ここ数年、メジャーなイベントの座を欲しいままにしているのがハロウィンである。彗星のごとく現れた大型新人ハロウィン。イベント界のシンデレラボーイ、ハロウィン。いや、ボーイではなくガールかもしれない。昨年も、一昨年も、その前の年も、私はハロウィンの盛り上がりに乗っかりそびれたままだった。
その原因は、「一緒にハロウィンやろう」と言ってくれる友達がいなかったからに他ならない。また、「一緒にハロウィンやろう」とこちらから誘う友達もいなかった。ハロウィンで盛り上がれるか否かが、“リア充”かどうかのひとつの指標になっているようにも思う。
一緒にハロウィンをやろうと言ってくれる友達は今年も現れそうになかったので、とうとう私はしびれを切らして一人でハロウィンをやることにした。
まずは気分を高めるためにも、カボチャのランタンを作りに行きたい。一度でいいから、カボチャをくり抜いてみたかったのだ。私は野菜の中でも5本の指に入るくらいにはカボチャが好きだ。カボチャは見て良し、食べて良し、触って良し。見た目がかわいくて、味はおいしくて、つるつると触り心地も抜群である。したがって、ハロウィンのモチーフがカボチャであることには非常に好感を持っている。この時期、街中がカボチャを全面に押し出しているのも大変喜ばしい。
調べてみると、千葉県の「成田ゆめ牧場」で毎年、ハロウィンの時期にカボチャのランタン作りのイベントが開催されているらしい。
イベント会場へ案内されると、渡されたのは、カボチャひとつと、油性マジック、ナイフ、スプーン、そして作り方の紙。くり抜き方を教えてくれる講師がいるわけでもなく、牧場スタッフの方は、じゃああとはご自由にどうぞ、といった顔をしている。少々思っていたのと違って面食らったが、スタッフの方によると、作り方の紙を見れば誰でも20分ほどで作れるらしい。
まずは、カボチャに油性マジックで顔を描く。
そして、カボチャの底を丸くくり抜く。底の部分は最後にカボチャの中にロウソクを入れたときの蓋となるため、できる限りきれいにくり抜いたほうがよい。少しずつ切り込みを入れ、ぐりぐりとナイフを差し込んでいくと、意外とサクサクとくり抜ける。
底に穴があいたら、スプーンでカボチャの種を取り除く。わしわしと種を掘って出していく作業はなかなかに爽快感がある。
中身を取り出したら、次はカボチャの目や口をくり抜く作業に入る。
まずは、油性マジックで描いた絵に沿って切り込みを入れるのだが、一気にくり抜こうとせず、最初は表面だけを薄く剥がし、皮を剥がした中央部分をナイフでザクザク刺して穴をあけていくようにするとうまくいきやすい。表面が絵の通りに切り込まれていれば、皮よりも内側の部分が多少ガタガタしてもパッと見に影響はないのだ。
穴があいたら、マジックで描いたガイド線に沿って少しずつ削っていく。右目、左目、口、と削り切ったら完成。確かに20分ほどで出来上がった。
そしてハロウィンを目前に控えた土曜日。今年のハロウィンは月曜日なため、その前日と前々日の土日が実質ハロウィン本番になるはず。私も作ったランタンを持って仮装をして外に出よう。何を着るか考えに考えた結果、ネットで買った「モナ・リザ」の仮装をすることにした。顔はめパネルのように、「モナ・リザ」の顔の部分から自分の顔を出す衣装(?)である。
ハロウィンはここ数年、盛り上がりを見せている分、問題視されることも多い。仮装して街歩きをした人たちが出すゴミ、混雑した場所で写真を撮って通行人の邪魔になること、トイレなどを占拠して着替えることなどが挙げられる。「モナ・リザ」は折り畳んでカバンに入れて持ち運べる上に、顔に当てるだけで装着できるためトイレや更衣室は不要。もちろんゴミも出ない。幅はとるが、通行人の邪魔にならないように人通りの少ない道を歩くつもりなので問題ないだろう。
また、ハロウィンで仮装するとなると、写真を撮らせてほしいと言ってくる人もいるかもしれない。だが、私は撮られるときに笑顔を作るのが苦手だ。これが「モナ・リザ」になりきっていたらどうだろうか。これなら、否が応でも「モナ・リザ」よろしく微笑むことくらいできるかもしれない。とびきりの笑顔はすぐには無理でも、まずは微笑むことからやってみよう。
渋谷駅を出て、人通りの少ない道へスタスタと歩いた。
まだ17時頃だったからか、思っていたよりも仮装をしている人は少なかった。これから深夜にかけて増えるのだろうか。ハチ公前が最も人が多く、仮装した人は道玄坂やセンター街へと歩いていく。メインの通りから少し裏に入ると、驚くほど人がいない。
スチャ、と顔に「モナ・リザ」を当てる。こんな静かな通りで仮装をしている人などいないため、それはただただ異様な光景だった。
「モナ・リザ」は、終始真顔で歩いた。「モナ・リザ」は、心を無にして、つとめて平静を装った。「モナ・リザ」は、微笑むことができなかった。
なお、自作のカボチャのランタンはカバンにしのばせてあったものの、「モナ・リザ」の額を両手で持っていないと安定しないため、最後までカバンに入れたままにするよりほかなかった。家の冷蔵庫の中では今も、ランタンがこちらを向いて微笑んでいる。
一人ハロウィンを楽しむ3カ条
その1 ランタン作りは意外と簡単
その2 一人なら、友人と写真を撮り合うこともないので通行人の迷惑にならない
その3 更衣室いらずの仮装をするとラク
※「成田ゆめ牧場」のカボチャのランタン作りイベントは、記事掲載時には終了しています。来年のイベント開催日は現時点では未定です。
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※本記事内の情報は2016年10月31日時点のものです。掲載情報は現在と異なる場合がありますので、事前にご確認ください。
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