「駅名ソムリエール」で独自の視点で新たな駅名を考案しまくった能町みね子さんが、今度は脳内地下鉄建設に着手。ときにみなさんの意見を汲み取りつつ、能町さんの個人的思惑で、今まで線路がなかったあの場所とこの場所の間を脳内地下鉄が走ります。名付けて「夢の地下鉄21号線」!

能町みね子の夢の地下鉄21号線


第十三回 大江戸線新線(八丁原駅~妙音沢駅)

都営大江戸線を光が丘から先に延ばすという計画はすでに具体化していて、もう新駅の建設予定地にはスペースが取ってあるのが地図でも確認できます。練馬区大泉学園町あたりまで延ばすのはほぼ確実のようです。そして、その後はできれば武蔵野線の東所沢駅あたりまでつなぎたいんですってよ。

でも、当初の予定からはだいぶ遅れているようなので、ここは女王が引き取りましょう!

この連載上では私は独裁者なので、途中までは既存の計画に合わせますけど、あとからは私の好きなように線を引きます。そして東所沢ではないところへつないでしまいましょう。




戦中戦後に激動の歴史をたどった「光が丘」駅は戦前の地名に

まずは光が丘を派手に改名してしまいます。

巨大な敷地の光が丘団地は、もちろんわりと最近生まれた地名です。ここは、元々は練馬大根や米を産出する単なる農地→戦中には急遽「成増飛行場」に→戦後はアメリカに接収されて「グラントハイツ」という軍の宿舎に→返還されて団地に、という、めっちゃ紆余曲折あったたいへんな場所。

ここに飛行場を建設する際、計画地として、ここは「八丁原」と呼ばれていました。これは古い地名ですが、いまはもう光が丘団地が建設されたせいでほぼ消滅してしまっています。飛行場すらなかった時代ののどかな原っぱを想像しながら、光が丘を返上して「八丁原駅」にさせてください。

そのまま線路を西に1キロちょっと進むと、「土支田の森公園」の近くに「大江戸線新駅駅前広場予定地」なる看板がもう用意してあります。ここはこの計画に素直に従いまして、ここに「土支田駅」を作りましょう。地名も現行のまま。昔からの地名なのでこれでいいです。

えー、ここからは少し都営の計画よりちょっと北にズレていきます。以前に作った「吉祥寺線」とつなぎたいので、「長久保道」の下を通して、「卵塔坂(らんとうざか)駅」(⇒第五回 吉祥寺線 その3)で接続。妄想と妄想がつながりました。なんて不毛な。妄想世界はどんどん便利になっていきます。




「大泉学園なのに学園がない」問題、再び!

線路は西に進み、大泉学園通りで北に直角に曲がり、大泉学園町の真ん中へんである「風致地区」交差点で一駅作りますが、ここの名前は大泉学園ではなく、「小榑(こぐれ)駅」とします。

「大泉学園」の名前には悲しい歴史がある、ということは以前の「吉祥寺線」の回(⇒第四回 吉祥寺線 その2)で触れました。ここには、当初期待したような「学園」は誘致できなかったんです。ここでもこの「学園」の名は捨て、心機一転しましょう。

ということで、ここは明治時代までは「小榑村」。ああ、読みづらいし書きづらい。そのせいで廃れてしまった地名(憶測)。最近は復活の流れもあるようで、近くの農産物直売所が「こぐれ村」という名前になったり、地元の和菓子屋さんが「小榑最中」を発売したりしているらしい。いまこそ「小榑」復活!




平成の名水百選「妙音沢」に駅を作って新名所化

線路を北に進めて、陸上自衛隊の訓練地に突入しないようまた西に曲がり、くねくねと埼玉県に突入。新座総合技術高校と新座高校の中間で、通学にも便利な一駅を。ここは、そばを流れる黒目川の支流である「妙音沢(みょうおんざわ)」が平成の名水百選にも選ばれてまして、ひそかな観光地となってます。ぜひこの名前で「妙音沢駅」。最近は新種の桜が発見されたりもしてるそうですよ。

地名がらみの蘊蓄で長くなっちゃったので今回はここで一旦終わり。次回、ただただ埼玉県をゆく。つづく。




大江戸線新線



◆「大江戸線新線(八丁原駅~妙音沢駅)」の編集部オススメおでかけスポットはこちら!

光が丘公園(八丁原駅)
スポット詳細はこちら
6ヘクタールもある広大な芝生広場や、野球場、陸上競技場、デイキャンプ場、バーベキュー場なども備える巨大公園。

La毛利(卵塔坂駅)
スポット詳細はこちら
地産地消にこだわったイタリア料理店。店の目の前にある畑で収穫した、朝採り野菜をたっぷり使った料理が人気。

和菓子 大吾(小榑駅)
スポット詳細はこちら
武蔵野銘菓「爾比久良」をはじめ、「小榑最中」など職人の手作りにこだわった和菓子店。

能町みね子

能町みね子さん

文筆業兼イラストレーター。
「オカマだけどOLやってます。」でデビューし、近刊に「『能町みね子のときめきデートスポット』、略して 能スポ」(講談社文庫)、「ときめかない日記」(幻冬舎文庫)、「お話はよく伺っております」(文春文庫)など。
Twitter:@nmcmnc


本記事内の情報に関して

※本記事内の情報は2018年07月19日時点のものです。掲載情報は現在と異なる場合がありますので、事前にご確認ください。
※本記事中の金額表示は、税抜表記のないものはすべて税込です。