二十歳の頃、7つくらい年上の人が「趣味で懐石料理を勉強している」と言っていて、いたく衝撃を受けた。履歴書に「趣味:読書と書くほど本を読んでいるわけではないし……」とうじうじ悩んでいた私にしてみれば、これはちょっとした革命だった。


趣味・特技の定番といえば、読書、ピアノ、テニス、英会話であろう。懐石料理という発想はなかなかない。懐石料理を勉強する、とは一体どういうことなのか。料理を作るのか、はたまたマナーを身に着けるということなのか、それとも歴史や成り立ちを学ぶのか、詳しいことは結局聞けずじまいで、「趣味:懐石料理」の妙なカッコよさだけが強く印象に残った。7年後には「趣味:懐石料理」と言えちゃうような大人になっているに違いない、とそのときは思っていた。


そして7年どころか10年ほどたった今、私は一人で遊ぶことが趣味で、一人でバーベキューをしたり、一人でクリスマスパーティーをしたりして喜んでいる。二十歳の私が憧れる大人になれているかといったら微妙なところである。


そういえば二十歳になったばかりの頃、“二十歳”というのが想像していた以上にあまりに地続きで、結構びっくりした。よくよく考えたらそんなことはあり得ないのだが、成人式だの酒が飲めるだのなんだのと周囲がずいぶんと持ち上げるものだから、二十歳になった瞬間に大人になるものだとわりと本気で思っていたのだ。その後、いくら歳を重ねても、何かが劇的に変わった瞬間は一度もない。だから、今後もないのだと思う。50歳や60歳になっても、一人でバーベキューをしていたらどうしよう。


ならばせめてもののと、一人で懐石料理に行くことにした。年齢が何も自分を変えてくれないのならば、自分を変えるのは自分の行動に他ならない。

▲京王プラザホテルの『蒼樹庵』

▲京王プラザホテルの『蒼樹庵』

▲ひな祭り期間はつるし飾りが有名。今年の飾りの総数6500で、年々増えていっている

▲ひな祭り期間はつるし飾りが有名。今年の飾りの総数6500で、年々増えていっている

▲個人的にイチ押しのエンドウ豆とタコのつるし飾り

▲個人的にイチ押しのエンドウ豆とタコのつるし飾り

そわそわと落ち着かない気持ちで、京王プラザホテルの『蒼樹庵』へと向かった。厳かな雰囲気の入り口で、お店の人がニコニコと出迎えるのが余計に緊張を煽る。高級なレストランなどで案内をされるとき、どういう顔をすればいいのかいまだにわからない。庶民が堂々と偉そうに歩くのも滑稽だし、ようこそいらっしゃいましたと笑顔を向けられているのにまるで無視をするのも居心地が悪い。今のところ、小さく会釈をしながらそそくさと通り過ぎるところに落ち着いている。

▲お料理を待ちます

▲お料理を待ちます

ちょうど今の時期はひな祭り期間ということで、ひな祭り懐石「舞姫」をいただくことにした。メニューの端には折り紙で作られた小さなひな人形が貼り付けてあった。毎日手作業でひとつひとつ折って貼っているらしい。

▲メニューがかわいい

▲メニューがかわいい

▲先付け 桃花豆腐

▲先付け 桃花豆腐

「先付け」の次は「雛盛り」。ひな人形の器や、吊るし雛をイメージした串が華やかな逸品である。

▲雛盛りがやってきた

▲雛盛りがやってきた

▲雛盛り

▲雛盛り

▲ひな人形の中にも料理が入っている

▲ひな人形の中にも料理が入っている

続く「椀盛り」、「お造り」、「鉢肴」、「煮物」はどれも色使いが美しく、運ばれてくるたびにため息が出る。

▲「椀盛り」、「お造り」

▲「椀盛り」、「お造り」

▲「鉢肴」、「煮物」

▲「鉢肴」、「煮物」

▲もぐもぐ

▲もぐもぐ

以前、一人でフレンチのフルコースを食べに行ったときも思ったが、人に見られる緊張のない高級料理はつくづくよいものである。見た目、味、香り、すべてに全神経を集中させることができる。同席する人がいることで、おいしさを共有する楽しみもあるだろう。けれど、私にとっては同席者がいるデメリットのほうが大きく感じる。食事中、常に誰かに見られている緊張により、すべてがかき消されるように思うのだ。

▲最後に出てきたのは桜海老の釜炊きご飯。こちらも色合いが素晴らしい

▲最後に出てきたのは桜海老の釜炊きご飯。こちらも色合いが素晴らしい

一人懐石料理は“お一人様”の中でも挑戦しづらいもののひとつではあるが、ひな祭りなどのイベント時ならば、「特別メニューを楽しみたい」といった言い訳もあって比較的敷居が低いように思う。ホテル内のお店ならばひな祭り以外にも、季節のイベントごとに特別メニューを提供することが多い。

二十歳のときに憧れた「趣味:懐石料理」の人にはなれなかったけれど、結果的に一人で懐石料理を食べに来られるような人間にはなった。二十歳の私が憧れるかどうかは別として、今の私は今の私が結構好きだ。

一人懐石料理を楽しむ3カ条

その1 イベント時ならば懐石料理の敷居も低い。

その2 一人で懐石料理を食べるのは、人と食べるよりも緊張しないのでオススメ。

その3 ひな祭りの料理や飾りはかわいい。

京王プラザホテル 2階 懐石『蒼樹庵』

問い合わせ・ご予約 03-3344-0111

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※本記事は2017年02月27日時点の情報です。掲載情報は現在と異なる場合がありますので、事前にご確認ください。
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