【パン連載 Vol.13】春の週末は、多摩のパン屋さんに出かけよう
「ぶーるぶーる(Boule Beurre Boulangerie)」でフレンチスタイルのかわいいパンを調達する
八王子の駅前はどこの町にも見かけるチェーン店が目立つけれど、すこし歩いて「ぶーるぶーる(Boule Beurre Boulangerie)」があるみずき通りの辺りまで来ると、老舗や個人店が存在感をもって営まれていて、ほっとする。
ぶーるぶーるは今年で10周年を迎えたフレンチスタイルのパン屋さん。
「Bouleはまるいパン、Beurreはバター。それはおいしいクロワッサンのイメージ」。店長の草野武さんは店名の由来をそんなふうに言う。
クロワッサンは三日月にたとえられるくらいだから、決してまるくはないが、食べてみればそれはとんがった味ではない。こんがりと焼けた表皮の下には美しく巻かれた生地の層があり、齧ったときにその間からほわっと立ちのぼる、まるい香気が内包されている。
店のイメージカラーはルージュ。フランスのチャーミングな映画『アメリ』のポスターがよく似合う。フランボワーズの入った「アメリのオザマンド」やクランベリーとクルミがぎっしり入った棒パン「フリュイ」など、ここへ来るとかわいいルージュのパンが買いたくなる。
ショウケースをみるとフランスの、アルザス地方のフラットなお総菜パン「タルトフランベ」、大きく焼いてケーキカットしたシナモンのブリオッシュ「カネル」、「クグロフ」のプチサイズがあって、ボルドー地方のお菓子「カヌレ」があって、南仏の「フガス」もロデヴ地方に伝わる、小麦のおいしさを実感できる「ロデヴ」もある。そこにはフランスを巡る旅がある。
旅には寄り道もある。それはルール違反でしょう!というような、でもしかし、そそられるバゲットがあったりする。それが「ざらめちゃん」。バゲットにバターとざらめという趣向なのだ。
それから「ベルリーナラントブロート」のような本格派のドイツパンがあり、メロンパンもカレーパンも並ぶ。旅は正規ルートより、寄り道があったほうが断然楽しいはずだ。
最近の人気は週替わりランチで、ロールキャベツやラザニアといったメインにパンの盛り合わせがつく。人気の定番は「クロックマダム」。注文が入ってからつくられる。目玉焼きがのっていないと思ったら、チーズに隠れてパンの表面でふるふるしている。ナイフを入れると黄身がトロリと流れだした。そんなランチには300円でグラスワインが合わせられる。日本産の生葡萄100%でつくられているフルーティなワインだ。
「小麦粉は国産へのこだわりはないですが、八王子産なら使ってみたいと思ったんです。畑をみながらパンがつくれるから」。草野さんは言う。
「八王子のパンオレ」は近くの澤井農園の小麦と超強力小麦ゆめちからをブレンドしてつくられている。収穫量はすくないが、ほとんど農薬を使わずに育てられているという小麦だ。草野さんら地元のパン屋さんは、麦踏みなどの手伝いをしながら収穫を楽しみにしている。ミルクや野菜も、近くの小規模生産者との繋がりがある。それら全体がぶーるぶーるのパンの味をつくりだす。
text&photo / Mihoko Shimizu
- ぶーるぶーる(Boule Beurre Boulangerie)
- 住所: 東京都八王子市横山町16-5
最寄り駅:八王子
ほかにも行きたい多摩のパン屋さん
世田谷から豊かな自然の地へ移転してはや8年。大きなテーブルのあるカフェでは焼きたてのパンやランチが愉しめる。すぐ裏には川の流れ。ゆったりした空気の中、バゲットもデニッシュもいっそうおいしく感じられる。
- ラ・フーガス
- 住所:東京都あきる野市草花3492-183
最寄り駅:秋川
2015年末、国立駅近くにオープンしたばかり。ホテルやフレンチレストランで修業を積んだ高山顕さんは食パンやロールパン、バゲット、カンパーニュなど日々の食事とともに愉しめるシンプルなパンに力を注いでいる。
- アカリ・ベーカリー
- 住所:東京都国立市中1-7-64
最寄り駅:国立
南大沢の団地の中心にある人気店。国産小麦・自家製酵母で香ばしく味わい深く焼き上げた素朴な表情のパンや、自家製のペースト・旬の野菜などを豪快に使ったサンドイッチやタルティーヌに日々、行列が絶えない。
- チクテベーカリー
- 住所: 東京都八王子市南大沢3-9-5 101
最寄り駅:南大沢
- 【Vol.1】おいしいパンが、銀座のおみやげ。
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- 【Vol.4】新宿で一番、お洒落なパンを召し上がれ。
- 【Vol.5】世界中で愛される、無敵のタルティーヌ。
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※本記事は2016年04月14日時点の情報です。掲載情報は現在と異なる場合がありますので、事前にご確認ください。
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