老夫婦として仲睦まじく歩きたい植物園デート

♥私は、旅先の田舎で会うおばあちゃんも好きだけど、東京のおばあちゃんたちも大好きです。生まれが東京でなくても、10代から東京にいて50年ほど過ごしていれば十分に「東京のおばあちゃん」と言えるでしょう。時代の流れの速さに翻弄されながらも、最先端の空気を吸いつつ年齢を重ねてきた都会の女。かっこいい。

私(一応10代で東京に出てきた)もこのまま暮らしていけばもしかしたら都会の女になれるかもしれませんので、今回はそんな私の40年後(夫がいるものと想定。ポジティブに)を妄想したデートということにします。

私たちは二人とも、自営でやっていた文筆の仕事からはぼちぼち引退し始め、この年になってデートを重ねるようになったのです。出会ったのが遅かったものですから、その頃は二人とも忙しくてあまりデートらしいことはできませんでした。一緒に住んでずいぶん経ってからデートを重ねるというのもおかしなものです。

♥今日のデートは、家から地下鉄で2駅、茗荷谷からのんびり歩いて行く小石川植物園です。ここにはほぼ毎月通っております。先月、遅めの桜を観に来たときからひと月たって、園内は様変わり。目に映える新緑が、花よりも盛んに茂りはじめています。

私は鮮やかな紫のアヤメを楽しみ、夫は木に咲く小花を楽しんでいるかと思えば年甲斐もなく珍しい虫を見つけて喜んだりしています。

園内を休み休みぐるりと周りながら、いちばん奥にある旧東京医学校本館を眺め、また休み休み歩いて戻ってくると、2、3時間たっています。さすがにくたびれるので、ここ数年行きつけの、近くにある喫茶店で休憩します。

♥仕事が忙しい間は社会の趨勢の話や新しい文化の話ばかりだった夫も、最近ではすっかり家の猫の話や唐突に始めた料理の話ばかりするようになりました。それでもときおりテレビやネットでつかんだ流行の話は無視できないようで、完全に「丸くなった」とまで言い切れないところにまたどこかホッとします。

……で、私と夫はきっと帰ってごはんを食べて、一杯だけ軽く飲んで、早く寝るんだろうな。そんな昭和みたいな平穏な老後あるのか? いいんだ、これは妄想だから! 以上!



文・イラスト:能町 みね子さん


能町 みね子さん
能町 みね子さん

能町 みね子さん

文筆業兼イラストレーター。「オカマだけどOLやってます。」でデビューし、近刊に「『能町みね子のときめきデートスポット』、略して 能スポ」(講談社文庫)「ときめかない日記」(幻冬舎文庫)など。「久保みねヒャダ こじらせナイト」にも出演中。
https://twitter.com/nmcmnc

※この記事は、レッツエンジョイ東京のフリーペーパー「東京トレンドランキング」2012年5月号(4/20発行)に掲載されたものです。
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