【おでかけ時のポイント】

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知的好奇心が刺激される、ウッディなデザインが印象的な読書空間/早稲田大学国際文学館(村上春樹ライブラリー)

今回訪れたのは、早稲田駅から徒歩約5分の場所にある「早稲田大学国際文学館(村上春樹ライブラリー)」。


早稲田大学の卒業生である作家・村上春樹氏の著書はもちろん、同氏が寄託・寄贈した小説作品、執筆関係資料、書簡や、海外で翻訳された書籍、蒐集した数万枚のレコード等を保管・公開する施設として、10月1日に開館しました。

白いアーチ状の外観が目を惹き、入館前からまるで異空間にワープできるような気持ちになります。こちらは、村上作品の構造をイメージして隈研吾氏が設計したもの。村上氏が学生時代に通い詰めたという坪内博士演劇博物館に隣接する旧4号館をリノベーションしています。


ここで村上春樹について少しご説明しましょう。1949年に京都市に生まれ、早稲田大学第一文学部卒業後、小説家を志し、29歳の時に月刊文芸雑誌『群像』に応募した『風の歌を聴け』が第22回群像新人文学賞を受賞。作家デビューを果たしました。

 

1987年には『ノルウェイの森』が世界的ベストセラーに。最近では短編集『女のいない男たち』に収録された『ドライブ・マイ・カー』が映画化されるなど、改めて注目を浴びています。

▲地下1階から撮影

▲地下1階から撮影

ライブラリーは、地上5階、地下1階の6フロアで構成されますが、一般の方が利用できるのは地下1階~2階の3フロア。


入館するとまず印象的なのが、地下1階から1階をつなぐ「階段本棚」。上に向かって右側の棚は映画監督や翻訳家など、ライブラリーにゆかりのある10人が選書した「現在から未来に繋ぎたい世界文学作品」が揃っています。

 

上に向かって左側の棚は、村上作品に登場するイメージ(「芸術に触れる」「食べる」など)にテーマ分けした「村上春樹とその結び目」をコンセプトにしているそう。(※いずれも開館時。期間によって入れ替わります)


丁寧な本のさし出され方により、1冊手に取ると、また別の1冊にも興味が湧く・・・そんな読書体験ができるのは同施設ならではないでしょうか。

 

上に向かって階段の右側ステップには腰掛けてもOK。ステップ上のフィギュアが村上作品とどんな関係があるのか想像するのも楽しいですね。

再現された書斎やこだわりのカフェスペースへ/地下1Fラウンジ・カフェ・書斎

では、地下に降りてみましょう!何やら香ばしい匂いが漂ってきました・・・!それもそのはず、地下1階には早稲田大学の学生が運営するカフェ「オレンジキャット(橙子猫-ORANGE CAT-)」があるのです。

 

「オレンジキャット」というネーミングに、ピンときた人もいるのでは。実は村上春樹は、早稲田大学第一文学部に在学中、東京・国分寺にジャズ喫茶「ピーター・キャット」を営んでいたという経歴を持っているのです。

 

そのお店の由来にもなっている「ピーター」という猫が、「オレンジキャット(茶トラ猫)」といわれる種類だったため、それにちなんで命名されたとか。

今回は「ハンドドリップコーヒー」(500円)をオーダー。一杯ごとに豆を挽き、店員さんがじっくり淹れてくれるコーヒーは、深煎りでコク深いテイスト。酸味と苦味のバランスがちょうどよく、村上氏の好きな味わいが再現されているそうです。コーヒー好きにはたまらない美味しさでした!

 

また、同フロアには、ジャズ喫茶「ピーター・キャット」で実際に使用されていたグランドピアノも展示されています。

テーブルや椅子には新しいものをあえて採用せず、リノベーションを施した建物全体の雰囲気に合うよう、1950〜60年代のアンティーク家具を使用しているのがこだわりなのだとか。木質を基調とした温もりあふれる空間とインテリアがマッチしており、心までリラックスできます。

地下1階フロアでは、村上氏が使用している現在の書斎を再現した「村上さんの書斎」にも注目です。

 

執筆スペースを再現した机や椅子のほか、プレーヤーやアンプなどが並んでおり、まるで作家の日常生活を覗き見しているような気持ちになれるかもしれません。壁面のレコード棚には順次村上氏から寄託・寄贈されたレコードが並ぶ予定とのこと。そのラインナップも楽しみですね!

