シュウマイ研究家がナビゲート!

シュウマイを長く食べ続けるため「焼休日」を設けるほど、ほぼ毎日シュウマイを食べている、シュウマイ研究家のシュウマイ潤です。この連載では、今まさにブームになりつつあるシュウマイの王道から新鋭まで、さまざまなシュウマイの名店を紹介します。

 

今回は「元祖町中華のシュウマイならココ!」ということで、横浜にある「淺草 來々軒(アサクサ ライライケン)」を紹介します。

元祖・町中華!横浜で復活した明治の繁盛店/淺草 來々軒

元祖町中華のシュウマイ!新横浜ラーメン博物館「淺草 來々軒」シュウマイ研究家・シュウマイ潤のイチ推し。_750280

「淺草 來々軒」という名前を聞いたことがある人は、少なくないでしょう。

 

創業は1910年(明治43年)。多いときには1日約3,000人が来店し、当時の新聞などで繁盛店の代表格として紹介されていました。以後、いわゆる「ラーメン店」と呼ばれる同店のような業態、すなわち大衆食堂的中華店が増加し、それが今でいう町中華の原型となっていった、と私は分析しています(ラーメンや町中華を専門で研究する方は他の解釈かもしれませんが、あくまでシュウマイ的な視点で)。


日本におけるラーメンだけでなく、まさに町中華の幕開けを象徴する存在。そのラーメンについては多くのラーメン好きが記し、語ってきていますが、その傍らに「シューマイ(当時のメニュー表記に準ずる)」があったことは、意外に知られていません。

 

そんな「淺草 來々軒」は第二次世界大戦時に一時休業。戦後に復活してからは八重洲、内神田へ移転しながら営業を続けますが、残念ながら後継者がおらず、1976年(昭和51年)に閉店しました。

▲新横浜ラーメン博物館 地下2階のようす

▲新横浜ラーメン博物館 地下2階のようす

しかし、それから40年以上経った2020年10月、「淺草 來々軒」は「新横浜ラーメン博物館」内で復活を遂げたのです!


私はこの復活劇の以前から、「淺草 來々軒」が町中華の元祖的な存在であったこと、さらにはそこにシュウマイがあったことはリサーチ済みでした。が、知った時点では閉店しており、その原点となる味を体験することはできない・・・と、諦め、落胆していました。なのでラーメン博物館内に復活していることを知ると、すぐさま博物館へと向かいました。


現在は当時の人気メニュー「支那そば」を忠実に再現した「らうめん」を食することができます。その「らうめん」とともに、創業当時から提供されていたとされる「シウマイ(当時のメニュー表記はシューマイ)」も復活しました。

 

館内全体の昭和ノスタルジーな空間と同様に、店構えと店内の雰囲気も昭和らしさが漂います。食券を買っていざ実食です。

“かみつける”大ぶりシュウマイ。隠し味は意外にも・・・

▲「シウマイ」(1個160円)

▲「シウマイ」(1個160円)

出てきた「シウマイ」は、私の想像を遥かに超える60gほどの「超大ぶり系」。「大ぶり系」は1個50gほどのものを指し、それ以上のものは「超」をつけることにしています。

 

味わってみると、かみごたえがしっかりとした「ガッチリ系」。つまりこのシュウマイは「超大ぶりガッチリ系」と言ったところでしょうか。


そしてその塊が60g級のビッグサイズだと、肉の塊を「かみつく」ような豪快なエンタメ感も体験できます。大ぶりシュウマイを食べるときの醍醐味のひとつですが、まさかこの元祖町中華のシュウマイでそれが体験できるとは、うれしい誤算でした。

  • ▲その日提供される「シウマイ」は全て手作りで仕込み、包んでいました

    ▲その日提供される「シウマイ」は全て手作りで仕込み、包んでいました

  • 元祖町中華のシュウマイ!新横浜ラーメン博物館「淺草 來々軒」シュウマイ研究家・シュウマイ潤のイチ推し。_750284

具材の構成は、肉と玉ねぎ中心の基本の組み合わせ。味付けも極めてシンプルなので、具材のうま味がそのまま味わえます。ただ、ガッチリしながらも食感がどこか心地よく、後味もさっぱり、これはなんだろう・・・と思い、シェフに伺うと、豆腐を入れているとのこと!これは今まで1,000種以上のシュウマイを食べた私でも未体験で、さすが隠し味も一味違う、と感激しました

 

厳密には、これは当時の「淺草 來々軒」の「シューマイ」の完全再現ではありません。現存するレシピはなく、創業者一族の記憶に頼りながら作られたそうで、その味を開発する中で豆腐を入れるアイデアが生まれたそうです。


元祖の味そのまま、というわけではなく少々残念な気もしましたが、豆腐も入った「超大ぶりガッチリ系」は、町中華創世記のシンプルかつワイルドな味わいと、現代的な繊細な食感が融合し、これはこれで完成されたシュウマイといえるのではないか、と私は感じました。

 

いずれにしても、理屈抜きにシンプルなシュウマイとして、かなりレベルの高い一品であることは間違いないです。

忠実に再現した「らうめん」との相性もバツグン

▲「らうめん」(980円)

▲「らうめん」(980円)

私は町中華などでシュウマイとともにラーメンを食べる際(シュウマイだけ食べているわけではありません)、その店の看板メニューを頼むようにして、シュウマイとの相性「シュウマリアージュ」を試しています。シュウマイを口に入れた後にスープを飲んだり、スープ自体に浸したりして、ラーメンとの相性を楽しみます。


そしてこの「超大ぶりガッチリ系」のシンプル味の「シウマイ」は、「らうめん」と相性バツグンでした。シンプルスタイルの醤油味のスープに、これまたシンプルスタイルの「シウマイ」が見事にマッチ。どちらの個性も邪魔せず、むしろ個性を引き出し合い、それぞれの味をまた食べたくなるような「シュウマリアージュ」が生まれていました。


この種のマリアージュが成立する店は、私の研究では「淺草 來々軒」に続く戦前戦後ごろ創業の老舗町中華に多いと思われます。とはいえ、いつまでも、あると思うな、町中華とシュウマイ。

 

幸い、「淺草 來々軒」は新横浜の地で復活しましたが、老舗町中華はさまざまな問題で姿を消しています。その応援をするには、食べに行くのが一番。その一環として、新横浜にも足を運んで欲しいと思います。


ただし「淺草 來々軒」の「シウマイ」は、手作りのため、土日祝のみの提供。数にも限りがあるので、売り切れの場合はご容赦を。いいシュウマイを出す店の定石でもありますが、食べたい場合は早めの時間に訪れましょう。

スポット
淺草 來々軒

〒222-0033
神奈川県横浜市港北区新横浜 2-14-21 新横浜ラーメン博物館 B2F

新横浜駅

〒222-0033
神奈川県横浜市港北区新横浜 2-14-21 新横浜ラーメン博物館 B2F

新横浜駅

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※本記事内の情報は2023年02月23日時点のものです。掲載情報は現在と異なる場合がありますので、事前にご確認ください。
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