パリから新しいスタイルで東京に上陸。ヴィエノワズリー専門店「リチュエル パー クリストフ・ヴァスール」。
ヴィエノワズリーを楽しむ習慣は、たとえば「お気に入りの道を通って帰る」とか「週末はこのカフェでお茶をのむ」とかいったことと同じで、日々のささやかな幸せを確認するための、ちょっとした儀式かもしれない。
ここはパリの有名店「デュ・パン・エ・デジデ」(Du Pain et Des Idées)のクリストフ・ヴァスールさんが自由が丘に出店したヴィエノワズリー専門店「リチュエル パー クリストフ・ヴァスール(RITUEL par Christophe Vasseur)」。
「リチュエル」は、「習慣」や「儀式」を意味するフランス語に由来する。
エスカルゴの曲線をイメージしてつくられたという通路をたどると、厨房で職人たちが折込み生地をたたんだり、巻いたりしているのが見える。
壁にはメッセージが記されている。「わたしたちにとってかけがえのないこの大地は、親たちの世代から受け継いだものではなく、こどもたちの世代から借り受けているのです」。
その先には、くるくると渦巻く魅惑的なフォルムのエスカルゴやクロワッサンが並んでいる。
それはひとつひとつ、異なる表情をしている。大量生産品ではないから当然のことなのだ。「お好みのかたち、焼き色のものをお選びください」と言ってくれるので、真剣に選ぼう。
グリーンのピスタチオペーストとKAOKAオーガニックチョコレートチップを巻きこんだ「ショコラ・ピスターシュ」(690円)など、パリの味を再現したものも、原材料はバターをのぞいてほぼ日本の材料でつくられている。
北海道の有機小麦、山梨の黒富士農場の放牧卵、千葉の大地農場の有機ミルク。シロップ漬けや冷凍の果物は使わない。「おいしくて健康的であること、自然への敬意、環境への配慮」とクリストフさんはそれらの食材の選択の理由を挙げる。
ヴィエノワズリーの命ともいえるバターは味を重視してフランスからAOC認定の「パムプリー」が特別に取り寄せられ、石床式の窯もまたパリの店と同じものを用いた。
これらの原材料や設備がこの菓子パン価格に反映されることになったが、ヴィエノワズリーとはそもそも、週末や祭日のためのとっておきのお楽しみ。贅沢なパンに違いなかった。
クロワッサンもエスカルゴも裏面がキャラメリゼされてザクッとした質感だが、層の一枚一枚はもっちりとした弾力を保ちながら芳醇な香りとともにほどけていく。
エスカルゴは全5種類。有機アーモンドの自家製プラリネの「プラリン」(690円)、有機フリーズドライのクランベリー、ブルーベリー、ラズベリー、ストロベリーの「クリームチーズ・フリュイルージュ 」(790円)など、巻かれる食材は無限の可能性を持つ。
ひとくちサイズの「ニフレット」(5個530円)、棒状にねじった「ル・サクリスタン」(640円)はサクサクのカスタードパイのバリエーションで、こちらもリチュエルならではだ。
リチュエルのヴィエノワズリーはどちらかというと正統派で、斬新なものがあるわけではないけれども、2015年の東京を感じる。「あらためまして、初めまして」と姿勢を正して食べたくなる。ちょっとかしこまった儀式みたいにして。
text&photo / Mihoko Shimizu
- リチュエル パー クリストフ・ヴァスール
- 住所:東京都目黒区自由が丘2-9-17 1F
最寄り駅:自由が丘
他にも美味しいヴィエノワズリーが買えるパン屋さん
数々のコンクール受賞歴があり、ブーランジェであるとともにパティシエでもある須藤夫妻の作る美しいヴィエノワズリーの数々。クリームチーズコンクールグランプリ受賞の「キリワッサンアナナス」は見逃せない。
- ブーランジェリースドウ
- 住所:東京都世田谷区世田谷4-3-14
最寄り駅:松陰神社前
パリのスタンダードをテーマに、上質なフランス小麦でつくられた伝統的なヴィエノワズリーが揃う。エシレバターを配合した「クロワッサン」、「ショコラ・フランボワーズ」、「ショソン・オ・ポム」など大満足の食べ応え。
- VIRON 渋谷店
- 住所:東京都渋谷区宇田川町33-8
最寄り駅:神泉/渋谷
ジョエル・ロブション氏監修のパン専門店。季節の素材をふんだんに用いた美しい造形の創作ヴィエノワズリーに定評がある。タヒチ産バニラの香るカスタードをのせて焼いた「ロブションのクリームパン」は定番人気。
- ル パン ドゥ ジョエル・ロブション
- 住所:東京都 渋谷区 渋谷2-21-1 渋谷ヒカリエ ShinQs B2F
最寄り駅:渋谷
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