【おでかけ時のポイント】

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ようこそ、知れば知るほど楽しい“お燗の世界”へ/えんじゃく、

東急田園都市線池尻大橋駅西口から歩いて約3分。玉川通り沿いに立つビルの2階にある「えんじゃく、」は2017年にオープンした、独創的な酒肴と極上の燗酒が楽しめる日本酒バー。


日本酒好きさんはもちろん、日本酒は好きだけど、冷酒や冷や(常温)でしか飲んだことがないという方や、日本酒をこれから始めてみたいというビギナーさんにもオススメのお店です。

温かな木目を基調にした店内は、カウンター席のみの13席。現在はその半数くらいを定員とし、ゆったりとした空間の中でじっくりと日本酒を味わえます。


お一人で切り盛りする店主の髙木晋吾さんは、日本酒好きの間ではよく知られた存在。


神泉の人気和食店「うみとはたけ ぽつらぽつら」を経て、系列の日本酒専門店「うつらうつら」ではお燗番を務め、お燗で日本酒の美味しさを巧みに引き出すその腕前からいつしか"お燗の魔術師"と呼ばれるように。

日本酒セラーも併設する店内では、全国津々浦々から燗酒向きのものを中心に選び抜いた日本酒を500本近く保管。その内、常時60~70種類をすぐに提供できる状態にしてあるのだそう。


「温度帯で異なる風味を楽しめるお酒は、世界中を探しても日本酒だけ。温めて飲むお酒はあってもその目的は体を温めるためで、お酒の味わいそのものを高めるために温度を必要とする日本酒のようなお酒はほかにありません。


燗酒にするメリットのひとつが、『お米の香りや甘みがより際立つこと』。人の味覚は温かい方がより感じやすいので、冷酒よりも燗酒の方がより日本酒の味わいを深く感じられます。『日本酒の本当の楽しさは燗酒にある』と思っているので、お燗の世界に入るきっかけになったらうれしいなと思って店に立っています」(髙木さん。以後、表記略)

まずは燗酒の模範生! ふくよかでまろやかな「丹澤山 麗峰」でスタート♪

「おまかせコース」(食事5品3,400円~)も用意する同店ですが、今回は髙木さんおすすめの日本酒とそれに合う料理を楽しんできました。日本酒も料理と同様にあっさりしたものからスタートして、徐々に濃いものへと変えていくのが上手な味わい方。


一杯目は、髙木さんが「最も日本酒らしい日本酒で、燗酒の模範生とも言える一本」と太鼓判を押す、神奈川県足柄上郡山北町にある川西屋酒造店の純米酒「丹澤山 麗峰」(半合550円~)を。


阿波山田錦という酒米を使い、大きなタンクで2年ほど熟成させた日本酒は、アルコールの角がとれてまるい味わいに。まろやかでこっくりとしたとろみがあり、ふくよかでやわらかな日本酒らしい風味が広がります。


「上品な旨みと穏やかな酸味でバランスがよく飲み疲れしない、ゆるゆるとずっと飲んでいられるお酒ですね。一度60℃くらいまで温度を上げてからお出ししているので、温度が下がるとともに表情が変わっていく味わいも楽しんでいただけると思います」

「丹澤山 麗峰」に合わせるのは、「岐阜県本巣鹿すじのボルシチ~優しい癒し~」(850円 ※写真はハーフポーション425円)。


「日本酒はアミノ酸をたくさん含んでいて、昆布や野菜に多く含まれるグルタミン酸と同じうま味成分なので、お出汁やスープとの相性がとてもいいんですよ。温度を合わせることもお互いの味わいを引き出すポイントです。ロシアの伝統料理で知られるボルシチとも相性がいいんですよ」


こちらのボルシチは、一見すると濃厚そうですが、実はあっさりとした味わい。野菜のやさしいうま味が沁みた出汁にビーツとトマトの酸味、鹿肉のうま味が加わり、あっさりながらもコクの感じられるスープになっています。そこに、「丹澤山 麗峰」のまろやかなうま味がふわりと重なります。

カウンターで堪能したい魔術師の技!豊かな表情を引き出すお燗のつけ方

燗酒のつくり方にはいろいろな方法がありますが、髙木さんはまず「ちろり」と呼ばれる酒器で日本酒を温めます。ちろりは熱伝導率の高い銅製を愛用。


日本酒は5℃刻みで温度別に名前がついていることからも、飲む温度の大切さが伝わります。燗酒は30℃の「日向燗」から、35℃の「人肌燗」、40℃の「ぬる燗」、45℃の「上燗」、50℃の「熱燗」、55℃の「飛び切り燗」まであり、同じお酒でも温度によって表情が変わります。


