巷には知らないだけで美味しい魚、その存在すら知られていない魚がまだまだたくさんありそう。そこで、今回は普段あまり食べる機会のない珍しい魚、希少な魚が味わえる東京都内の店をご紹介します。
※今回ご紹介する料理は、季節や仕入れの状況によって提供できないこともあります。普段味わえない一期一会の味をお楽しみください。
「もったいない」から食べちゃおう! がコンセプトの海鮮居酒屋
築地市場には、せっかく水揚げされても市場に出回りにくい魚がたくさんいます。サイズや見た目、一般的ではないため買い手がないなどの理由で商品にならなかったり、セリで売れ残ったり。
そんな「もったいない」現状をなんとかしようと、飲食店運営会社と築地仲卸、飲食店プロデュース会社が共同で立ち上げた「もったいないアクション」から誕生したのが「築地もったいないプロジェクト魚治」。廃棄されてしまう運命だった魚を美味しく調理して味わえます。
今回は特に変わった魚を食べてみたい! ということでお店に伺うと、オオカミウオとヌタウナギが入荷しているとのこと。早速、料理していただきました。
▲なんとも不気味なオーラを感じる怪魚・オオカミウオ
北の海に生息するオオカミウオは、硬い貝殻さえも砕く鋭い歯が特徴的。グロテスクで強そうな顔となんでも食べてしまう雑食癖から、その名がついたのだとか。今回お店に入荷していたのは体長1メートル、重さ約4キロですが、もっと大きなものもいるそうで、まさに海の怪物!
▲オオカミウオのフライ自家製タルタルソース付き 550円
強烈な存在感を放つコワモテのオオカミウオはフライで食します。意外にも身は淡白で、ふわふわと柔らかくてちょっと拍子抜けしてしまうほど。あっさりとした白身のフライに、べったらや奈良漬を加えた自家製タルタルソースがよく合います。こんなギャップも怪魚料理の楽しみの一つなのかもしれませんね。
▲見た目はかなりグロテスクなヌタウナギ
そして、もう一品はヌタウナギ。時おりバラエティなどに登場して、水槽中にぬるぬるの粘液を出しまくることで有名なアレです。深海に棲むため目は退化。刺激を与えると体の表面から出るスライムのような粘液は、敵の攻撃から身を守るためのものだそうです。
今回入荷していたのは体長50センチほどの標準的な大きさ。神奈川県の三浦半島周辺でもよく水揚げされますが、一般的に食用としてはほとんど流通しないそうです。
▲白い粘膜でぬるぬるしている珍魚
日本ではあまり食べる習慣がありませんが、韓国ではメジャーな食材とのことで、今回は韓国風ピリ辛炒めにしていただきました。
その名前から、ウナギをイメージして口に運ぶとびっくり。シャリッ、コリッとしっかりした歯ごたえ。よく噛んでいると渋みのような不思議な風味もあり、ピリ辛の濃い味付けがよく合います。
▲ヌタウナギの韓国炒め580円
魚治では毎日築地からさまざまな「もったいない」魚が入荷。季節や漁のタイミングなどで、訪れるたびに違った怪魚・珍魚に出会えそうですね。
築地もったいないプロジェクト 魚治
住所:千代田区丸の内3-3-1 新東京ビルB1
営業時間:
【月~金】
ランチ 11:00〜14:30
ディナー 17:30〜23:30
【土】
ディナー 16:00~22:00
定休日:日曜・祝日
最寄り駅:有楽町
ワラスボにムツゴロウ! 九州郷土料理店で味わう伝統の珍魚料理
昭和60年創業の老舗「赤坂有薫」(あかさかゆうくん)は。九州で仕入れた食材でつくる郷土料理店。
特に魚介は玄界灘・有明海から直送。ヒラメやヒラマサ、きびなごなど、一般に広く食されている魚介とともに、「ワラスボ」、「くつぞこ」に「わけのしんのす」など、耳慣れないメニューが並びます。
▲まさにその姿は怪魚!
ワラスボは日本では有明海にしか生息していないハゼ科の魚。鋭い牙とほとんど退化した小さな眼、細長い体がかなり不気味で、エイリアンそっくり。麦藁(むぎわら)に似ていることから、「藁巣坊」と呼ばれるようになったそうです。
地元では干物で食べることが多いそうですが、カラカラに干したワラスボは恨めしそうに口を開け、不気味さもまた倍増……。旨みが凝縮され、煮干のように香ばしくて酒が進む、まさに珍味! です。
また、香ばしく焼いたワラスボに熱燗を注ぐ「ワラスボ酒」は、フグのひれ酒に勝るとも劣らない通の酒。ワラスボファンおすすめの一杯です・
▲海のエイリアンを活き造りで。征服感も味わえる!?
