喫茶ライターがナビゲート。創業から約半世紀、老舗喫茶店の新たな挑戦/トロワバグ ヴェール
喫茶ライターの川口葉子です。本記事では、神保町の喫茶店を代表する老舗のひとつ「カフェ トロワバグ」が2024年6月に開いた2号店、「トロワバグ ヴェール」をご紹介します。
トロワバグのイメージカラーを長い歳月を重ねた椅子の「赤」とするならば、2号店はフランス語で緑色を意味する店名の通り、壁や窓、植物のフレッシュな「緑」。
神田の街に豊かな憩いの時間をもたらす、赤と緑の一対。それでは、ユーカリやシマトネリコの緑が揺れるトロワバグ ヴェールへご案内しましょう。
メニューの中心は、ここでしかいただけないクレープ包み。お食事クレープとデザートクレープが、それぞれ2種類ずつ黒板に綴られています。いずれも全粒粉を配合した生地の豊かな風味と、もちもちの食感が最高!
「クレーププリンアラモード」(1,300円、ドリンクセット1,700円)は、1号店トロワバグで好評のカスタードプリンをまるごとクレープ生地で包み、ほろ苦いキャラメルソースと季節の果実を添えた、視覚的にも麗しい一皿です。
ナイフで切って口に運ぶと、もっちりしたクレープ生地の中から優しいプリンがつるんと顔をのぞかせ、キャラメルソースの香りに溶けていきます。ネルドリップで一杯ずつ淹れるコーヒーと調和するおいしさ。
「とろーりトマトグラタンクレープ」(1,400円、ドリンクセット1,800円)は、トロワバグの名物メニューである「グラタントースト」のクレープ版。1号店と同じ手作りのベシャメルソースとハムをクレープで包み、トマトとたっぷりのチーズをのせてオーブンで熱々に焼きあげます。ランチにもちょうどいい満足感。
昭和51(1976)年に創業し、もうじき半世紀を迎えるトロワバグ。両親からお店を受け継いで大切に守り続けてきた三輪徳子さんに、2号店出店の経緯をうかがいました。
「トロワバグはおかげさまで女性を中心に多くの方々にご来店いただき、お待たせしてしまうことも増えてきました。一方で、古くから続く喫茶店の多くは建物の老朽化問題に直面しており、トロワバグも例外ではありません。いざという時のために、神田・神保町界隈にもうひとつ場所があれば安心だと思っていたのです」
そんな折、トロワバグの店内に飾る生花を長年手掛けてきたフローリストの店主が交代し、古いビルの一室に構えていたアトリエを手放すことに。前店主と親交があった三輪さんは、その話を聞いて、それならば・・・と、自然な流れでその物件を借りる決断をしたそう。
フローリストがこだわって整えた風情ある古い扉や窓枠、床などをそのまま利用して、居心地のいい空間が完成しました。飲食店は開店よりも長く維持することのほうがずっと困難ゆえ、できるだけ無理のないかたちでスタートしたのだといいます。
喫茶店にとってもうひとつの大切な要素が「人」です。トロワバグで4年活躍し、手回しの焙煎機で一部のコーヒー焙煎も担当している緑川皆さんが、トロワバグ ヴェールの若き店長に。特訓を重ね、もちもちのクレープを丹念に焼いています。
「ここは柔らかく優しい空間だから、緑川さんのような男性がお店に立ったほうがバランスがいい」と三輪さん。おまけに、奇しくも名前が「緑」!
「母が読書好きだったので、子ども時代は母に連れられて神保町の書店と喫茶店をめぐって過ごしていました」と緑川さんは語ります。
「僕にとってコーヒーの魅力は、味作りの幅の広さにあります。コーヒー好きの方々のさまざまな感情に寄り添える一杯を提供していきたい。もちろんクレープも!」(緑川さん)
三輪さんは「守るべきものと変えるべきもの、両軸が必要」と考え、2つの店舗でそれを魅力的に体現しています。地下階の落ち着いた「赤」と、空の色が見える地上の「緑」。2軒のはしごを楽しむ人々もいるそう。
神保町交差点前のトロワバグから歩いて約8分、ぜひ足をのばしてみてくださいね。JR水道橋駅から歩く場合は、5分ほどでトロワバグ ヴェールに到着します。
〒101-0064
東京都千代田区神田猿楽町 2-7-7 倉林ビル1F B室
水道橋駅
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※本記事内の情報は2024年11月25日時点のものです。掲載情報は現在と異なる場合がありますので、事前にご確認ください。
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