最初から40℃につけた日本酒と、一度熱めにつけてから冷ました「燗冷まし」の40℃では味わいが異なるのも日本酒の面白さ。温度を上げると日本酒に含まれる雑味成分が抜けるため、一般的には「燗冷まし」の方がうま味を豊かに感じられるそう。

日本酒には蔵元で加熱処理をしたお酒としていないお酒の二種があり、加熱していないものは生酒(なまざけ)と呼ばれます。生酒はお燗につけるのがとても難しいため、燗酒では提供しないお店がほとんど。

 

髙木さんがお燗の魔術師と呼ばれる所以のひとつが、生原酒のお燗も美味しく仕上げる技を持つこと。お店では60℃と80℃のお湯を用意し、生酒は薄口のちろりを使って80℃のお湯で一気に火入れすることで美味しいお燗に仕上げます。

 

「生酒はフレッシュでわかりやすい甘さがあってそのままでも美味しいのですが、燗にすることで別のお酒とも言えるくらいに大きく印象を変えるので、燗酒の醍醐味が楽しめるお酒でもあります。ただし火入れに失敗すると特有の生臭い香りが出てしまうので燗をやらないお店も多いですね。うちでは、せっかくだからその魅力を楽しんでいただきたいと提供しています」

初めてお燗を楽しむ方の場合、お燗をつけている間にまずは冷酒の状態で味を確かめて、燗酒との飲み比べを楽しんでもらうことも多いそう。


「うちのお酒は燗酒向きのものをそろえていますが、冷酒のままでも美味しく味わえるものがほとんど。まずは冷たいお酒を飲んでもらってから、温めて味が変わったことを体験してもらうと、その印象の違いにみなさんとても驚かれます。


とくに普段冷酒しか飲まない方には、燗酒らしい王道の酒をお出ししてもすぐに受け入れてもらえないことも少なくないのですが、冷酒と燗酒を飲み比べて味の変化を体感してもらうことで、燗酒の楽しさがより伝わるようです」


ワインのデキャンタージュのように、ちろりで温めたお酒を徳利に移すことで空気を含ませ、酒をやわらかくすることもお燗番の技のひとつ。


何気なくやっているように見えるこの注ぎ方にもコツがあり、勢いよく注ぐことで香りや味のトゲを取り除いたり、仕上がっているものは静かに移したりと、日本酒の状態によって変える細やかな気配りこそが極上の燗酒を生み出すのです。

最後に徳利を温めて提供したいベストな温度に仕上げていきます。温度は日本酒によっても異なりますが、飲む方のスピードや飲む人数などによっても調整しているのだそう。肩までお湯に浸かっている徳利の愛らしい姿は必見です。


「うちではお一人さまの場合、半合から注文していただけます。もちろんお好みのスピードで良いですが、目安としては30分くらいで半合を飲み切るくらいが良いペースかと思います。飲んでいく間に冷めていき、味や香りの移ろいを楽しむのが燗酒の粋な飲み方。


利き酒をしているわけではないのでゆっくりと味わいながら、三杯目くらいの温度が飲みやすいなとか、熱々の一杯目が好みだなとか、自分の好きな温度帯をだんだん知っていくのも日本酒の醍醐味ではないでしょうか」


ギャップの大きさナンバーワン!「長珍」の飲み比べで燗のすごさを知る

二皿目は、これから最も美味しい時季を迎える白子が主役の「北海道産本白子の炙り、青唐辛子の佃煮」(850円 ※写真はハーフポーション425円)。


言わずもがな、日本酒との相性抜群の白子に炙りで香ばしさを加え、青唐辛子のピリッとした辛味をアクセントにしたひと皿。

合わせる日本酒は、愛知県津島市にある長珍酒造の純米酒「長珍(ちょうちん)」。緻密で濃厚な味わいの長珍は柔軟性も豊かで、冷酒と燗酒でがらりと表情を変える日本酒の最たる一本。


直汲み(じかぐみ)といって、できたお酒をなるべく空気に触れないようにすぐにボトリングした長珍は、冷酒で飲めばフレッシュかつ厚みのある果実感が広がり、温めればお米の甘みをしっかりと感じられます。


