を効率的に巡れただけでなく、鈴木さんやほかの乗客の方々とのおしゃべりも楽しく、思わず仕事を忘れて楽しんでしまいました!
鈴木さんが語る、おもてなしの極意とは?

▲ツアー終盤では、お客さまともすっかり打ち解けて
かつて接客・観光系の専門学校に通っていた鈴木さん。就活中にブライダル企業やホテルなどさまざまな職場の見学をしていたとき、「コレだ!」と思ったのがバスガイドの仕事だったのだとか。
「もともと人に尽くすのが好きなんです!そういう意味で言うと、バスガイドって、自分の頑張りと工夫次第でバスの中をいかようにも楽しませることができる特別な仕事なんですよね」

▲車庫に戻って清掃するまでがガイドの仕事
そんな鈴木さんが目指すバスガイド像は、適材適所なバスガイド。観光を楽しみたい人、移動中はバスで寝たい人、話を聞きたい人・・・など、さまざまなタイプのお客さまにとって等しく心地の良い案内を心掛けているのだとか。
「バスガイドは、旅の思い出に色を付ける仕事だと思っています。旅を楽しむのはお客さまご自身で、私たちはあくまでも旅をサポートする側。でも、お客さまの思い出がよりカラフルなものになるよう、旅のサポートができたら良いなと思っています」
そんな鈴木さんが働く、はとバスのツアーは毎日50種類ほど開催。地方からの観光客はもちろん、「仕事に疲れて癒やされたいという思いでいらっしゃる都内在住の方も結構多いですよ」ということなので、次の休日は魅力的なバスガイドに会いにぜひ体験してみては?
- 今回体験したはとバスツアー
-
-
ツアー名
東京ベストトリップ(東京二大タワー&浅草散策)
-
所要時間
9:20東京駅丸の内南口発~16:40東京駅丸の内南口解散(約7時間半)
-
降車・入場観光地
東京スカイツリー天望デッキ、浅草観音と仲見世、シェラトン・グランデ・トーキョーベイ・ホテル 「グランカフェ」、東京タワー・メインデッキ(計4カ所)
-
ライター
- 本記事内の情報に関して
-
※本記事内の情報は2025年04月22日時点のものです。掲載情報は現在と異なる場合がありますので、事前にご確認ください。
※本記事中の金額表示は、税抜表記のないものはすべて税込です。