そもそも「花まつり(灌仏会)」ってどんなお祭り?

今回お話を伺うのは、千葉県船橋市に大本山がある萬徳院釈迦寺の竹田門主。萬徳院釈迦寺は、一宗一派にとらわれずお釈迦様の教えを宗旨とするお寺です。


▲気さくな人柄の竹田門主


竹田門主:花まつりが行われる4月8日は、お釈迦様の誕生日とされています。でも、実は諸説あって、はっきり分かっていないんです。本当は、お釈迦様が亡くなった日の2月15日が誕生日とも言われているんですよ。


― ええっ!? 誕生日まちがい疑惑ですか! 4月8日を「花まつり」としたのは、いつぐらいからでしょうか?


竹田門主:もともとは、灌仏会(かんぶつえ)と言って、日本では法隆寺で行われたのが最初と言われています。


― 法隆寺といえば、奈良時代……。そんなに古くからあるんですね。


竹田門主:そうですね。「花まつり」という言い方は、明治になってからです。時代が変わって、古いものに人が集まらなくなり、次第にお祭りが廃れてしまったんです。そこで、浅草のお寺のお坊さんが人が集まるようにネーミングを変えよう……と考えて、4月は花が咲く時期だし「花まつり」と名付けたんです。そうしたら人が集まったので、他のお寺も呼びはじめたというわけです。


▲萬徳院釈迦寺の花まつりの法要


― なるほど。4月はお花見もありますもんね。


竹田門主:もうひとつ「花まつり」と名付けた理由があります。

お釈迦様は、2500年前インドとネパールの中間にあった釈迦国という国で生まれたんです。釈迦国の隣、コーサラ生まれのお釈迦様のお母さん、摩耶(まーや)夫人は、出産のためコーサラへ里帰りをする道すがら、ルンビニーという町のお花畑で休憩をとったんですね。そこで、アショーカという木の花をとろうとして、右手をあげたら脇からお釈迦様が生まれてきたと言われているんです。

― 脇から生まれたって、すごい話ですね!


竹田門主:そうなんです(笑)。とにかく、生まれた場所が花畑だったところから、お花を飾るようになったんです。

花まつりのとき、花御堂(はなみどう)というお堂をつくってお釈迦様を祀ります。お釈迦様は、生まれてすぐに7歩歩いて、右手を上に、左手を下にして「天上天下唯我独尊(てんじょうてんげゆいがどくそん)」と言ったと伝えられています。その誕生したときの姿(誕生仏)を花御堂の中に置き、下にたらいを置いて、お釈迦様に甘茶(あまちゃ)をかけてあげるんですよ。


▲チューリップやマーガレットなど、さまざまな花に囲まれた花御堂


― なぜ甘茶をかけるんですか?


竹田門主:お釈迦様が産まれたときに、九頭の龍、九頭龍(くずりゅう)が現れて甘露(かんろ)の雨を降らせたと言われています。甘露とは甘い雨。それになぞって、甘いお茶をかけるようになったんです。


― 映画では、神様が登場するとき花が降ってくるイメージありますね。


竹田門主:昔から、神仏が現れるとき異常気象というか、空からいろんなものが降ってくると言われています。いまも仏教では、仏様がこれから現れるよ、という印に散華(さんげ)といって、紙でつくった花を撒き散らすことがありますよ。


▲お釈迦様の誕生仏に甘茶をかける。決まりはないが1~3回くらい


― ところで甘茶って、甘いんですか?


竹田門主:うちで出している甘茶は、そんなに甘くはないですね。昔は甘いものが少なかったので、少しでも甘いものは貴重だったのかもしれませんね。ところで甘茶でといた墨汁で習字をすると字がうまくなるという言い伝えもあるんですよ(笑)。


― お茶で墨をするって、びっくりです! 甘茶には神の力が宿っているんでしょうか。甘茶はお釈迦様にかけるだけでなく、参拝者へ振舞われることもあるそうです。


稚児行列など子供のイベントでもある花まつり

― お寺に行って花御堂の中お釈迦様に甘茶をかける、その他には、どんなことがあるんでしょうか?


竹田門主:あとはお寺によっていろいろですが、子供に衣装を着せて地域を練り歩く稚児行列なんかもあります。6本の牙を生やした白い象を子供がひっぱっていく姿が見られますよ。


― 6本の牙を生やした白い象!?


竹田門主:摩耶夫人がお釈迦様を懐妊したとき、六本の牙を生やした白い象が自分の体の中に入る夢を見たと言われ、そこからきているんですね。稚児行列には子供の健康を祝うという意味もあるようです。


▲穏やかな表情のお釈迦さまの像


― 家族連れが多そうですね。一人でも大丈夫でしょうか?


竹田門主:そうですね。お釈迦様を祝うことで、心新たにして自分の心地を確かめるというのはいいと思いますよ。お釈迦様が生まれたとき、なぜ7歩歩いたか? これは6道輪廻(人が死ねば「地獄」「餓鬼」「畜生」「修羅」「人間」「天」の6つの世界をぐるぐる回るよという教え)を外れた7つ目の世界、極楽浄土へ歩み出すという意味なんです。

みんなが平等で幸せに暮らせる場所へ行くために、どうすればいいのか。それをといたのがお釈迦様なんですよ。お釈迦さまの教えを改めて考えてみる時間にするのもいいかもしれませんね。


― 仏教徒なのに、何も知らなかったです……。お釈迦様、すごい人なんですね。竹田門主、ありがとうございました。仏教について、もっと詳しく知りたくなりました。



関東大本山 船橋中央
所在地:千葉県船橋市高根町2233-3
電話番号:047-490-9000
最寄駅:船橋


都内で花まつりを楽しめるお寺3選!

4月は、都内のあちこちで花まつりが行われています。ここでは、3寺をご紹介。

<大本山護国寺>

▲ペコちゃんも花まつりをお祝い!


今年の花まつりは、4月3日(日)の午後スタート。50名ほどの稚児(2歳~12歳まで)による稚児練供養(パレード)が、地域ボランティアの協力のもと賑やかにおこなわれます。

護国寺
所在地:東京都文京区大塚5-40-1
電話番号:03-3941-0764
最寄駅:護国寺



<大本山増上寺>

▲浄土宗の寺院


▲増上寺内の明徳幼稚園の園児たちが甘茶をかける


4月8日(金)、11:00より大殿前広場にて開催。雅楽が演奏されるなか、色とりどりの花で飾られた花御堂を設置。参拝者には甘茶が無料で振る舞われます。

増上寺
所在地:東京都港区芝公園4-7-35
電話番号:03-3432-1431
最寄駅:芝公園/御成門/大門



<築地本願寺>

▲境内には食事コーナーや売店も


今年の花まつりは、4月10日(日)10:00~16:00に開催。大江戸助六太鼓、大道芸、ステージでは仮面ライダーショーなどもおこなわれます。

築地本願寺
所在地:東京都中央区築地3-15-1
電話番号:03-3541-1131
最寄駅:築地市場/築地/東銀座




都内のさまざまなお寺で行なわれて、意外と盛り上がっていた花まつり。一人なら、仏教やお釈迦様について考える、または、お坊さんに話を聞いてみる。そんな敬虔な気持ちになる時間を持つのも、たまにはいいかもしれません。


ライター:橋村望 女子部JAPAN(・v・)

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