ほかにも、地下へ向かう階段を降りると目に飛び込んでくる『海辺のカフカ』の舞台美術装置も見ごたえがあります。

村上春樹作品がずらり!/1Fギャラリーラウンジ・オーディオルーム

コーヒーを飲んでのんびりしたところで一階に移動すると、デビュー時の1979年から2021年までの作品がずらりと並ぶギャラリーラウンジがあります。ここには、初版本のほか、世界各国のさまざまな言語に翻訳された作品も揃っています。

「ギャラリーラウンジの本は、50言語以上で翻訳されているんです。ここに置いてある本を通して、いつか村上春樹に出会う方々が世界各国にいると思うと、わくわくしますね。いろんな人と繋がれるハブのような場所だと思います」と語るのは、早稲田大学国際文学館事務長の本間知佐子さん。


 偶然隣り合わせた人と、ついつい会話が広がる・・・なんて出来事もあるかもしれませんね。

多くの本が面陳(表紙を見せて陳列する方法)されているので手に取りやすく、今まで村上作品に馴染みがあった方はもちろん、馴染みがなかった方でも見ているだけで嬉しくなってしまうこと間違いなしですよ。

▲ガラスケースに入っているのは村上春樹本人から寄託されたもので、その多くが初版本

▲ガラスケースに入っているのは村上春樹本人から寄託されたもので、その多くが初版本

ちなみに、筆者が一番好きなのは、短編集『カンガルー日和』です。18のショートストーリーはどこか淡く切ないものからユニークなもの、奇怪なものまでさまざまなエッセンスが散りばめられており、毎日一作ずつ読むのも楽しいひと時になることでしょう。

ギャラリーラウンジの本は、同フロアに併設されているオーディオルームでも読むことができます。村上氏のオーディオアドバイザーである小野寺弘滋(オーディオ評論家、元ステレオサウンド編集長)氏がオーディオシステムの選定やセッティングに携わっているとあり、音楽に身を委ねて楽しめる空間です。

ゆったり座って長時間読書できるコクーンチェアを設置するなど、滞在を楽しめる工夫が随所に凝らされています。

文学を基点とした展示、交流スペースも!/2F展示室、ラボ、スタジオ

2階は主に展示スペースとなっており、取材時は「建築のなかの文学、文学のなかの建築」(2021年10月1日〜2022年2月4日まで)展が開催されていました。

早稲田大学・早稲田キャンパスの旧4号館が、建築家・隈研吾氏によるリノベーションを経て、国際文学館として様変わりする過程がわかりやすく解説されています。

建築と文学に関わる書籍も展示されており、本棚は木の幹をイメージしているそう。知的好奇心が刺激されるものばかりで、ついつい立ち止まってしまうかもしれません。


ちなみに、早稲田大学国際文学副館長・国際教養学部教授の榊原理智さん(以下、榊原さん)の一押しは、ここで閲覧できる「樋口一葉」の書籍だそう。


 「樋口一葉は近代初の女性職業作家と言われているのですが、 貧しい生活を送っており、華やかなこととは無縁でした。今、この場所で世界の人々に手にとってもらえる可能性が広がっているのは奇跡的だと思います。ぜひ注目してほしいですね」(榊原さん)

▲「ラボ」は白いテーブルと椅子を基調としたクリーンな空間

▲「ラボ」は白いテーブルと椅子を基調としたクリーンな空間

ほかには、学生たちの研究や交流スペースとなる「ラボ」や、海外への発信を可能にする音響設備を設置したスタジオもありました。

スタジオでは今後、ラジオ収録が行なわれる可能性があるかもしれないとのこと。どんなコンテンツが発信されていくのか楽しみですね。


なお、3階は研究書庫、閉架書庫、4階はセミナールーム、研究室、5階は、事務所や館長室として利用されます。


国際文学館を見学していた早稲田大学文化構想学部学生3年生の小鹿美春さんは「ふだん利用する図書館、博物館とは違い、五感で楽しめるのがいいですね。ひとりで来てもご友人と訪れてもゆったり過ごせると思います。施設内は繋がりを大事にするオープンな雰囲気で、早稲田大学の『いろんな人を受け入れるフラットな空気』と共通するものがあると感じました」と語っていました。

まとめ

「国際文学館(村上春樹ライブラリー)は、紙の書籍を手に取って読めるだけでなく、LPで音楽を聴く、カフェでコーヒーを飲むといった五感が刺激される、まるでテーマパークのような場所だと思います。村上作品はもちろん、それ以外の本もたくさんあるので、みなさんの世界が広がったらいいなと思いますね」 と語る副館長の榊原さん。


 国際文学館で音楽や本、展示に触れるうち、コロナ禍で内にこもっていた、不安な気持ちが解きほぐされるような感覚を覚えました。


 何か新しい物事に出会いたいとき、国際文学館(村上春樹ライブラリー)での時間はきっと特別なひと時になるはずですよ。

早稲田大学 国際文学館(村上春樹ライブラリー)
  • 所在地

    東京都新宿区西早稲田1-6-1 国際文学館

  • 最寄駅

    早稲田

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