テレビや雑誌で紹介されている、あの有名な蕎麦屋の看板ネコに一度でいいから会いたい!ネコ好きなら一度は耳にしたことがあるのでは?荒川線の通る町屋、“やぶそば”の“ピンクくん”。
“やぶそば”に伺った日は、外はかなり冷え込み、ガラス棚も冷たくなっていたのだろう。「お店の休憩時間になる15時くらいから、いつもあのポジションに入るんですけどね、今日は寒いので入らないかもなぁ」と言いながら、お店の方がなんとか誘導しようとしてくれてる。テレビや雑誌で取り上げられていた“あのポーズ”を、こちらが期待しているのを汲み取ってくださった。
その店番姿は後々拝めることを期待して、まずはピンクくんに「ちゅ〜る」をあげてご機嫌をとる(本来邪道だが、あくまでお店の方が気を利かせてくれてのことなので致し方ない)。とろ〜んとした表情、ペロペロ一生懸命舐める舌…、抗えないこの愉悦の時間、けしからんぞ、「ちゅ〜る」!!
ピンクくん、体重は6kgあるらしく、お客さんからは「ぽっちゃり」と言われがち。お店の方は、気を遣って「ちょっと骨太」という表現を用いている。何気ないところでもネコへの敬意とユーモアがあって、飼い主としてこの人は信頼できる、と心の中で思う。
「最後まで食べないとこの人(ネコ)納得しないから」と食べ終わった「ちゅ〜る」の袋を切り開いて、“ドモホルンリンクル食べ”をさせていた。最後の一滴まで、大事に使いたいものね。ピンクくん、おっとりとしていてネコらしくドライな性格かと思いきや、おいしいものには、年齢肌を気にする女性並みに固執する。
ショーケースでお客さんを呼ぶピンクくん。朝は目覚まし時計という別の仕事がある。「あのー、お腹が空いたんですけど」と、枕元でじっと飼い主の顔を見つめる→鼻の穴を肉球で塞ぐ→口の中に手を入れるというステップで起こしにかかる。おっとりなネコはおっとりなりの攻め方がある。(ちなみに、ウチのネコは、顎を舐めてからの噛みという不愉快さで人を起こす技を持つ)
飼い主さんは、ネコを飼うのはピンクくんが初めてだったが、噛まない、引っ掻かない、爪もダンボール以外では研がない、と落ち着いたタイプなので最初から全く手を焼かなかったという。保護される前は、高齢のおばあさんの家で生活していたからか、と推察する。きっと、ここの店でもたくさん愛されて、のびのびと育ったからだろう。
公園で、餌と一緒にダンボールに捨てられていた頃(いまはショーケースになってよかった、よかった)、ピンクのリボンをしていたのが名前の由来。飲食店をやっていることもあって、なかなか進んでネコを飼う気持ちにはなれなかったが、誰にも引き取られないまま日が経ち、貰い手が見つからず、ついに「うちで飼おう」と決心。
健康状態を見てもらいに病院へ行き、初めてピンクが男の子だと知った。飼い始める時は不安があってネコの飼い方の本を何冊も買って読んだが、全く参考にならないくらい、いい子だった。
ピンクくん自身も、保護ネコとしての自覚があるのか、お店に里親募集のポスターが貼ってあるときに、ガラスケースから外を眺めているだけで、ネコ好きのお客さんが「ピンクを見に来る→里親募集中のネコのポスターを見る→里親に名乗り出る」というピンク効果を生み出している。
以前、5匹の仔ネコの里親募集ポスターを貼っていたら、その日のうちに問い合わせがあり、3日後には5匹全員の里親が見つかるという好成績を残したそう。「これぞ、ネコの恩返しかな。」と店主さんも微笑んでいた。いい子すぎて泣けてくる。
ピンクくんは今は完全な家ネコだし、荒川区では食品衛生に厳しいこともあり、飲食店としての配慮はきちんとされている。基本的には、お店のお昼の営業が終わった15時頃からがピンクくんの自由時間なのだ。「営業中は2階の家で寝ているから、正確に言うと看板ネコではないんだけど。」店先のガラスケースに入るようになったのも、ピンクくんが自ら外を見たくて入り込んでいるだけ、自主的な看板活動なのだ。
これからもお店の利益と、地域のネコたちのために、頑張っておくれよ!
石井芳征(ネコ偏愛者/クリエイティブディレクター/Cat’s Whiskers編集長)
町屋 やぶそば
電話:03-3892-3114
住所:東京都荒川区町屋3-20-17
最寄り駅:町屋駅
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