一人クリスマスは本当に寂しいのか、検証してみた_72855

クリスマス前に寂しがる、というのは古典的な誘い文句の一つである。「クリスマスに一人なんだよね、寂しい」の一言で寂しい者同士が身を寄せ合い、鳥は歌い、花は咲き誇り、世界が平和になり、そしてクリスマスが終わった頃に二人は別れる。冬の風物詩ともいえよう。毎年12月になると、私のもとにも「クリスマスに一人でいるのが寂しいです」といった悩みが寄せられる。これは何もクリスマスの予定が引く手あまただと言いたいわけではなく、あらゆる“一人遊び”をやってみては記事を書いて暮らす私に、彼らは本気で悩みを相談してくるのだ。クリスマスに一人で楽しく過ごす方法を教えてください、と。



誰かから教わったわけでも、学校で習ったわけでもないのに、どういうわけだか共通認識となっているものが世の中にはいくつかあり、「クリスマスに一人だと寂しい」もその一つではないかと思う。眼鏡をかけていれば真面目、黒髪ならば清楚、などと同じくらいカジュアルに、「クリスマスに一人だと寂しい」は暗黙の了解となっている。昨今、眼鏡をかけていたのにこんなに浮気性だったなんて、と傷つく淑女の話には事欠かないし、黒髪なのに経験豊富だったなんて聞いてない、と憤る紳士の屍もそこらに転がっている。きちんと検証してもいないことを鵜呑みにするその先にあるのは破滅。クリスマスに一人で過ごすことは、本当に寂しいことなのか。寂しいとしたら、それはなぜなのか。寂しがるにしても、そのメカニズムを知ってから寂しがりたい。



「クリスマス×一人=寂しい」、方程式風に表すならこうなるだろうか。別に方程式風に表さなくてもいいのだが、そのほうがカッコいいので表してみた。この方程式の真偽を検証するためにも、まずは一人でクリスマスパーティーをしたいと思う。原稿の締切等もろもろの事情で、クリスマスないしクリスマスイブ当日まではまだ少し日があることはお許しいただきたい。



クリスマスと言えばチキンと相場は決まっている。そこで、チキンの丸焼きを作れるセットを購入し、パーティーを執り行うことにした。今回行ったのは四谷にあるキッチン付きレンタルスペース「One kitchen(ワンキッチン)」。調理道具は一通り揃っており、食材や調味料を持ち込んで好きに料理ができる。

▲チキンの丸焼きを作るぞ

▲チキンの丸焼きを作るぞ

▲丸焼きセット

▲丸焼きセット

一見難しそうに見えるチキンの丸焼きだが、焼く前の下ごしらえで40分程度、焼くのに1時間、と思ったよりも短い時間で作れる。下ごしらえは、三脚やらセルフタイマーやらで写真を撮りながらもたもたとやったため、普通に作れば20~30分くらいで終わるかもしれない。

▲ボウルの中でチキンにオリーブオイルを塗る

▲ボウルの中でチキンにオリーブオイルを塗る

まずはチキンを水でよく洗う。仕上がりに苦みや臭みがつかないように、内側もしっかり洗い流す。洗い流したら、オリーブオイルを全体に塗り込む。

一人クリスマスは本当に寂しいのか、検証してみた_72859
▲チキンにスパイスをかけ、チキンと一緒に焼くパンにビールを浸す

▲チキンにスパイスをかけ、チキンと一緒に焼くパンにビールを浸す

オリーブオイルをまんべんなく塗ったら、セットに入っているスパイスをすり込む。チキンを焼く際には下にパンを敷くのだが、そのパンを袋(オーブンバッグ)に入れてビールに浸す。パンの上にチキンを乗せるようにして、袋にクリップで封をする。

