【第13回・“大河原邦男展”編】ノスタルジックがとまらない

▲エントランスには大河原メカを設定上の高さで並べた比較図がどかーん。ボトムズのATって意外と小さいんですね

▲エントランスには大河原メカを設定上の高さで並べた比較図がどかーん。ボトムズのATって意外と小さいんですね

個人的にはロボットアニメより、特撮ヒーローの方が好きな熊山です。そうは言いながらも『機動戦士ガンダム』のガンプラブーム直撃世代ですし、否応なしに「サンライズのロボットアニメシリーズ」「タイムボカンを始めとする竜の子プロのアニメシリーズ」を見て育ったクチです。



ぼくみたいな70年代後半から80年代にかけて少年時代を送った子どもたちのDNAに刻み込まれているのが、メカニックデザイナー大河原邦男氏のお仕事。1972年の『科学忍者隊ガッチャマン』でのデビュー以降、80年代、90年代、00年代、そして現在まで第一線で活躍する同氏だけに、「一度も目にしたことがない」という人なんて、日本には存在しないのではないかというくらい有名なお方でございます(ガンダムを見たことのない人なんてほとんどいないでしょう?)。



ロボットアニメファンじゃなくても作品は知っている、そんな偉大なメカニックデザイナーの過去最大規模、かつ未公開作品が一堂に会したという展覧会が、現在上野の森美術館で開催されている「メカニックデザイナー 大河原邦男展」です。ロボットアニメの最前線から離れてはや30年の熊山でも楽しめるのか。一路上野に行ってきました。

カッコよくも柔らかいデザインに「刷り込まれ」を実感

▲タカラのおもちゃ『ミクロマン』のメカデザインも担当。すでにガッチャマン、ガンダムカラーですね

▲タカラのおもちゃ『ミクロマン』のメカデザインも担当。すでにガッチャマン、ガンダムカラーですね

大河原邦男展の構成は、同氏の足跡を追えるように時系列順に並べられています。まず「第1章 メカニックデザイナーとしての黎明」では、デビュー作の『ガッチャマン』にはじまり『ヤッターマン』『ミクロマン』といった70年代の作品群がお出迎え。1974年生まれの筆者は「再放送で見たことがあるかないか」レベルながら、『超電磁マシーン ボルテスV』なんかは兄貴のロボットが家にあったとか、主題歌を思い出したりとか、当時の様子をありありと思い出してしまい、早速タイムトリップが始まります。

▲自宅におもちゃがあった『ボルテスV』のデザイン画。主題歌もしっかり思い出しました

▲自宅におもちゃがあった『ボルテスV』のデザイン画。主題歌もしっかり思い出しました

と同時に『ゴワッパー5 ゴーダム』や『合身戦隊メカンダーロボ』など見たことも聞いたこともない番組(ロボ)もあり、「なるほどです!」とお勉強になります。



ともあれですね、今のカッコよさ重視のクールなメカデザインではなく、カッコよくもどこか柔らかみのある70年代~80年代の大河原デザインがおっさん好きするというか、「刷り込まれてる」んだなと痛感した次第です。

▲目玉は『ガンダム』コーナー。劇場版『機動戦士ガンダムⅢ』のポスターは名シーン中の名シーン「ラストシューティング」。当時のガンプラでは再現できなかった悔しさまで蘇ります

▲目玉は『ガンダム』コーナー。劇場版『機動戦士ガンダムⅢ』のポスターは名シーン中の名シーン「ラストシューティング」。当時のガンプラでは再現できなかった悔しさまで蘇ります

続く「第2章 リアルロボット大フィーバー」こそが、70年代生まれのおっさん直撃コーナー。『機動戦士ガンダム』『太陽の牙ダグラム』『装甲騎兵ボトムズ』『戦闘メカ ザブングル』といったサンライズ系のロボットアニメをはじめ、「タイムボカンシリーズ」の『タイムパトロール隊オタスケマン』『逆転イッパツマン』などなど、母親代わりにお守りをしていただいた作品が目白押し。

▲パチモンライクな『ガンダム』企画段階のスケッチが見られるのも楽しいところ。このまんま出てたらヒットしなかっただろうなあ

▲パチモンライクな『ガンダム』企画段階のスケッチが見られるのも楽しいところ。このまんま出てたらヒットしなかっただろうなあ

ほとんどの人に伝わらない話をしますと、ガンダムのモビルスーツの中でもジムが好きだったぼくとしてはMSV(ガンプラブームを受けて、後出しじゃんけん的に出てきたモビルスーツの亜種。ファースト本編には出てこない)のジムキャノンや、『銀河漂流バイファム』コーナーが、大河原邦男展における絶頂ポイントでした。

▲大河原先生の背後にあるのは描き下ろしのイラストだそうです。大河原邦男「メカニックデザイナー 大河原邦男」描き下ろし作品 2015年 ©サンライズ ©創通・サンライズ ©タツノコプロ ©タツノコプロ・読売テレビ 2008

