「駅名ソムリエール」で独自の視点で新たな駅名を考案しまくった能町みね子さんが、今度は脳内地下鉄建設に着手。ときにみなさんの意見を汲み取りつつ、能町さんの個人的思惑で、今まで線路がなかったあの場所とこの場所の間を脳内地下鉄が走ります。名付けて「夢の地下鉄21号線」!

能町みね子の夢の地下鉄21号線


第十八回 環八線その3(田中駅~丸久保駅)

環八線は基本的に環八の下を掘り進んで行きますが、井草の先、笹目通りと分岐する三叉路に「田中駅」を作ったあと、ちょっと笹目通りへと寄り道して外側にふくらみます。

で、「田中駅」は何なのか、と。

ここの住所は現在、練馬区南田中。歴史をたどりますと、このあたりは江戸時代は「田中村」。その後、現在の練馬区三原台あたりの飛び地に新田を開墾して、そこが田中新田と呼ばれるようになります。のちに、昭和になって、旧:田中新田が「北田中」、旧:田中村が「南田中」と呼ばれるようになりました。その後「北田中」のほうだけ「三原台」に改名してしまい、北がないのに「南田中」だけ残る事態に。

ということで、ここは別に「南」じゃないんです。「田中駅」でいいんです。「田中」なんて、あまりに平凡な名前だから逆に目立つでしょ。




平成は終わろうとも昭和生まれの地名はまだ浅い!

「高野台」という地名もどうもしっくりこない名前です。由来は、駅前にある「東高野山・長命寺」の山号から取ったんだそうです。でも、この読み方は本来「(ひがし)こうや(さん)」なのに、地名は「たかのだい」。だいたいこの名前がついたのも戦後で、わりと最近です。だったら、最初からお寺の名前をもらって「長命寺駅」でいいじゃないですか。東の高野山と呼ばれた著名なお寺のようですし。

笹目通りを北へ、大きな「谷原」の交差点でそのまま「谷原駅」。こちらはずいぶん古い地名です。




うどん県ではなく練馬にあるので「練馬高松」

その交差点から北東へ向かいます。都道441号線となっている細道の下をずーっと通っていき、高松三丁目郵便局のあたりで駅を作りたい。

ここの高松というのは古い地名です。しかし高松といえば四国・うどん県の要というイメージが強いですし、そのままの「高松駅」は個人的になんだか抵抗があります。このあたりが「練馬」と呼ばれていたのは昔からのことなので、頭に練馬をつけてあげましょう。代々木上原みたいなパターンで、「練馬高松駅」。




江戸時代から続くかわいい地名を復活

東進すると環八に戻りまして、ちょうど都営大江戸線の「練馬春日町」にぶつかりますので、ここで一駅です。「春日町」の名前は昭和になってから、春日神社にちなんで命名されたとのこと。ここはもともと上練馬村の中心部で、中ノ宮(なかのみや)と呼ばれていた地域です。駅名にはこれを復活させたいです。「中ノ宮駅」で。

次に有楽町線の平和台駅と交差しますが、この駅はかつての記事で「丸久保駅」というかわいい名前に変更しております。ここで乗り換えも可能。

環八の旅はもうちょっとずるずるっと続きます。東京の外周道路は長い。




★「環八線」始発の亀甲山駅~井草駅までの話はこちらでチェック⇒第十六回 環八線1第十七回 環八線2





地下鉄環八線その3



◆「地下鉄環八線その3(田中駅~丸久保駅)」の編集部オススメおでかけスポットはこちら!

長命寺(長命寺駅)
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「東の高野」として広く庶民の信仰を集めた寺。奥之院は高野山を模して建造され、その独特な景観は都指定文化財にもなっている。

ロレーヌ洋菓子店(中ノ宮駅)
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似顔絵による誕生日ケーキが人気の洋菓子店。世界に一つだけの誕生日ケーキを作ってもらえる。

ゆ~ポッポ(丸久保駅)
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日替わりハーブ湯や、空の見える露天風呂もある銭湯。生ビールが飲めるラウンジもあり、風呂上がりの一杯を楽しめる。

能町みね子

能町みね子さん

文筆業兼イラストレーター。
「オカマだけどOLやってます。」でデビューし、近刊に「私以外みんな不潔」(幻冬舎)、「文字通り激震が走りました」(文春文庫)、「中野の森BAND」(ロフトブックス)など。
Twitter:@nmcmnc


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