『007』のロケ地になった中野新橋駅！映画ソムリエ・東紗友美のイチ推し。

映画ソムリエという肩書で映画を独自の切り口で紹介している、東紗友美です。今回は「日本で1番スパイ気分に浸れる場所ならココ！」という映画『007は二度死ぬ』のロケ地をご紹介します。

皆様、『007』シリーズはお好きですか？第1作が1962年にイギリスで公開され、映画史において最長シリーズの一つとなった007は現在までで25作品が公開されています。

1953年に作家イアン・フレミングによって誕生したスパイ、ジェームズ・ボンド。彼こそ、英国秘密情報部（通称MI6）のエージェントであり、コードナンバー007の異名を持つ世界一のスパイですよね。

実は半世紀ほど前、ここ日本が舞台になった007が公開されました。007シリーズで唯一全面オール日本ロケを行った第5作『007は二度死ぬ』（1967）です。

米ソの宇宙ロケットが次々と行方不明になるなか、英国秘密情報部は飛行物体が日本周辺から飛び立っているとの情報を掴み、真相を突き止めるためジェームズ・ボンドを日本に派遣するというストーリー。舞台となった日本では、1967年度の外国映画興行収入において上位を記録した多くの人に愛された作品です。

1964年の東京オリンピック開催直後、東京を中心に撮影された作品で、嬉しいことに日本が舞台で様々な日本の景色が登場するわけですよ。ボンドが日本にいたなんて！

東京エリアでは赤坂にあるホテル・ニューオータニや東京タワー、銀座4丁目交差点、駒沢通りなど、多くの景色が登場します。全国的には鹿児島や兵庫やら日本の各所が使われたりもしていますよ。

そして、日本の秘密諜報機関の地下オフィスがここ東京にあることを知っていますか？これは・・・ちょっとした事件ですよね。ということで今回は、そんな“スパイ組織があった場所”をご紹介します。

日本の秘密諜報機関の地下オフィスの場所は、東京メトロ・中野新橋駅。

こちらで撮影されたのは、日本に潜入したジェームズ・ボンド（ショーン・コネリー）が日本の秘密諜報機関のトップ、タイガー田中（丹波哲郎）のもとに、謎の女によって導かれるシーンです。中野新橋駅の駅付近で車を降りたボンドは、まず中野新橋駅の階段を降ります。

ちなみに諜報機関の秘書・謎の女アキを演じた日本人のボンドガールは女優の若林映子さんでした。

そして、その先の地下ホームへと向かっていきます。

この駅構内のどこかに落とし穴があり、その先に秘密のオフィスが存在していて、そこでタイガー田中がボンドを待ち構えてているという設定なのです！

このシーンがまさにスパイ映画的で、ミステリアスかつドラマティックなのですよね。「こんなところに秘密オフィスがあるんだ！」という意外性がたまりません。2015年に改装されたホームにはホームドアがついていたりと、風景はもちろん変わっていますが、駅全体の構造は撮影当時と変わらぬまま。作品の雰囲気を十分に味わうことができました。

ちなみにタイガー田中の移動手段は専用の地下鉄車両のみ。プライベート車両というクールな設定もまた素敵です。ここから出ている電車だと思うと、当時の車両とは異なるもののスパイ電車（！？）とも言える丸ノ内線に乗るのも、感動ひとしおでした。

さて、この時ボンドを演じたのは甘いマスクで女性にモテモテだった初代ボンドのショーン・コネリー。ジェームズ・ボンドと言えば、過去に6人の俳優が演じてきましたが、初代ショーン・コネリーと最新作のダニエル・クレイグという印象が強いという声もちらほら耳にします。

約1年前の2021年秋、最終章が放映され、有終の美を遂げた『007』シリーズ。その際のダニエル・クレイグ版ボンドしか観たことがない・・・という人が私の周りにも多いのですが、それはもったいない！野生的でタフなショーン・コネリー版ボンドにも、ぜひこの機会に出会ってほしいです。（2022年10月現在も動画配信サービスなどで作品が観られます）

約2年前の2020年10月31日に逝去したショーン・コネリー、享年90歳。天国で丹波哲郎と再会はできたのでしょうか。秘密組織に潜入した気分を味わいながら、最後は少しだけ、過ぎ去りし日々を思い、ホロリとしながら駅をあとにしたのでした。