▲大河原先生の背後にあるのは描き下ろしのイラストだそうです。大河原邦男「メカニックデザイナー 大河原邦男」描き下ろし作品 2015年 ©サンライズ ©創通・サンライズ ©タツノコプロ ©タツノコプロ・読売テレビ 2008

ちなみに内覧会ではお近くに大河原先生がいらしたのですが、SD化(2頭身デフォルメ)されたバイファムが(ガンダム風の)ラストシューティングポーズを取るイラストを前に「こんなのあったんだねえ」と感慨深げにもらしておりました。



本人も覚えてないくらい多作! それが大河原ワークスとも言えましょう。

▲ジュブナイルとロボットアニメを融合した名作『銀河漂流バイファム』。可動部分にポリキャップを使ったプラモも画期的だったんですよね

▲ジュブナイルとロボットアニメを融合した名作『銀河漂流バイファム』。可動部分にポリキャップを使ったプラモも画期的だったんですよね

▲『ザブングル』や『ダグラム』などガンダム以降に模索されたサンライズのロボアニメたち。ザブングルの一輪バイクは斬新だったけど同氏のデザインではない模様

▲『ザブングル』や『ダグラム』などガンダム以降に模索されたサンライズのロボアニメたち。ザブングルの一輪バイクは斬新だったけど同氏のデザインではない模様

▲実は『ドラえもん のび太の宇宙開拓史』に登場するブルトレインのデザインも大河原氏だった! 言われて見ればビックリドッキリメカ風味

▲実は『ドラえもん のび太の宇宙開拓史』に登場するブルトレインのデザインも大河原氏だった! 言われて見ればビックリドッキリメカ風味

知らなかった作品と出会えるチャンスも

その後90年代がメインとなる「第3章 ヒーロー、コミック、そしてリアル」、さらに21世紀に入ってからのお仕事を追う「第4章 21世紀、永遠のスタンダードへ」が続くわけですが、個人的にはアニメから離れてしまったので──なぜか大学時代に観ていた『機動武闘伝Gガンダム』を除き──「勇者シリーズ」や新しいガンダムシリーズなどは全然ピンとこなかったのは正直なところです。



とはいえ知らないなりに想像力が膨らんでしまうのもデザイン画展の面白さ。なかでも、SDガンダムとジャパニーズテイストがうまく混ざりあった『からくり剣豪伝ムサシロード』はちょっと本編を観てみたいなと思いました。

▲あんまりピンとこない90年以降ですが、SDガンダムと『機動武闘伝Gガンダム』は好きでした

▲あんまりピンとこない90年以降ですが、SDガンダムと『機動武闘伝Gガンダム』は好きでした

▲終盤には大河原先生のアトリエを再現したコーナーも。個人的な趣味で作られた『仮面ライダーW』のオブジェも展示。先生もライダー好きなんですね!

▲終盤には大河原先生のアトリエを再現したコーナーも。個人的な趣味で作られた『仮面ライダーW』のオブジェも展示。先生もライダー好きなんですね!

▲こちらは21世紀版の『ヤッターマン』のヤッターワン。やっぱりどこかトボけていてかわいらしい

▲こちらは21世紀版の『ヤッターマン』のヤッターワン。やっぱりどこかトボけていてかわいらしい

最後に待ちかまえるはもちろんミュージアムショップ。六本木ヒルズで開催している「ガンダム展」でも限定プラモを大人買いする人がめちゃくちゃいらっしゃいますが、この「大河原邦男展」でも限定プラモを始めとした大量のグッズが販売されているだけに、ファンは散財必至。この夏、大河原ファン、とりわけガンダムファンはいったいどれほどお金を巻き上げられたのでしょう。



そんなファンたちの「爆買い」を静かに見守るのもソロならではの楽しみ方かもしれません。

▲先生の名前にちなんだ「Oh!かわらせんべい」(1200円)。

▲先生の名前にちなんだ「Oh!かわらせんべい」(1200円)。

▲個人的には白糸酒造の清酒「最低野郎」が気になりました。これで酩酊して最低野郎になりたいです

▲個人的には白糸酒造の清酒「最低野郎」が気になりました。これで酩酊して最低野郎になりたいです

“大河原邦男展”をソロで楽しむための心得

その1 子どもの頃に好きだった作品を探してみよう

その2 音声ガイドには大河原先生のコメンタリーも

その3 ファンが勝手に解説してくれるので傍聴を推奨

その4 グッズショップに備えて資金を用意しておこう

その5 帰宅後じっくり楽しむため画集を買おう

上野の森美術館
  • 所在地

    東京都台東区 上野公園1-2

  • 最寄駅

    上野

  • 電話番号

    03-3833-4191

本記事内の情報に関して

※本記事内の情報は2015年09月01日時点のものです。掲載情報は現在と異なる場合がありますので、事前にご確認ください。
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