4,000軒以上のカレー屋を渡り歩く、カレー愛好家がナビゲート!

かつて西麻布にあった伝説のフランス料理店「勝沼亭」が、鎌倉・由比ヶ浜でカレー専門店として復活したのをご存じですか?


もともと食のレベルが高い鎌倉ですが、近年はカレー店も急増。そんな中でもこの「鎌倉 勝沼亭」は、他店とは一線を画す、唯一無二の存在感を放っています。


本記事では四半世紀の時を経て「勝沼亭」が復活した経緯、そのカレーの美味しさの秘密に迫ります。あ、スイーツ好きのあなたも要チェックですよ。

伝統を受け継ぎつつ、鎌倉の地で新たな展開を見せるカレー専門店/鎌倉 勝沼亭

あの"伝説的フレンチ”がカレー専門店として復活!鎌倉で異彩を放つ「鎌倉 勝沼亭」_2463670

鎌倉駅から江ノ島電鉄(江ノ電)で2駅目の由比ヶ浜(ゆいがはま)駅。ご紹介する「鎌倉 勝沼亭」は、由比ヶ浜駅の改札から出てすぐのところにあります。

▲看板には「鎌倉 勝沼亭」の名が

▲看板には「鎌倉 勝沼亭」の名が

平成29(2017)年にオープンしたこちらは、かつて西麻布の“伝説的フレンチ”として知られた「勝沼亭」のオーナーシェフ、石田勝彦さんの娘にあたる山口(旧姓:石田)純子さんご夫婦が営むカレー専門店です。

▲かまぼこ型の天井が雰囲気バツグン!

▲かまぼこ型の天井が雰囲気バツグン!

ちなみにここ、鎌倉の有名カレー店「珊瑚礁」初代シェフである堀田さんが独立して開いた洋食店「サンマリオHOTTA」がかつてあったところ。鎌倉のカレーカルチャーの文脈としても由緒正しい場所なんですよ。

昭和49年創業、伝説のフランス料理店「勝沼亭」とは

▲在りし日の西麻布「勝沼亭」(写真提供:鎌倉 勝沼亭)

▲在りし日の西麻布「勝沼亭」(写真提供:鎌倉 勝沼亭)

西麻布「勝沼亭」の創業は昭和49(1974)年。


当時日本では珍しかったビストロスタイルのフランス料理店として話題を呼びました。ビーフステーキを500円くらいで提供するなど、今までのフランス料理店の常識を覆すリーズナブルさも魅力だったようです。

  • ▲1974年4月10日付の「JAPAN TIMES」。一番左下「KATSUNUMA」の文字が見える

    ▲1974年4月10日付の「JAPAN TIMES」。一番左下「KATSUNUMA」の文字が見える

  • ▲ほかにも「日比谷松本楼」「ナイルレストラン」「インドネシアラヤ」など錚々たる顔ぶれ

    ▲ほかにも「日比谷松本楼」「ナイルレストラン」「インドネシアラヤ」など錚々たる顔ぶれ

当時は大使館関係のお客さんが多かったのだそう。鎌倉 勝沼亭の壁には、かつての勝沼亭が最初に紹介された記事だという1974年4月10日付の英字新聞「JAPAN TIMES」が飾られています。

「勝沼亭」閉店、そして復活へ

東京のビストロの草分け的存在として人気を博した勝沼亭ですが、90年代初め、バブル経済がはじけた時代の波に合わせるように閉店。石田シェフご本人は引退後、世界のあちこちを飛び回っていたようです。


純子さんはそんな父のことを「嫌いだった」と言います。けれどもその反面、「なんとか『勝沼亭』の味を残したい」とも考えていました。


最初は父に働きかけ、逗子で3年ほど料理教室を開いてみたものの、やはり「勝沼亭」の名前を残したいという思いは消えず。「どうにかして復活させることはできないか?」と思案するものの、父のフレンチ技術全てを受け継ぐことは自分にはできない・・・。


そこで思い至ったのがカレーでした。「カレーに絞ったら、父から学び取ることができるかも」と。


ところが、勝沼亭のレギュラーメニューにカレーはなかったのです。それでも一度思い立ったら後には引けません。ここから「嫌いだった」はずの父と娘のカレー開発が始まります。

▲「勝沼亭」オーナーシェフ石田勝彦さんの娘である山口純子さん

▲「勝沼亭」オーナーシェフ石田勝彦さんの娘である山口純子さん

父が持つのは、フレンチの技法。けれども鎌倉でお店を出すのなら「和」の要素は欠かせない。そこでフレンチでブイヨンを用いるところを和の出汁である羅臼昆布の出汁に置き換えてレシピを構築。さらに王道欧風カレーのセオリーをあえて外し、小麦粉を用いずサラサラのグルテンフリーカレーを作り上げました。


