噂の“蕨もち”を求めて、やってきたのは東京大学。本郷キャンパスの春日門をくぐってすぐ、突然目に飛び込んでくるのが、何百枚もの板が貼り付けられた風変わりな建物。こちら、東京大学の教授でもあり、新国立競技場のデザイナーとしても知られる、隈研吾さんの作品のひとつである研究棟です。

▲春日門を入って徒歩10秒。ダイワユビキタス学術研究館の1F。

その一角をくり抜いたような空間に、本日の目的地「廚 菓子 くろぎ」はありました。本店は湯島にある、日本料理「くろぎ」。その姉妹店として、2014年に東京大学内に和菓子屋をオープン。

ちょうどその頃、和食がユネスコの無形文化遺産に登録されたこともあり、ちょっぴり敷居の高い「くろぎ」の味を誰もが気軽に楽しめるようにと、コース料理の最後に供される蕨もちや葛きりが味わえる店を出したのだそう。

さっそく、お目当ての蕨もちを注文してみました。ガラス越しに職人さんがひとつひとつ、丁寧に和菓子を作る様子を眺めることができます。


ふと手元を見ると、“蕨もち”と聞いて想像する半透明の色とは全然違う! なんだか黒っぽい! 本蕨もち粉とは、ワラビの根から取リ出したデンプンを乾燥させたもの。「くろぎ」では本蕨もち粉100%を使用しているため、混じり気がないから黒っぽい蕨もちになるのだとか。この黒っぽさが、本物の証。上質な本蕨もち粉を使用している和菓子屋は、都内でも数少ないそうです。

最後に氷でキュッとしめて、ひんやりしていて美味しそう! オーダーが入ってから一から作りはじめるので、正真正銘のできたて蕨もちなのです。

▲蕨もち(2,200円)はセットのみ。コーヒー、塩物、干菓子が付いてくる。

目の前に供されたのは、お店のロゴマークと同じ形をした器に、お行儀よく盛りつけられた蕨もち。上にちょこんとのった塩漬け桜のピンクや、添えられたきなこと抹茶風味のうぐいす粉、お盆に添えられた黄色い花など、うっとりしてしまうような鮮やかさ。

まずは、そのままでひと口いただいてみると……舌の上で踊るように、プルプルンと瑞々しい! そして、噛んでみるとモチモチの食感。まさしく、人生ではじめて出合った食感です。

▲お皿の上でも、氷でしっかり氷で冷やされているのもうれしい。

ぷるんぷるんの秘密は、余計なつなぎを一切使わない製法にあり。本蕨もち粉を水だけで練ることで、この食感が実現するのだそう。このぷるんぷるん感は、時間が経つとともに消えてしまい、やがてブツブツ感に変わってしまうとか。つまり30分以内なら、この絶妙な食感が味わえるのです。というわけで、美味しくいただくなら30分間以内に食すべし!

▲お箸で持ち上げると、他の蕨もちとの違いを実感。つかみづらいほどのぷるぷる加減。

食べ方はお好みで。上品な甘さのきなこと、色鮮やかな抹茶と青大豆を混ぜたうぐいす粉。それだけでも充分美味しいのですが、これに黒蜜をかけていただくのがまた絶品。個人的には、定番ですが「きなこ+黒みつ」がすっかりお気に入りに。

▲うぐいす粉のブレンドは、ほのかな抹茶の苦みが女性好み。

「くろぎ」のもう一つのお楽しみは、和菓子と一緒にいただける『猿田彦珈琲』のコーヒー。和菓子に合うように、このお店のためにブレンドされた「絹しずく」の淡口か濃口を選んでいただけます。ホットやアイス、苦手な人には抹茶やカフェラテへの変更も可能。

▲「絹しずく」(900円)は、すっきりとした味わいで和菓子との相性抜群。

ほかにも、お店では葛きりやあんころもち、塩アイスなどがいただけますが、暑くなってきたら食べたくなるのが「かき氷」。期間限定だから、今の時期に味わっておきたい一品です。

▲9月末まで味わえる、黒みつきなこ(1,300円)。7月27日(水)から8月9日(火)まで、新宿タカシマヤにてかき氷の出店も。

テーブルに運ばれてきて、そのボリュームに驚愕! たとえるなら、子どもの頭の大きさぐらいはありそう!? きなこがたっぷりかかっていて、その下にはトロ〜リの生クリーム。氷の山が大きすぎて、白玉も小豆も小さく見えるほど。

ひと口すくってみると、かき氷の中にも黒蜜クリームとあんこが隠れていました。お店で使っているあんこは、隠し味としてお醤油と一緒に練り上げているそう。

「くろぎ」では、甘みを引き立てるために、塩気を上手に使った和菓子作りを心掛けているとか。甘さの中にある、お醤油のほんのりとした香ばしさを感じることができるのは、日本料理店が手掛ける和菓子屋だからこそ。

▲中までしみしみ。中にたっぷりのあんこが隠れていました。

そもそも、「なぜ、東大の中に和菓子屋が?」と不思議に思うところ。実は東京大学の中は、「くろぎ」の他にも、フレンチレストランやイタリアン、老舗の洋食屋さんなどがあり、グルメスポットとしても注目すべき場所。本郷キャンパスは少人数であれば見学は基本的に自由なので、気軽にカフェやレストランを利用することができるとか。

▲ガラスの向こうで、和菓子職人さんが作業している様子を見ることができる。

▲平日はサラリーマンや主婦層が多い。土日は混み合うので、平日の午前中がおすすめ。

テラスは爽やかな風が心地よく吹き抜け、奥には緑を眺められるソファーの特等席も。洞穴のような形で程よく日陰になっているから、これからの季節には気持ちよく過ごせそうです。

▲日が差し込む明るい店内は、天井が高くて開放的。

和食の伝統を大切に守りつつ、話題の珈琲屋さんとのコラボで、和菓子の新しい進化や本物の食文化を次世代に伝えたい……。そんな思いから、東京大学のキャンパス内に出店した「廚 菓子 くろぎ」の自慢の味は、ぜひ一度は味わってみたいもの。

すっかり洋食文化が根付いてしまった昨今ですが、たまには丁寧に作られた和菓子をいただいてみましょう。

静かに時が流れる和の空間で味わうと、背筋がしゃんと伸びて、不思議と心穏やかになります。そして、いつも頑張っている自分への、ちょっとしたご褒美にも。東大キャンパスへの散歩ついでに、ぜひこだわりの和菓子を味わってみてはいかがでしょうか?

廚 菓子 くろぎ
住所:文京区本郷7-3-1 東京大学 本郷キャンパス春日門側
営業時間:9:00〜19:00(LO 18:30)
定休日:不定休
最寄駅:本郷三丁目

ライター/内田あり(女子部JAPAN(・v・))+都恋堂


※2016年7月9日時点の情報です。



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