4,000軒以上のカレー屋を渡り歩く、カレー愛好家がナビゲート!
「カリー・ザ・ハードコア」
この店名を聞いて、あなたはどんなカレーを思い浮かべるでしょう?
めちゃくちゃ辛いカレー?
大食い選手権に出てくるようなドカ盛りカレー?
マニアックな知識を求められる、難解なカレー?
いやいや全く違うんです。
理屈抜きに美味しくて、面白くて、足しげく通う女性ファンも多いお店。けれど、実は店主もカレーも個性的で、よくよく考えたら結構ハードコア。本記事では、2024年にブレイクしそうなお店の魅力に迫ります。
やさしい美味しさなのに、こだわりが“ハードコア”な絶品カレー/カリー・ザ・ハードコア
場所は東京メトロ雑司が谷駅近くの住宅街。周囲の雰囲気とは一線を画した佇まいのここが、ご紹介する「カリー・ザ・ハードコア」。個性的な看板から入店を戸惑う人もいそうですが、大丈夫(笑)。ガラガラガラッと扉を開けて入店しましょう。
店内に入ると、「いらっしゃいませ」と店主の声。居酒屋として営業していたお店を活用しているため、カウンター席がメインです。
店主の喜多康平さんは、なんと元声優。声優時代にトークライブで提供したカレーが好評だったため、いつの間にかカレー屋が本業になったそうです。そんな同店は、2020年1月に大久保駅近くの居酒屋でランチ間借りとしてスタート。2021年4月から、現在の場所で実店舗を構えました。
2023年末には、営業スタイルとメニューを一新。水曜日〜金曜日は“ほぼ”月替わりの「おもしろカレー」を、土・日曜日には間借り時代から人気の「創業ハンバーグカレー」をメインで提供。加えて、週替わりの「あいがけカレー」を提供しているんです。
まずは、平日メニューをご紹介しましょう。
店主のオリジナリティーが詰まった、平日「おもしろカレー」
平日の水曜日〜金曜日に提供している「おもしろカレー」(1,300円)。この日いただいたのは、「今回のメインメニュー」である「ハードコア大山どりカレー」(写真左)に「週替わりあいがけ」の「カルパシ香るポークカレー 」(写真右)を組み合わせた一皿です。
まず「ハードコア大山どりカレー」をいただきます。とにかく鶏肉のうまさと食感がバツグン!そしてレンコンの食感がほわっと軟らかくて面白い。カレーは辛さ控えめながら、酸味とうま味のバランスが絶妙です。聞けば、タマネギとトマトをベースにしたカレーソースを昆布と鰹の合わせ出汁で割っているそう。
さらに大山どり、レンコン、青菜を具材ごとにそれぞれの出汁で仕込むという和食をベースにしたアプローチで、完成までに半年かかったカレーだそうです。めちゃくちゃ手間がかかっている上に、いい食材も使っている、だからシンプルに美味しい。素晴らしいチキンカレーなのでした。
お次はあいがけの「カルパシ香るポークカレー 」。カルパシとは、南インド・カルナータカ州などで使われる地衣類の珍しいスパイス。地衣類?ほら、古い桜の幹を覆う薄緑の苔のようなものがありますよね。あれが「ウメノキゴケ」という地衣類で、カルパシもその仲間なんです。スパイスとして使うと、ほのかなスモーキーさが加わるんです。あぁ、こう書いていると結構マニアックでハードコアだ(笑)。
「結果的に、脳に最短距離で届く美味しさを心がけています」と喜多さん。そう、実際に食べてみれば小難しい理屈は抜きにして、ちゃんと美味しいんです。
そして同店ならではの食材、それが「シュマルツ」。シュマルツって一体???
ライスの脇に添えられた白いペースト状のこれが、「シュマルツ」というドイツの背脂バターなんです。ドイツでは酸味のある黒パンや煮込み料理に用いられるものですが、これをカレーに合わせるという発想はここだけのもの。
そして、これがとにかく美味しいんです!
