3,000基以上の古墳を巡ってきた、古墳シンガーがナビゲート!
「古墳は空から見ないと意味がない」「歴史苦手だから無理」・・・いえいえ、そんなことはないのです。1500年前には16万基も造られたという古墳は、現在でもコンビニの約3倍の数あり、実はいまでも身近に残る“誰でも楽しめる”存在なのです。
この連載では、古墳シンガーで古墳にコーフン協会会長の私まりこふんが、知られざる古墳の魅力、そして古墳の歩き方を皆さんにご紹介!今回は神奈川県にある「古墳造りの苦労が分かる古墳群」です。
現代の古墳ビルダーたちの苦労を知れる古墳群/桜土手古墳群

▲桜土手古墳群。円墳がポコポコと並びます
古墳というとまず多くの人が「どんな方がこのお墓に眠っているのか」ということを知りたがります。それはそうです。古墳はお墓ですもんね。
しかし個人的に古墳を見たときにまず思うのが「重機もない時代にこんなに大きなお墓をどうやって作ったの!?」ということ。しかも今分かっているだけで国内には約16万基もの古墳があったといわれているため、こんなにたくさんの大きなものを・・・と、さらに疑問が沸いてきます。
そう考えると、皆さんも重機がない時代にどのようしてこれらの古墳が造られたのか知りたくなりませんか?それを学べるのがこちら、神奈川県秦野市にある「桜土手古墳群」です。
▲ポコポコと並ぶ複数の円墳の中に“サイボーグ古墳”が!?
桜土手古墳群は古墳時代の後期である6世紀末から8世紀初頭に造られた、35基の円墳から構成される古墳群です。現在は12基の古墳が保存されていて、その中の6基は「桜土手古墳公園」の中で整備、保存されています。
桜土手古墳公園には、小田急線渋沢駅から徒歩20分ほど歩くと到着。公園入り口を入ってすぐにいくつかの円墳がポコポコと仲良く点在する風景が見られ、私なんかはもうそれだけで心が癒やされニコニコしてしまうのですが・・・あれ、奥の方にある古墳だけ様子がおかしい!?
他は単なる土のマウンドのような古墳なのに、その古墳だけ石がびっちり積み上げられている“サイボーグ古墳”なのです。
▲桜土手1号墳をモデルにして復原された古墳
▲使用している石は消滅した古墳に使われていたもの
こちらは桜土手古墳群の中で最大規模を誇った1号墳をモデルにし、古墳が造られた当時の姿に復原されている古墳です。埋葬施設は横穴式石室という横から遺体を埋葬するタイプで、中に入って見学することができます。
本当のお墓じゃないと分かっていても、とてもリアルに復原されているので少しドキドキします。復原に使用した石は、今では開発で消滅してしまった古墳たちのものだそうです。
そのことを知った時にはこの古墳はただの作り物ではなく、消滅していった古墳たちの魂が宿った古墳なんだなと胸が熱くなりました。

▲リニューアルした「はだの歴史博物館」
桜土手古墳公園内には2020年11月1日にリニューアルオープンした「はだの歴史博物館」があります。
展示などを見ながら秦野市の歴史や文化を学べる博物館で、とくに注目してほしいのが入り口近くにある映像コーナー。復原古墳がどうやって現代の“古墳ビルダー”たちによって造られたのかが詳細に分かる映像を見ることができます。
これを見て本当に「復原古墳はただの作り物」と思っていた自分が恥ずかしくなりました。

▲左が古墳時代、右が現代の古墳造りの様子
映像では、当時の石積みがどうなっていたのかを細かく調べている様子や、石室に使う大きな石をクレーンで釣り上げて積んでいく様子など復原古墳築造の記録を見られるのですが、石一つをクレーンで運ぶというのにものかなりの苦労が伺えます。
今から1500年前にはこういった重機もなく、当時の古墳ビルダーはもっととてつもなく古墳造りに苦労したと思います。でも、重機があったとしても、現代のビルダーだって簡単に造れるわけではないのです。
予算も相当かかりますし、地元の方々の理解がないとここまでの復原古墳は造れないんだなとこの映像を見てしみじみ思いました。
このように、現代の古墳ビルダーたちがどうやって古墳を整備したのかを紹介している施設は珍しいです。私もここで初めて現代の古墳ビルダーの苦労が分かり、かなり感動しました。

▲冬の桜土手古墳公園
昔も今も古墳造りがいかに大変かを知ることができる復原古墳とはだの歴史博物館。ぜひ足を運び、古墳造りの尊さに思いを馳せてみてください。

〒259-1304
神奈川県秦野市堀山下 380-3
渋沢駅
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ライター
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※本記事内の情報は2023年08月29日時点のものです。掲載情報は現在と異なる場合がありますので、事前にご確認ください。
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