
今どきの若者としての渋谷デート
♥だいぶ涼しくなったので、長く散歩がしたい。読書の秋より食欲の秋より散策の秋です。そんな言葉聞いたことがないと言われようが散策の秋です。
しかし今の私は、人混みにうんざりし、長く歩いてはすぐ疲れてしまう。こんなたるんだ気持ちを忘れるため、何をしても疲れない若さに戻って人混みを歩き回るデートがしたいね! 18歳の、上京してきたばかりの美容専門学校の生徒として、渋谷から原宿まで歩きたいね!
♥オシャレ大好き(という設定。ついでに東北出身の設定)の私は、かわいい服を着るためには高速バスに3時間半揺られて服を買いに仙台まで出なきゃいけないという田舎の生活には飽き飽きしてた。高校を出たら東京の専門に入ってバイトもして、毎週のように渋谷や原宿に行くって決めてたんだ。
上京して進学した私は、狭い中野のワンルームを根城にして好き放題に飾り付け、6月にはもう専門の1コ上のヒロキとつきあってた。髪の毛はヒロキの人のツテで、カットモデル的な感じで安く染めてもらったりしてる。ラッキー。
私たちは学校で毎日のように会ってたけど、休みの日もほぼ毎日どっかで会ってた。原宿にはいつ行っても飽きないし竹下通りは好きだけど、休みだと女子高生(JK)とか多いしちょっとウザいから私たちはちょっとまったりしたいときは渋谷で待ち合わせて、明治通り沿いに原宿の方にぶらぶら歩いていくのがスキ。こっちの方が雰囲気は大人だと思う。
♥今は手が出ないブランドでもヒロキと一緒に見てるだけで楽しいし、ヒロキは意外と勉強家だからちゃんとお店で服とか見たら作り方とか考えたりしてるらしい。ぶっちゃけオタク。男の子でファッション系のオタクとか地元で見たことなかったからびっくりしたし、やっぱそこがスキ。
ちょっとお茶飲みたくなったらフレッシュネスバーガーに行く。地元にはなかったから今でもフレッシュネス行くとちょっとテンション上がる。やっぱ私田舎モンだと思う。
あ……いま心を完全に専門学校生に同化させて書いてたつもりだけど、もう私はファーストフード店で心躍ったりすることはないなって気づいて我に返った……。でも渋谷はいつでも私たちのテンションを上げてくれる、はず!



能町 みね子さん
文筆業兼イラストレーター。「オカマだけどOLやってます。」でデビューし、近刊に「『能町みね子のときめきデートスポット』、略して 能スポ」(講談社文庫)「ときめかない日記」(幻冬舎文庫)など。「久保みねヒャダ こじらせナイト」にも出演中。 https://twitter.com/nmcmnc
※この記事は、レッツエンジョイ東京のフリーペーパー「東京トレンドランキング」2012年11月号(10/25発行)に掲載されたものです。
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