同店では入荷があれば活き造りでも提供。ほとんどが地元で干物にされてしまうため、生で食べられるのは貴重な機会です。生命力の強いワラスボは、なんと刺身になっても1時間くらいは生きているそう。
薄造りになった身の中央で、時折首をもたげたり、大きな口を開けたり…。噛みつかれそうな頭に箸が止まりそうになりますが、泥臭さはなく、コリコリとした食感です。刺身を食べ終わると、頭と骨の部分はカラリと唐揚げに。
▲時に体をくねらせジャンプする! (写真:PIXTA)
続いて、ワラスボとは対照的にユーモラスなルックスが印象的なムツゴロウも、有明海に生息するハゼ科の魚。こちらも地元ではなじみ深い食材で、主に蒲焼、タレ焼きで食べるそうです。この店では蒲焼のほかに刺身、唐揚げもありますが、どれも脂分が少なく、さっぱりとした味わいです。
▲蒲焼き一尾950円は地元ではポピュラーな食べ方
▲まるで有明海からひょっこり顔を出したようなリアルな姿の唐揚げ一尾950円
ワラスボやムツゴロウだけでなく、他にも、筑後川の一部と有明海でしか漁獲されない「幻の魚」エツ、若者のお尻の穴を意味する「わけのしんのす」というイソギンチャク、地元ではクツゾコと呼ばれるシタビラメなど、珍しい郷土料理も楽しめます。
赤坂有薫(あかさかゆうくん)
住所:千代田区永田町2-14-3
東急プラザ赤坂 3F
営業時間:
【月~金】
ランチ 11:30〜14:00
ディナー 17:00〜22:00
【土・日・祝】
16:00~21:30
定休日:なし
最寄り駅:赤坂見附
まさにサーカスのような妖しいジビエ専門店で味わう怪魚・珍魚たち
オーナーの宮下さんが鹿肉を始めて食べた時の感動がきっかけで、立ち上げたジビエ居酒屋「米とサーカス」。フランス料理のイメージが強いジビエですが、日本の郷土料理として食べられていたものをもっと身近に味わってもらいたいという思いから、居酒屋価格で提供。
▲あの愛くるしいメダカも…。 (写真:PIXTA)
現在は常に10種を超える獣肉に、珍しい魚、昆虫に至るまで「旨し 妖し 初体験 ゲンキニナレル獣肉酒家」のキャッチコピーどおり、確実に"初めての食"に出会える店。メインは獣肉ですが、怪魚・珍魚も味わえます。
こちらの定番は「メダカの佃煮」。金魚と並び、誰もが一度は学校や家庭で飼っていたであろうポピュラーな魚ですが、あまり食べるイメージはありません。でも、新潟では昔から食べられていた郷土料理なのだとか。甘さの中にちょっとほろ苦さがあって、お酒やビールのつまみとして最適。ほろほろと口の中で崩れる珍味です。
▲メダカの佃煮600円
▲ふわふわと柔らかい身が特徴的なモウカザメの唐揚げ720円
また、体長3メートルにもなるという、大型で獰猛なモウカザメ(毛鹿鮫)は、牛や豚、鶏に比べて高タンパク・低カロリー・低脂肪であり、DHA含有率が高いヘルシーな食材。
同店では気仙沼産のモウカザメを唐揚げで提供。一般的に鮫の身はアンモニア臭がするそうなのですが、揚げると、その身はふわふわと柔らかくてあっさりとした味わい。獰猛なイメージとはギャップあり! です。
▲海底に棲む巨大なダンゴムシ。 (写真:PIXTA)
▲オオグソクムシの姿揚げ ¥1980
また、魚ではありませんが、最近何かと話題の「オオグソクムシ」が食べられるのもこの店ならでは!日本最大級のダンゴムシと言われると二の足を踏んでしまいそうですが、見た目に反してエビやカニの旨味を凝縮したような濃厚な味わいの“深海の珍味”。同店では素揚げしているので殻ごとまるっと、パリパリっといけちゃいます。
また、系列店「パンとサーカス」(新宿三丁目)では、スモークシャークマリネ(静岡焼津の深海サメ)900円も提供中! こちらもぜひチェックしてみてください。
米とサーカス
住所:新宿区高田馬場2-19-8
営業時間:
17:00〜翌5:00
定休日:なし
最寄り駅:高田馬場
<まとめ>
ゲテモノ食いのようなイメージもある怪魚・珍魚グルメ。でもその実態は、郷土食を通して日本古来の文化に親しむことであったり、「世界一食料廃棄大国」といわれる日本の食環境の対策から生まれたものだったり…。さまざまな意味を持つものでした。
近年、怪魚試食イベントが大盛況になるなど、盛り上がりを見せています。怪魚、珍魚とはいうものの、世界中に泳ぐ魚の数は25000種以上。日本近海でも4000種いるといわれています。その中で一般的に食卓にあがる魚の数はわずか数十種類。まだまだ知らないだけで食べたらうまい魚はたくさんいるはず!
そんな「食的好奇心」を満たすべく、食べにいってみませんか? レッツエンジョイ・珍怪魚!
ライター:菅原ミホ
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