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喫茶ライターの川口葉子です。


北鎌倉には円覚寺、建長寺をはじめとする名だたる古刹が集まっています。そのひとつ、鎌倉時代に開かれた東慶寺の山門の階段下に佇んでいるのが今回ご紹介するお店。


豊かな庭の緑やあじさいに囲まれてサイフォンコーヒーを飲んでいると、心の中にまで緑がしたたってくるように思われるのです。

品格のある空間で歴史と文化に思いを馳せる/喫茶吉野

【北鎌倉】“お寺の階段下”に佇む昭和創業「喫茶吉野」_1474602

北鎌倉駅西口から歩いて4分。「東慶寺」の小さな参道に入ると、東慶寺の山門へと続く苔むした階段が見えます。そのまま進んでいけば、すぐ左手に隠れている「喫茶吉野」が姿を現します。この日は時おり小雨がぱらつき、濡れた屋根や植え込みの緑がしっとりした風情を漂わせていました。


グレーの瓦屋根にレンガの外壁をあわせた和洋折衷の造りは、北鎌倉で暮らした建築家・榛沢敏郎(はんざわとしろう)の設計によるもの。北鎌倉一帯には喫茶吉野のほか、東慶寺の宝物館「松岡宝蔵」や駅前の喫茶店「門」など、榛沢敏郎が手掛けた建築が点在しています。

【北鎌倉】“お寺の階段下”に佇む昭和創業「喫茶吉野」_1474603

喫茶吉野の落ち着いた空間には、緑の気配がたちこめていました。みずみずしい窓辺の緑がテーブルの表面にも映って、なんとも美しい眺め。ソファを張り替えた以外は、昭和55(1980)年の開店当時から変わらぬ姿でお客さまを迎えているそうです。

【北鎌倉】“お寺の階段下”に佇む昭和創業「喫茶吉野」_1474604

店主の吉野文史男さんにお話をうかがいました。


「喫茶吉野は父が72歳の頃、母といっしょに始めたお店。多くの方々にご協力いただきながら営業を続け、現在は私がオーナーをつとめています」


東慶寺とは何かご縁があるのでしょうか?と質問すると、


「東慶寺は江戸時代まで女性救済のための縁切り寺として、家庭裁判所の役割を果たしてきたお寺です。明治時代には住職の釈宗演のもとに世界に禅の思想を広めた鈴木大拙など多くの文人が集まりました。そのグループに私の親族も参加していたんです」


そんな歴史と文化の深みに思いを馳せると、喫茶吉野で過ごす時間がいっそう貴重なものに感じられますね。

【北鎌倉】“お寺の階段下”に佇む昭和創業「喫茶吉野」_1474605

おすすめのメニューは「コーヒーとケーキのセット」(1,100円)。コーヒーは一杯ずつサイフォンで濃いめに点て、創業当時にそろえたフィンランド・アラビア社のカップ&ソーサーで提供されます。


コーヒーとの相性を大事にして昭和時代からのオリジナルレシピで作るフルーツケーキは、しっとりした舌ざわりが魅力。レーズンやオレンジピールなどのドライフルーツに、スパイスやラム酒がほんのり香ります。テイクアウトも可能(1,900円/フルーツケーキ1本)。

【北鎌倉】“お寺の階段下”に佇む昭和創業「喫茶吉野」_1474606

この品格ある空間を「可能な限り変えないこと、花を絶やさないこと」を心がけています、と吉野さん。


東慶寺の墓苑には文人のお墓が多く、鈴木大拙や西田幾多郎、和辻哲郎など日本を代表する哲学者や、岩波書店の創設者である岩波茂雄、小林秀雄、赤瀬川原平らが眠っていることを教えていただきました。


喫茶吉野の静かな時間を味わいたければ、午前中がおすすめです。貴重な文化財が多数残る東慶寺も、あわせて訪れてみてはいかがでしょう。なお、東慶寺の境内はスマホも含めて写真撮影禁止ですのでご注意ください。

スポット
喫茶吉野

〒247-0062
神奈川県鎌倉市山ノ内 1379

北鎌倉駅

〒247-0062
神奈川県鎌倉市山ノ内 1379

北鎌倉駅

本記事内の情報に関して

※本記事内の情報は2024年05月12日時点のものです。掲載情報は現在と異なる場合がありますので、事前にご確認ください。
※本記事は2023年06月03日に公開した内容を一部加筆・修正した上で、2024年05月12日に再公開しております。
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