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今回ご紹介するのは「東京近郊の穴場“邸園”」です。“邸園”というのは“邸宅”と“庭園”を掛け合わせた造語。各地のお屋敷や旧邸宅には、スポット名に「庭園」と付いていなくとも、素敵な庭園が併設されていることが多く、そんなスポットを言い表す際に(一部の方が)使い始めている言葉なんです。
2018年に国の重要文化財に指定された川口市の“邸園”/旧田中家住宅
埼玉県川口市にある「川口市立文化財センター 旧田中家住宅」。埼玉とはいえ、東京と隣接する川口市にあり、さらに最寄駅である埼玉高速鉄道の川口元郷駅は東京都内を出てから最初の駅と、都心からのアクセスはバツグン。駅からも徒歩7分ほどで到着します。
こちらの旧田中家住宅は、大正時代に建築された洋館と昭和初期に建築された和館が2018年に国の重要文化財に指定されたばかり。関東大震災も乗り越え、東京近郊に残された貴重な近代の邸宅の一つ・・・にも関わらず、まだ決して知名度は高くなく、穴場といえるのです!
江戸時代〜昭和初期にかけて味噌醸造業者・材木商として財を成した田中家。「田中家住宅」は、四代目・田中德兵衞が建設し、大正12(1923)年に完成しました。自ら材木商を営んでいたことから建築資材にはこだわりがあり、当時入手できる最高級の木材を用いて作ったといわれています。
洋館の外観は建設当時の煉瓦造りのままで、全階にある洋室も、当時の調度品などを含めキレイな状態で保たれています。見どころを挙げ出すとキリがないのでぜひ足を運んで実物を見てほしいです。
庭園があるのは、洋館の東側に続く和館。一見すると純和風の内観ですが、よく見ると照明は洋風なデザインのものを使用しているなど、和と洋の“いいとこ取り”が、昭和の和風建築らしく魅力的です。
2階建てで、写真は1階の様子。10畳の仏間、12畳の次の間、15畳の座敷が並び広々としています。
洋館も良いですが、やはり庭園好きとしては、和館から望む広い縁側×和風庭園の風景をまったりと堪能してほしい!写真を撮る際は、和室の座敷に座り、上の写真のように庭園とガラス戸とを1枚の絵のように切り取るのがオススメです。
庭園内を歩くこともできます。現在見られる庭園は昭和48(1973)年に整えられたものなので、100年近くの歴史があるお屋敷と比べると、少し新しいのです。
とはいえ50年の年月を重ねたお庭。樹木も大きく育ってきて、徐々に歴史的建造物に溶け込んできているように思えます。ちなみに以前この場所には田中家の家業だった味噌醸造蔵があったのだそうですよ。
順路に沿って歩くと、先の写真のような洋館が後ろにのぞく枯山水庭園に加え、こちらの鯉の泳ぐオーソドックスな池泉庭園もある「回遊式庭園」になっています。さまざまな種類の庭園が楽しめるのが、旧田中家住宅の庭園の魅力です。
そして先ほどの池泉庭園の奥には、お茶室があります。写真はお茶室に向かうまでの“露地(ろじ)”と呼ばれる庭園で、通常この露地は屋外に設けられていることが多いため、建物の中に全て入っているのは珍しいんです。
こちらの空間は、伝統とモダンが掛け合わさったデザインのカッコ良さが魅力。外から差し込む光がうっすらと露地を照らせば、静寂さがいっそう引き立てられるような気がします。
川口市には他にもレトロな建築や庭園がいくつか残っています。ぜひこの「旧田中家住宅」も散歩コースの一つとして訪れてみてください!
- 川口市立文化財センター 旧田中家住宅
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所在地
埼玉県川口市末広 1-7-2
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最寄駅
川口元郷
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電話番号
048-202-6179
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※本記事内の情報は2023年07月29日時点のものです。掲載情報は現在と異なる場合がありますので、事前にご確認ください。
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