一人クリスマスは本当に寂しいのか、検証してみた_72861
▲※このままオーブンに入れるため、袋やクリップは必ず調理用のものを使用してください

▲※このままオーブンに入れるため、袋やクリップは必ず調理用のものを使用してください

▲オーブンへ。ちなみに下ごしらえを始める前にオーブンを予熱で温め始めておくとスムーズ

▲オーブンへ。ちなみに下ごしらえを始める前にオーブンを予熱で温め始めておくとスムーズ

下ごしらえはこれで終了。あとは約1時間、焼き上がるのを待つのみ。

暇なので、うかれた格好をして待とうと思う。何しろ、今日はクリスマスパーティーである。ただチキンを焼きに来たわけではない。クリスマスパーティーをしに来たのだ。

▲クリスマスのモールを肩からかけてみた

▲クリスマスのモールを肩からかけてみた

▲サンタさんになってみた

▲サンタさんになってみた

▲一人だからトナカイ役も私がやる

▲一人だからトナカイ役も私がやる

▲チキン、まだかな……

▲チキン、まだかな……

ところで、一人クリスマスパーティーを語る上で、『巨人の星』は避けて通れないだろう。その昔、クリスマスパーティーをしようと思い立った『巨人の星』の星飛雄馬。部屋を飾り付け、巨大なケーキを特注し、招待状を出し、胸を高鳴らせて当日を迎えた。とうに過ぎた集合時間。次々と届く欠席の連絡。パーティーにはついに誰も来なかった。用意したケーキやツリーを泣きながら投げ飛ばす星飛雄馬。大きなテーブルに星飛雄馬だけが一人で座り、飾り付けられた広い部屋にカチコチと時計の音が鳴り響くさまは、全視聴者が涙した。こうして星飛雄馬は、一人クリスマスパーティーの歴史に大きな爪痕を残したのだ。



それと比べてどうだろう。最初から一人で行うと決めた一人クリスマスパーティーは、こんなにも楽しい。チキンが焼けた音が、パーティー開始の合図。最初から誰も招待しなければ、来ない招待客に泣くこともない。

一人クリスマスは本当に寂しいのか、検証してみた_72868
▲チキンが焼けた

▲チキンが焼けた

このことを紐解くに、「クリスマスに一人だと寂しい」のメカニズムは、「期待感」にあるのではないだろうか。星飛雄馬のように友人たちを招待したのに誰も来なかった、なんて事態になったら、さすがに私も寂しい。この「寂しさ」を分解してみると、誰かが来るのを“期待”していたのにその「期待」が満たされなかった、ということが起こっている。



一年のうちでクリスマスの時期にとりわけ寂しがる人が増えるのは、クリスマスには誰かと一緒に過ごすというすり込みからの期待があるから。テレビでは家族でチキンを食べるCMが、街中では「きっとキミは来ない」などと一人であることを嘆くような歌が流れている。それに引っ張られるかのように、人は期待する。誰かと過ごせることを期待する。「誰かと過ごす」というゴール(価値観)にたどり着くことを期待し、その期待が満たされないのが、寂しさの正体なのだ。

▲いただきます

▲いただきます

▲おいしいです

▲おいしいです

この「期待」をコントロールするには、最初から「一人でパーティーをする」など、「期待しないようなゴール」を自分で決めてしまうしかない。どこの馬の骨とも知れない誰かが決めた「クリスマスは誰かと過ごすのが幸せ」という価値観に従っていたら、きっとずっと寂しいままだ。私が幸せかどうかは、私が決める。

一人クリスマスパーティーを楽しむ3カ条

その1 チキンの丸焼きは意外と簡単に作れる

その2 サンタ帽などのクリスマスグッズがあると雰囲気が出る

その3 最初から一人でやると決めたクリスマスパーティーならちっとも寂しくない

「One kitchen(ワンキッチン)」

住所:東京都新宿区荒木町3-26サウスウィング荒木2F奥

電話:03-6326-5918 (電話受付/11時~21時)

本記事内の情報に関して

※本記事内の情報は2016年12月24日時点のものです。掲載情報は現在と異なる場合がありますので、事前にご確認ください。
※本記事中の金額表示は、税抜表記のないものはすべて税込です。