「長珍は僕が最も好きなお酒です。一杯目よりは二杯目以降に味わっていただきたいので、“コク”をキーワードに白子と合わせてみました。最大の特徴は温めることで広がるお米のうま味。ミルキーで濃厚な味わいですが、しっかりと酸もあるので白子のくどさをすっきりと流してくれます」

これぞ日本酒の醍醐味!燗冷ましでゆったり楽しみたい「竹雀」

三杯目には髙木さんの地元でもある岐阜県から。揖斐郡の大塚酒造が手がける純米吟醸「竹雀」の生酒をセレクト。自然の力を活用した、昔ながらの製法「生酛(きもと)造り」の改良型である「山廃造り」のお酒です。


合わせる料理は、同じく岐阜を代表する飛騨牛を使った「飛騨牛シンタマのグリル、オニオンソース」(2,400円)。シンタマ(芯玉)は牛の内モモの下部にある赤身肉のことで、キメ細かでやわらかく濃厚な味わいが楽しめる希少な部位。


「うま味の強い飛騨牛のシンタマに負けないくらい、この『竹雀』もまたアミノ酸を含む骨太タイプのお酒。アミノ酸同士の組み合わせだけではくどくなりすぎますが、山廃造りの『竹雀』は乳酸系の酸味もがっつりと感じられるのでお肉の脂を切って次のひと口を誘ってくれます」

「うちでは、サイズの大きな平盃(写真中央。左は通常サイズのおちょこ)でお燗を楽しんでいただいています。大きな平盃は舌全体でお酒の味わいを感じられるだけでなく、おちょこの中で味わいの変化を楽しめるのもポイント。女性なら4~5口を楽しめる量が注げて、盃の中の温度は2分に10度くらい下がっていきます。


三杯目・三皿目になると、それなりにお腹も満たされて味わうスピードもゆっくりになるころ。『竹雀』は“温めて美味しい”と“食事と合わせやすい”という点を大切に造られているので、ゆるやかに下がっていく『燗冷まし』で楽しむのにふさわしいお酒です。少し自分のペースをつかめてきた三杯目あたりでゆったりと味わってみてはいかがでしょう」

まだまだあります♪ プラスアルファで楽しみたい個性派な日本酒たち

最後に髙木さんに“もう一杯注文するなら”オススメの日本酒を教えてもらいました。


「どちらも島根県の酒蔵で、まったく方向性の違うお酒です。最後の締めの一杯としてなら、出雲市・旭日酒造の純米吟醸「十旭日(じゅうじあさひ)」(写真右)を。12年くらい熟成させた古酒でビターさと甘みを併せ持っています。うちはデザートにチョコレートを用意しているのですが、それとも相性が抜群。食後酒として楽しんでいただけます。


松江市の王祿酒造による純米吟醸「丈径(たけみち)」(写真左)は、食事の中盤から後半にかけての食中酒として面白いお酒。ヨーロッパでも人気が高く、濃厚かつシャープなキレ味があり、赤ワインが好きな方が親しみやすい味わいでしょうか。王祿酒造は全国でも特約店が29店しかないので、そういう意味でも特別感があります」

まとめ

日本酒への愛が深い髙木さんの気さくなトークも居心地のいい「えんじゃく、」。日本酒デビューや燗酒デビューとしてはもちろん、ひとり酒デビューの場所としてもピッタリ。日本酒以外に、ワインやビールも用意されています。


実際、常連さんから“日本酒のスタートを切るのにうってつけのお店”と紹介され、一人で扉を開くお客さんも多いのだとか。一人の場合、お酒は半合から、お料理もハーフポーションでオーダーできるのもうれしいポイントです。


「半分くらいのお客さまがお一人でいらっしゃいますね。女性だとだいたい1.5合~3合くらい飲まれる方が多いですが、半合だけでさっくりと帰られる方もいらっしゃいます。日本酒が初めてという方はもちろんですが、量は飲めないけど日本酒を飲んでみたいという方も大歓迎ですので、ぜひいらしてください」

えんじゃく、

所在地 東京都世田谷区池尻3-19-3

電話番号 03-6805-4070

最寄駅 池尻大橋

取材・撮影・文/君島有紀

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※本記事は2021年12月03日時点の情報です。掲載情報は現在と異なる場合がありますので、事前にご確認ください。
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