【第6回・“みちのくの仏像展”編】上野で味わうみちのくひとり旅

こんにちは、心なしか仏顔のミニくまちゃんです。今回訪れるのは上野恩賜公園にあるご存じ東京国立博物館。こちらの通称・トーハクでは、1月14日から4月5日まで、東北6県を代表する仏像が大集合した特別展『みちのくの仏像』が好評開催中です。


国宝や重要文化財クラスの仏像が集まる同展は、もともと渋いジャンルゆえ、交友関係によっては一緒に出かける相手を見つけにくいかもしれません。なおかつ、テーマはみちのくです。みちのくと言えば演歌歌手・山本譲二さんの名曲『みちのくひとり旅』が浮かぶように、ここはソロで心静かに仏と向き合うのが気分です。

▲お邪魔した際は若いソロ活女子が見当たらなかったので、無駄な煩悩を抱かなくても済みました

▲お邪魔した際は若いソロ活女子が見当たらなかったので、無駄な煩悩を抱かなくても済みました

しかし会場は平日朝から中高年でごった返しているではありませんか。かくいうぼくも中高年なんですけど、よく見れば仏像の前で手を合わせる方もいらっしゃったりして、これは美術展のみならず、東北の仏像をワンストップでおまいりできる仏像フェスという側面ももっているようです。


そう考えたら超お得。ではなく、功徳的に超お徳。

東北三大薬師が集結するのはこの展覧会だけ!

▲東北で初めて国宝に指定された彫刻、薬師如来坐像(福島・勝常寺)。奈良時代の流れを汲むはち切れんばかりのむっちりボディに、深く刻まれた衣のしわが特徴

▲東北で初めて国宝に指定された彫刻、薬師如来坐像(福島・勝常寺)。奈良時代の流れを汲むはち切れんばかりのむっちりボディに、深く刻まれた衣のしわが特徴

▲重要文化財・薬師如来坐像(岩手・黒石寺)は威厳を感じさせるのけぞり具合が特徴。貞観地震と東日本大震災という2つの巨大地震をサバイブしたそうな

▲重要文化財・薬師如来坐像(岩手・黒石寺)は威厳を感じさせるのけぞり具合が特徴。貞観地震と東日本大震災という2つの巨大地震をサバイブしたそうな

▲重要文化財・薬師如来坐像(宮城・双林寺)。東日本大震災の余震で一部損壊したため、2年間京都で修復をおこなってきたそうです。いわば復帰後の初ステージというわけ

▲重要文化財・薬師如来坐像(宮城・双林寺)。東日本大震災の余震で一部損壊したため、2年間京都で修復をおこなってきたそうです。いわば復帰後の初ステージというわけ

特に今回はヘッドライナーとして、国宝・薬師如来坐像(福島・勝常寺)、重要文化財・薬師如来坐像(宮城・双林寺)、重要文化財・薬師如来坐像(岩手・黒石寺)という、東北三大薬師が集結しています。これはロックフェスでいうと、レッチリとダフトパンクとレディオヘッドがトリで1日に集中しちゃったようなもんですよ。


もちろん、その他にも東北ならではの仏像がセレクト。東日本の仏像特有の荒々しいノミ彫りの跡を残した「鉈彫像(なたぼりぞう)」から、まるで雪ん子を頭にのせたような愛らしい観音像、奈良や京都の影響を色濃く受けた立派な十二神将像まで、バラエティ豊かな仏像が勢ぞろいなのです。

▲重要文化財・聖観音菩薩立像(岩手・天台寺)は、あえて仏像の表面にノミ目を残す鉈彫像。樹木の霊が仏像に宿るといった、東北独自の信仰のかたちがうかがえます

▲重要文化財・聖観音菩薩立像(岩手・天台寺)は、あえて仏像の表面にノミ目を残す鉈彫像。樹木の霊が仏像に宿るといった、東北独自の信仰のかたちがうかがえます

▲頭の上に雪ん子をのせたような聖観音菩薩立像(秋田・小沼神社)。ニコニコしてますわよ

▲頭の上に雪ん子をのせたような聖観音菩薩立像(秋田・小沼神社)。ニコニコしてますわよ

▲慶派の流れを汲む重要文化財・十二神将立像は、日本のフィギュア文化の源流がうかがえる躍動感あふれるもの。技術はもう800年前に完成してたんですね

▲慶派の流れを汲む重要文化財・十二神将立像は、日本のフィギュア文化の源流がうかがえる躍動感あふれるもの。技術はもう800年前に完成してたんですね

とはいえ会場はコンパクトにまとまっているので、じっくりと解説や音声ガイドをチェックしながらでも1時間半もあれば、十分堪能することができます。

ひとりで歴史ミステリー探偵になりきりたい

▲持国天立像に踏まれる餓鬼はどことなく、なまはげのような趣き

▲持国天立像に踏まれる餓鬼はどことなく、なまはげのような趣き

なかでも個人的に気に入ったのは、重要文化財・薬師如来坐像(宮城・双林寺)の脇にかまえる持国天立像…に踏まれている餓鬼です。どことなく見た目が秋田のなまはげっぽくてユーモラス。


