マンホール巡り歴15年の鉄蓋観賞愛好家がナビゲート!

暇さえあればマンホール蓋を巡るようになって15年余り、少なくとも10万基のマンホールを巡った鉄蓋観賞愛好家の白浜公平です。華やかなデザイン蓋も、歴史を語る骨董蓋も、これといった特徴の無いように見える地味蓋も、みんな大好きです。


今回は「マンホール蓋で江戸の雰囲気を味わうならココ!」という両国のスポットをご紹介します。

両国といえば国技館!せきトリくんがお出迎え

▲両国国技館前に設置されているカラフルな蓋

▲両国国技館前に設置されているカラフルな蓋

下町のイメージがある両国ですが、江戸時代に下総国と武蔵国との国境に架けられた「両国橋」が地名の由来になっているそうです。


橋が架けられたことによって、当時の新興住宅地として江戸の拡大とともに発展してきた両国には、現在も江戸の雰囲気が漂っています。今回は足元にも江戸を感じられる両国の蓋散歩をご案内させていただきます。両国駅を出発し現在の大相撲に深い関わりを持つ回向院を経由、そして葛飾北斎生誕の地へ向かうルートをモデルコースとし、その先々で出会う蓋たちを紹介していきます。

▲日本相撲協会の公式キャラクター「ハッキヨイ!せきトリくん」©(公財)日本相撲協会

▲日本相撲協会の公式キャラクター「ハッキヨイ!せきトリくん」©(公財)日本相撲協会

両国駅を出ると目の前に相撲の聖地・両国国技館がありますが、その前には日本相撲協会の公式キャラクター「ハッキヨイ!せきトリくん」をデザインしたカラフルな蓋が設置されています。


二本足で立つ鳥をモチーフとしたキャラクターですが、これは手が付くと負けになる力士にとって縁起が良いとされているからなのだそうです。相撲は古事記や日本書記にも記載があるそうでとても長い歴史を持ちますが、現在の大相撲のように庶民に広く親しまれる催しとなったのは江戸時代になってからで、その中心地がここ両国です。

交通の要衝として発展してきた両国を示す蓋

  • ▲国鉄を示す「工」の字のマークが入った蓋

    ▲国鉄を示す「工」の字のマークが入った蓋

  • ▲昭和4(1929)年より使用されている、レトロな雰囲気の両国駅西口駅舎を背景に

    ▲昭和4(1929)年より使用されている、レトロな雰囲気の両国駅西口駅舎を背景に

両国駅の開業は明治37(1904)年、現在は比較的落ち着いた雰囲気の駅ですが、かつては房総・東北方面の東京側のターミナル駅として今以上に賑わっていたそうです。


地味ですが、足元には「工」の字のマークが入った蓋が見られます。この「工」の字のマークは、明治時代の省庁「工部省」に由来し、JRの前身である鉄道省や国鉄(日本国有鉄道)のマークとして使われてきたものです。江戸時代から現代まで、交通の要衝として発展してきた両国をよく示している蓋ですね。


レトロな雰囲気の両国駅西口駅舎は昭和4年より使われていますが、この蓋は形状や地紋から考えると総武快速線の運転が開始された昭和47(1972)年ごろの設置ではないかと思われます。

冨嶽三十六景「凱風快晴」

▲冨嶽三十六景「凱風快晴」をデザインした蓋

▲冨嶽三十六景「凱風快晴」をデザインした蓋

江戸時代後期の浮世絵師、葛飾北斎は、その生涯のほとんどを現在の墨田区にあたる地域で過ごしたそう。その代表作である冨嶽三十六景「凱風快晴」がマンホール蓋のデザインに採用されています。「赤富士」とも呼ばれる有名な作品ですが、このように丸く切り取ると、また違った新鮮な印象を受けますね。

▲力士像とマンホール蓋

▲力士像とマンホール蓋

この蓋は両国二丁目交差点近くの力士像の前に設置されています。同じフレームに納めると両国らしい写真になりますので、ぜひ試してみてください。

大相撲に所縁の深い回向院には珍しい蓋も

  • ▲「善光寺出開帳 両国回向院」と書かれた蓋

    ▲「善光寺出開帳 両国回向院」と書かれた蓋

  • ▲力塚の脇に設置されています

    ▲力塚の脇に設置されています

回向院(えこういん)は、現在の大相撲の起源とされる勧進相撲の定場所とされた経緯があり、明治42(1909)年には初代の両国国技館が境内に建てられました。ちなみに現在の両国国技館は昭和59(1984)年竣工の二代目です。現在でも大相撲と所縁の深い回向院ですが、大相撲協会が建立した力塚の脇にとても珍しい蓋があります。


「東日本大震災復幸支縁 善光寺出開帳 両国回向院」と書かれ、写真もプリントされた蓋です。回向院では、東日本大震災で亡くなられた方々の供養と被災地の復興支援とを目的とした善光寺出開帳が平成25(2013)年に開催されましたが、この蓋は出開帳の際に建立された回向柱の跡を保存するためのものとのことです。路上にある蓋には、下水道や上水道、電力や電話など様々な役割がありますが、この蓋の役割はとても珍しく、他では見たことがありません。復興支援ではなく「復幸支縁」となっているところも洒落ています。

冨嶽三十六景「神奈川沖浪裏」

  • ▲冨嶽三十六景「神奈川沖浪裏」をデザインした蓋
親子蓋になっています

    ▲冨嶽三十六景「神奈川沖浪裏」をデザインした蓋
    親子蓋になっています

  • ▲奥に見えるのは「すみだ北斎美術館」

    ▲奥に見えるのは「すみだ北斎美術館」

葛飾北斎生誕の地とされる緑町公園の脇の歩道には、冨嶽三十六景「神奈川沖浪裏」をデザインした蓋が設置されています。こちらも有名な作品ですね。


大きな蓋の中にもう一つ小さな蓋がある「親子蓋」になっています。人がマンホールの中に入る際には小さい方の蓋(子蓋)を開け、大きな機械を入れる際には大きな蓋(親蓋)を開けて使います。子蓋が上の方に偏っていますが、これはマンホール内の梯子がこの位置に設置されているためです。


蓋のある緑町公園に隣接して、すみだ北斎美術館があります。平成28(2016)年開館の新しい美術館で、葛飾北斎の作品や関連する資料が収蔵されています。そちらにもぜひ足を延ばしてみてください。

すみだ北斎美術館
  • 所在地

    東京都墨田区亀沢 2-7-2

  • 最寄駅

    両国

  • 電話番号

    03-6658-8936

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※本記事内の情報は2023年01月24日時点のものです。掲載情報は現在と異なる場合がありますので、事前にご確認ください。
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