多摩川を中心に年100回ほど自然観察会を企画開催している野草愛好家がナビゲート!

野草愛好家。自然観察指導員。日本全国で身近な植物の面白さを広める活動をしている野草愛好家ののんさんが、今回は「世界を旅する植物(帰化植物)を無料でみられるテーマパークはココ!」という木場のスポットをご紹介します。

日本で唯一の帰化植物をテーマにした植物見本園

外国から人の手によって持ち込まれ、野生化した植物を帰化植物(きかしょくぶつ)と言います。

その中には、農業や園芸などの目的で意図的に持ち込まれたものと、「偶然種子が靴にくっついていた」など非意図的な植物の侵入も含まれます。

 

近年は”在来種の保護”や”生物多様性”という考え方が広まったため、帰化植物と言えば「悪者、厄介者、駆除対象、在来種を脅かす存在、生態系破壊」・・・そんな悪いイメージをもたれがち。

 

しかし帰化植物は市街地に多いため、東京に住む人にとっては一番身近な植物とも言えます。

身近な存在の帰化植物について、ぜひとも知っていただきたい!

 

 

そんな帰化植物を集めた「帰化植物見本園」が江東区の木場公園内にあるのです。帰化植物見本園には、はるばる世界の海を越え、日本に渡ってきた植物たちが常時200種以上、展示されています。

▲帰化植物見本園は、日本で唯一の帰化植物を集めた植物園

▲帰化植物見本園は、日本で唯一の帰化植物を集めた植物園

帰化植物園の成り立ちについて、木場公園友の会の塩崎さんからお話を伺うことができました。

木場公園のある江東区は、江戸時代以降に埋め立て地に作られました。

埋立地に現れた見慣れない植物を調べてみると、なんと外国の植物だった。


帰化植物も含めた「江東区の野草」(著:東京都江東区)という本を出版したところ大変好評で、実物を観たいと言う声があがり、江東植物愛好会によって、木場公園に帰化植物見本園が設立されたそうです。

▲右を見ても左を見ても帰化植物

▲右を見ても左を見ても帰化植物

帰化植物見本園は常時200~300種を科ごとに育成しているため、種ごとの違いが観察しやすい!


また、ボランティアさんによる毎月の生育調査で種ごとに調査されているので、時期を逃してしまって今現在は生えていない植物でも、ビジターセンターに展示や情報が残っているそう。帰化植物マニアにとっては、これは非常に有益な情報だと言えます。

【ポイント】 都心では身近な帰化植物たち

▲シロツメクサも帰化植物

▲シロツメクサも帰化植物

花の王冠を作ったり、見つけたら幸せになれるという四葉のクローバーを探したり、おままごとで使った「シロツメクサ」。

子どもの頃から慣れ親しんだ「シロツメクサ」は、実はヨーロッパ原産の帰化植物。

江戸時代にガラス製品の緩衝材として梱包されていたそうです。

 

まだ寒く植物たちも冬眠中のような寒さの時期でも、早春に映えるコバルトブルーの花を咲かせる「オオイヌノフグリ」

すっかり日本の早春の顔となった「オオイヌノフグリ」は、明治初期に入ってきて定着したヨーロッパ原産の帰化植物です。

 

都心でもどこでも生えている、私たちにとって身近な植物。

昔からある日本の風景の一部だと思っていた植物が、実は帰化植物だと知ると驚きます。

 

【ポイント】園芸目的で輸入され野生化した帰化植物

▲園芸用として輸入されたモモイロタンポポ

▲園芸用として輸入されたモモイロタンポポ


園芸種や野菜用として世界から輸入されてきた植物が畑から逃げ出して、帰化しているものも多いそうです。

輸入や輸出、海外旅行などが便利になった分、外来種の増加スピードが早待っている可能性もあります。


ペラペラヨメナはゲンペイコギクという名前で園芸店で売られています。

 キクニガナはチコリー、野菜として食べられています。

 ミツバオオハンゴンソウはルドベキア タカオ。美しい花を咲かせます。


このように帰化植物は、私たちの生活に癒しや恵みをもたらしてくれる存在でもあります。 

【ポイント】育てるのが困難?!な帰化植物たち

▲人の手助けなしには日本では生きられないハマデラソウ

▲人の手助けなしには日本では生きられないハマデラソウ

ビニールハウスの無い帰化植物見本園では、寒さに弱い植物を、冬季はボランティアさんがご自宅に持ち帰って暖かい場所で越冬させ、また春になったら帰化植物見本園に植えているそうです。雑草なんてほったらかしにしても生えてくるでしょうと思われがちですが、人為的に育てようとすると難しく、うまく育たないこともしばしば・・・

 

 

外国から入ってきても、日本の環境に適応できない植物もいます。

例えば「ハマデラソウ」。

1930年代に大阪府堺市の浜寺海岸で発見されたことから、「ハマデラソウ」と名づけられました。海岸が埋め立てられるなどで環境が変化し、浜寺海岸では野生のハマデラソウは姿を消しています。

 

貴重なハマデラソウの実物も、帰化植物見本園で見ることができます。

 

 

私は帰化植物見本園に数年通っていますが、毎年帰化植物が変化しています。

帰化植物というと繁殖力が強いというイメージがありますが、移植に弱かったり、寒さ暑さに弱かったりと、管理して栽培する難しさを感じています。植物たちの栄枯衰退を目の当たりにし、雑草と言えど、栽培は一筋縄ではいかない大変さを思い知らされました。


身近な雑草から、日本にまだ拡がっていない希少種まで、常時300種類以上植栽・育成している帰化植物見本園。世界を旅する植物たちの生態が分かります。

 

 

帰化植物の観察が出来る貴重な場として、全ての帰化植物を悪者だととらえるのではなく、帰化植物の歴史を知ったり、私たちの生活にもたらした恵みについて考えるキッカケになるのではないでしょうか。


もちろん、日本の生態系や、貴重な在来種を守ることは大切だということを前提として。

 

 帰化植物は、在来の植物が住めなくなってしまった荒れ果てた場所、人間が開発してしまった土地にも生えてきてくれます。アスファルトの隙間からも元気に生える帰化植物を、私は愛せずにはいられないのです。

 

木場公園
  • 所在地

    東京都江東区 木場4・5丁目・平野4丁目・三好4丁目・東陽6丁目

  • 最寄駅

    木場

  • 電話番号

    03-5245-1770

  • 備考

    ※「帰化植物見本園」は都市緑化植物園内にあります。

    施設名称 都市緑化植物園帰化植物見本園

    住所 東京都 江東区 木場4・5丁目・平野4丁目・三好4丁目

    開園 午前9時~午後4時30

    入園料 無料

    アクセス 東京メトロ東西線木場駅下車、徒歩5分

    公式HP https://www.tokyo-park.or.jp/park/format/index020.html


    協力:

    江東植物愛好会

    木場公園友の会

    木場公園サービスセンター

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