
遠距離の二人が会う場所は東京スカイツリー
♥千葉の田舎で育った私は(……あ、もう文頭から妄想ですよ)、高校3年のときに、自習室で隣のクラスの男子と仲良くなった。私たちはたまたま家の方向が近かったので、夏休みの自習のあと、利根川の土手を自転車で走って家へ帰る。何度もこうして帰りにたわいもない話をしているうちに惹かれ合い、つきあい始めたのだけれど、大学進学で私は東京の大学へ、彼は京都の大学へ。離ればなれになってしまった。
彼は大学の寮に入り、私は東京のおばさんが持ってたアパートを間借りすることになった。アパートは墨田区にあって、渋谷も下北沢もかなり遠い。最初は少し残念だったけど、近くに東京スカイツリーができると知って心が躍った。
彼はいつも、京都から千葉の実家へ帰る途中に私の家に寄ってくれる。そしてまる二日くらい、たっぷりデートをしてから一緒に実家へ帰省するのだ。
♥遠距離恋愛になって1年ちょっと。今回の夏休みは彼にとって、東京スカイツリーがオープンしてから初めての帰省。ふだん彼が東京に来て私とデートをするときは、だいたい東京の西側に遊びに行っていたけど、今回は東京の東側、しかも歩いて行ける場所。私たちのデート先はもちろんスカイツリー!
さて、デート当日は早起きして、朝8時に家を出ます。まだスカイツリーも空いている時間帯。独特の和風の装飾がほどこされた高速エレベーターで地上350メートル付近の天望デッキを通り、さらにそこから天望回廊へのぼる。渦巻き型の通路を進んでいって、地上450メートル(一般客がのぼれる最高点)へ。
天望回廊は東京が360度見渡せるけれど、それ以外これといって何もない。そこでかなりのんびり、2人でたわいもない話をする。かつて土手を走って帰っていたときのように。
♥朝の東京は日の光に照らされて、汚れたものが何もないかのようにまぶしい。
きっとここは、夕暮れに来ても夜に来ても、東京の別の顔が見えて楽しいだろう。秋にも冬にも違う景色があるだろう。遠距離は辛いけど、こうして時季を変えて何回も来られたらいいな。そうしてここが私たちの新しい土手になっていくんだ……。
ああ今回は全篇妄想で通したから労力が重い! こんな甘酸っぱい恋愛映画のオープニングみたいなところで今回は妄想遮断! ともかく、東京スカイツリーはまだ混んでるかもしれないけど、とってもおしゃれで一見の価値アリだよ!



能町 みね子さん
文筆業兼イラストレーター。「オカマだけどOLやってます。」でデビューし、近刊に「『能町みね子のときめきデートスポット』、略して 能スポ」(講談社文庫)「ときめかない日記」(幻冬舎文庫)など。「久保みねヒャダ こじらせナイト」にも出演中。 https://twitter.com/nmcmnc
※この記事は、レッツエンジョイ東京のフリーペーパー「東京トレンドランキング」2012年8月号(7/20発行)に掲載されたものです。
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