これは東北土着の鬼にローカライズされたのかな?と研究員の方に質問をぶつけてみたのですが、「歴史的になまはげの方が新しいので、むしろなまはげがモチーフにした可能性が高い」とのことでした。なるほど、勉強になります。


ちなみにこちらの持国天立像は東日本大震災の余震で倒れ、お隣の薬師如来坐像の一部を傷めてしまったため、2年かけて京都で修復したのだそうです。どうして京都かと言うと、国宝や重要文化財の仏像は京都と奈良にある美術院の国宝修理所でしか修復してはいけないから。おお、知らないことだらけですよ。

▲メイビー吉祥天といわれる伝吉祥天立像(岩手・成島毘沙門堂)。確かに頭にエレファントがのっかっています。パオーン

▲メイビー吉祥天といわれる伝吉祥天立像(岩手・成島毘沙門堂)。確かに頭にエレファントがのっかっています。パオーン

そしてもうひとつのお気に入りが、「もしかして:吉祥天」と伝わる伝吉祥天立像(岩手・成島毘沙門堂)です。もともとは複数の腕がついていたようですが、日本では吉祥天に脇手が付いている例がなく、さらに謎なのが頭部にのっかっている二頭の象です。象といえばインドではガネーシャ(歓喜天)が考えられますが、一方で象が水をかけあう姿は吉祥天のルーツとなったラクシュミーに見られる造型なのだとか。


いったい彼女は誰なのか? 謎が謎を呼ぶミステリー仏像です。

▲こちら東洋館の地下(11室)クメール彫刻コーナーにあるラクシュミーのレリーフ(まぐさ/東京国土博物館蔵)。やっぱり伝吉祥天はラクシュミーなのか。それともガネーシャなのか…

▲こちら東洋館の地下(11室)クメール彫刻コーナーにあるラクシュミーのレリーフ(まぐさ/東京国土博物館蔵)。やっぱり伝吉祥天はラクシュミーなのか。それともガネーシャなのか…

なお、同じトーハクの東洋館の地下(11室)で総合文化展も見ることができます。クメールの彫刻コーナーでは、ラクシュミーの象のレリーフが見られますので、一緒にチェックして歴史ミステリーに推理を巡らせるのも面白いかもしれません。

▲本館の1階(11室)。福島・勝常寺からは重要文化財・広目天立像が展示されているので(5月10日まで)、国宝と一緒にチェック! なかなかの荒くれ者ですよ

▲本館の1階(11室)。福島・勝常寺からは重要文化財・広目天立像が展示されているので(5月10日まで)、国宝と一緒にチェック! なかなかの荒くれ者ですよ

みちのくの仏像展のチケットがあれば、前述した東洋館や本館、法隆寺宝物館の総合文化展(展示替えあり)も見られるので、同展とあわせて見ればより仏像美術への造詣が深まるかもしれません。


もっともその場合は、まる1日かかりますので、お弁当でも持参して臨むのが吉です。

▲3メートルにもおよぶ十一面観音菩薩立像(宮城・給分浜観音堂)。高台にあり津波の難を逃れたばかりではなく、地域住民の避難所にもなったとか

▲3メートルにもおよぶ十一面観音菩薩立像(宮城・給分浜観音堂)。高台にあり津波の難を逃れたばかりではなく、地域住民の避難所にもなったとか

みちのくの仏像展の期間中は、東日本大震災から4年目を迎える節目でもあります。こんな時期に東京に大集結いただいて誠にありがたい限りですが、ともすると東北以外では風化しがちな震災の記憶をあらためるには、あえて東京で開催し多くの人の目に触れることが支援・復興につながるのかもしれませんね(実際に収益の一部は被災した文化財の修復に充てられるようです)。


東北6県のゆるキャラ大集合!ならぬ、東北6県の仏様大集合!が見られるのは4月5日までですよ。

▲そうそう特設ショップもお忘れなく。人気商品ははんこ(650円)、チケットファイル(300円)、お線香(1080円)とのこと

▲そうそう特設ショップもお忘れなく。人気商品ははんこ(650円)、チケットファイル(300円)、お線香(1080円)とのこと

▲トーハク本体のミュージアムショップでいま人気を集めているのがはにわソックス。子ども用(400円)は新発売。大人用にもオレンジが追加

▲トーハク本体のミュージアムショップでいま人気を集めているのがはにわソックス。子ども用(400円)は新発売。大人用にもオレンジが追加

“みちのくの仏像展”を楽しむための心得

その1 ひとり旅気分で心静かに鑑賞・合掌

その2 仏像に詳しい来場者の話に耳をそばだてるも良し

その3 仏像ミステリーに挑む探偵気分で謎解き遊びを

その4 収蔵展や東洋館も覗いて東北の仏像と比較してみよう

その5 施設内全4箇所にあるミュージアムショップをチェック

東京国立博物館
  • 所在地

    東京都台東区 上野公園13-9

  • 最寄駅

    上野

  • 電話番号

    03-5777-8600

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※本記事は2015年03月02日時点の情報です。掲載情報は現在と異なる場合がありますので、事前にご確認ください。
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