カレーとしては異色ながら、確かにフレンチの煮込み料理の風合いがある。用いるのは和出汁。伝統を受け継ぎながらも新しい、鎌倉の地にふさわしいカレーが誕生したのです。


そして「勝沼亭」の閉店から約四半世紀経った平成29(2017)年10月、カレー専門店「鎌倉 勝沼亭」をオープン。開店直後は“先代”となる父、勝彦さんも厨房でサポートをしていたそうですよ。

フレンチと和が融合した「鎌倉 勝沼亭」独自のカレー

「鎌倉 勝沼亭」のレギュラーカレーは、

・スパイシーチキンカレー

・スパイシーポークカレー

・ラタトゥイユ(野菜)のスパイスカレー

の3種類。


中でも圧倒的人気はポークです。今回は「スパイシーポークカレー」(1,500円)に「ラタトゥイユトッピング シングル」(+350円)を追加しました。早速いただいてみましょう。

▲「スパイシーポークカレー」+「ラタトゥイユトッピング シングル」

▲「スパイシーポークカレー」+「ラタトゥイユトッピング シングル」

実に美しく端正なビジュアル!


父娘で作り上げたサラッサラのカレーは、フレンチと和が見事に融合しています。


フレンチにおけるブイヨンを最高級羅臼昆布の出汁に置き換え、さらにホールから挽いたクミン、コリアンダー、カルダモン、クローブなどのスパイスとチリペッパーを加えたものが「鎌倉 勝沼亭」のカレーに共通するベース。化学調味料無添加、グルテンフリーのカレーです。


そして具材は・・・

あの"伝説的フレンチ”がカレー専門店として復活!鎌倉で異彩を放つ「鎌倉 勝沼亭」_2463678

ボリュームたっぷり、ド迫力!

肉塊!

この言葉がここまでふさわしいポークがあるでしょうか!


しかも肉自体がとにかく美味しい。これだけでも米が進む、けれどサラサラカレーを合わせるとさらに美味しさが重層的に。なんだなんだ??


聞けば、具材の肉はカレーとは完全に別仕込み。肩ロースに醤油で下味を付け、軽く炙った後にカレーに加えることで、豚肉の香ばしさがカレーにも溶け出すという仕掛け。


用いるのは和素材ながら、手法そのものはまさにフレンチなのです。

▲「ラタトゥイユトッピング シングル」

▲「ラタトゥイユトッピング シングル」

トッピングで加えたのはラタトゥイユ。夏野菜のトマト煮、南仏料理です。受け継がれるフレンチの伝統をひしひしと感じますね。

▲「スパイシーポークカレー」+「深煎りくるみトッピング」

▲「スパイシーポークカレー」+「深煎りくるみトッピング」

こちらは以前食べた、「深煎りくるみトッピング」(+150円)を追加したポークカレー。くるみの香ばしさと食感変化がたまりません!

ハイレベルなスイーツも見逃せない!

▲「クラシック・ベイクド・チーズケーキ」

▲「クラシック・ベイクド・チーズケーキ」

そして!「鎌倉 勝沼亭」で絶対に見逃せないのがスイーツ。実は純子さん、「スイーツオタク」といわれるほど、スイーツ作りに力を入れているんです。


写真は「クラシック・ベイクド・チーズケーキ」(700円、カレーとのセット注文で100円引き)。


はじめてこのチーズケーキを食べたとき、本当にビックリしました。めちゃくちゃ濃厚でめちゃくちゃ美味しい!聞けば、かつて「勝沼亭」で提供していたレシピをそのまま受け継いだ、伝統のチーズケーキなのだとか。これはちょっと外せない銘品ですよ。

▲「キャラメルプリン」

▲「キャラメルプリン」

こちらは純子さんオリジナルのキャラメルプリン「プティ・ポ・キャラメル」(550円、カレーとのセット注文で50円引き)。


トロットロで滑らかな食感。口の中であふれる、ちょっとビターなオトナ味。これまたメチャクチャな美味しさです。卵白をたくさん用いるチーズケーキ作りで余った卵黄を有効活用したい!というきっかけで誕生したメニューだそうですが、いやはや。鎌倉カレーの注目店は、鎌倉スイーツの注目店でもありました。


オーダーごとにドリップしてくれるコーヒー(550円、カレーとのセット注文で200円引き)も完璧。スイーツ目当てにカフェ利用するのも良さそうです。

まとめ

▲夜の雰囲気もバツグン!

▲夜の雰囲気もバツグン!

いかがでしたか?伝説のフレンチ、その伝統を受け継ぎつつ、由比ヶ浜の地で新たな展開を見せる「鎌倉 勝沼亭」。鎌倉観光とあわせ、ちょっと遠出する目的にピッタリのお店ですよ。

【閉店】鎌倉 勝沼亭

〒248-0016

神奈川県鎌倉市長谷 2-1-7

最寄駅:由比ヶ浜駅

※こちらのお店は閉店しました。

本記事内の情報に関して

※本記事内の情報は2024年07月04日時点のものです。掲載情報は現在と異なる場合がありますので、事前にご確認ください。
※本記事中の金額表示は、税抜表記のないものはすべて税込です。
※2025/5/13情報更新