後半、ちょっとずつカレーに混ぜ込んでいくと、クリーミーでふくよかな風味が加わってめちゃくちゃ癖になっちゃいます。背脂と聞くとちょっと重いイメージがあるかもしれませんが、実際はその逆。爽やかさすら感じてしまう、ミラクルな食材なのです。
カリー・ザ・ハードコアといえばシュマルツ。創業以来の人気アイテムで、どのカレーを頼んでも付いてくるアイコン的存在なのです。
食べると虜になってしまうドイツの背脂バターシュマルツとカレーのマッチング。どうしてそんな発想が生まれたのでしょうか。店主の喜多さんに聞いてみました。
「カレー屋を始めるにあたって『どうせやるなら、自分の好きなものを詰めこもう』と考えたんです。まずは大好きなハンバーグを取り入れたくて、ハンバーグ発祥の地ドイツの煮込み料理をベースにしたハンバーグカレーを作りました。知り合いに食べてもらったら、美味しいけど何かパンチが欲しいと言われたんです。あれこれ考えた結果『俺が好きな二郎系、家系ラーメンみたいに、背脂を入れてみよう』と思いついて、調べたら『シュマルツ』が出てきた。なんじゃこれ!?と思いながらもカレーに合わせてみたら『これいける』って。誕生はそんな浅いエピソードなんですよ(笑)」
同店の原点、休日提供「創業ハンバーグカレー」
シュマルツの発見と同時に誕生したのが、土・日曜日に提供している「創業ハンバーグカレー」(1,100円)。間借り時代から続くカリー・ザ・ハードコアの原点ともいえるメニューです。
ドイツのシチュー料理「グヤーシュ」をベースに、スパイスを加えてシャバシャバカレーに仕上げたこちら。ドイツの「フリカデレ」という一口サイズのハンバーグとシュマルツが添えられています。もちろん、カリー・ザ・ハードコアのオリジナルです。
グヤーシュをベースにしたカレーは牛のうま味たっぷり。お米と一緒にお茶漬けのようにスルスルといけちゃうやさしい口当たりです。ハンバーグはきっと誰もが好きな美味しさで、シュマルツと一緒に食べれば味わいはよりリッチになります。
家庭的でホッとする美味しさは、ドイツの家庭料理をカレー化するというハードコアな試みから生まれているんです。
人が人を呼び、みんなに愛されるお店へ
ところで同店のロゴ、見覚えがある方もいるかもしれません。斬新なコラボTシャツで知られるアパレルブランド「ハードコアチョコレート」(通称「コアチョコ)のロゴと似ているんです。
「元々ハードコアパンクのバンドをやっていたのと、コアチョコが好きだったのもあって、カリー・ザ・ハードコアという屋号で間借りカレー屋を始めました。そのことをSNSで投稿したら、突然MUNEさん(「ハードコアチョコレート」代表兼デザイナー)が反応してくれたんです。しかも間借り営業初日にきてくれたんですよ」
「その時『お店のロゴ書きますよ』と言ってくれたのですが、流石に畏れ多かったので『もうちょっとお店が大きくなったら依頼させてください』とお返事しました。すると、次にMUNEさんが食べにきてくれた時、USBをぽん!と置いて『ロゴできたよ』って。その漢気に随分支えられたし、そこから新しい人との繋がりも生まれました。いろんな人たちに支えられてなんとかやってこれてるって感じですね」
コロナ禍に開業して、地獄を見た。資金繰りが苦しくて閉店の危機もあったそう。けれど喜多さんはこう話してくれました。
「本当に、苦しいことの方がずっと多かったんですけど、最近こう思えるようになったんです。『俺、カレーライス屋になりたいな』って。今、やっとカレー作りが心底楽しいと思えるようになってきたんです。だから、いろんな挑戦をしていきたい。今までの経験を一回まっさらにして新しいカレーにもトライしたいし、バー営業もやってみたいな、なんて」
「けど、何をやるにしても、軸足はカレー。それとシュマルツ。シュマルツにはまだまだ未知の可能性がありますから」
今まさに第二章へと突入したカリー・ザ・ハードコア。東京が誇る名店の物語は、今ここから始まるのかもしれません。
〒171-0032
東京都豊島区雑司が谷 2-26-6 ふらっと雑司が谷1階左
雑司が谷駅
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※本記事内の情報は2024年01月13日時点のものです。掲載情報は現在と異なる場合がありますので、事前にご確認ください。
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