年間100以上のアートに触れる週末アート三昧のライター・moeneがナビゲート!

こんにちは。小室世代OLライターのmoeneです。平日は仕事をバリバリこなし、お休みの日は日本全国の美術館や建築巡りに出かけ、きれいなものに触れて心を満たしてます。私にとってアートはガソリン!


今回は、「ゆっくり自分と向き合うならココ!」という季節を変えて訪れたくなる施設をご紹介します。レッツエンジョイ、アート!

太陽光を生かした展示も…杉本博司が設計した完全予約制のアート施設/小田原文化財団 江之浦測候所

かつてミカン畑だった小田原市江之浦の地。こちらにあるのが、現代美術作家の杉本博司さんが設計した複合アート施設「小田原文化財団 江之浦測候所(オダワラブンカザイダン エノウラソッコウジョ )」です。


起伏に富んだ土地を存分に活用した壮大な施設には、ギャラリー棟、野外の舞台、茶室などが点在。人類とアートの起源に立ち返り、“国内外への文化芸術の発信地となる場”として構想されました。


定員制かつ見学時間に制限はあるものの、施設内は自由な順路で鑑賞でき、気の赴くままに散策しながらアートな時間を過ごすことができます。

▲明月門(春の様子)
©小田原文化財団

▲明月門(春の様子)
©小田原文化財団

まずは施設に到着して最初に出迎えてくれる「明月門(メイゲツモン)」。もともとは鎌倉にある臨済宗建長寺派の明月院の正門として室町時代に建てられたもの。さらに近年は南青山の根津美術館の正門として使用されていましたが、建て替えに伴い寄贈され、江之浦測候所正門として解体修理され再建されました。


趣のあるこの門の先にはどんな景色が待ち受けるのか・・・と、期待値を上げてくれます。

▲夏至光遥拝100メートルギャラリー(春の様子) 
©小田原文化財団

▲夏至光遥拝100メートルギャラリー(春の様子)
©小田原文化財団

海抜100m地点にある長さ100mの「夏至光遥拝100メートルギャラリー(ゲシコウヨウハイ 100メートルギャラリー) 」。写真家としての杉本さんの作品が展示されています。


「夏至光遥拝」とは、夏至の朝に海から昇る太陽の光がちょうどこのギャラリーを“通過する”設計になっているために付けられた名前。太陽の光が100mの空間を数分間に渡って駆け抜ける光景が、1年に1度現れます。なんと神秘的なのでしょう。


“天空の動きを観察することで自身の場所を確認する作業こそがアートの起源”という杉本博司さんの考えが表れている場所です。


ちなみにながーい建物の片側は、柱の支え無しに硝子板が37枚自立している珍しい構造。ギャラリー内の作品だけでなく建築にも注目して。

▲冬至光遥拝隧道
©小田原文化財団

▲冬至光遥拝隧道
©小田原文化財団

夏至だけでなく冬至の朝日を活かした「冬至光遥拝隧道(トウジコウヨウハイズイドウ)」も。


冬至の朝、相模湾から昇る太陽の光が70mのトンネルを抜け、対面して置かれた巨石を照らします。夏と冬の太陽の位置の違いを体感できるのと、トンネルから抜ける海がまるで額にいれたように切り取られて見えるのが魅力。施設内でもmoeneのお気に入りスポットになっています。


日の出とともに太陽光を拝むイベントに参加したい場合は、ホームページ上に詳細がアップされるので、チェックしてみてください。

▲化石窟
©小田原文化財団

▲化石窟
©小田原文化財団

江之浦測候所には石や硝子が多く使われているのも特徴。使用されている石材は古材を基本とし、古墳時代から近世までに収集された考古遺物も使われています。

▲茶室「雨聴天」
©小田原文化財団

▲茶室「雨聴天」
©小田原文化財団

石と硝子に注目して欲しい展示はこちら。千利休作と伝えられる「待庵(タイアン)」の精髄を取り入れ構想された茶室「雨聴天(ウチョウテン)」です。


入り口前に置かれた、沓脱石(クツヌギイシ=履物を脱ぐために置かれている石)にも光学硝子が使われているため、品よく輝いていてお見事!内部は2畳室床という極小の空間となっています。中には入れませんが、覗き込んで空間をチェックしてみてくださいね。

▲冬至光遥拝隧道と光学硝子舞台
©小田原文化財団

▲冬至光遥拝隧道と光学硝子舞台
©小田原文化財団

野外の舞台「光学硝子舞台」は江之浦測候所のメイン作品だと個人的に思っています。


舞台のうしろには水平線が広がり、まるで海に浮いているようです。京都清水寺の舞台と同じ懸造りで、釘を一切使用せず組まれた柱に太陽の光でキラキラと輝く硝子の板がのっています。これぞ日本の伝統技術。


一般の方は舞台に立つことはできませんが、ここでは音楽イベントなどさまざまなプログラムが開催されています。過去にここで能楽の演奏を聴いたことがありますが、日本に生まれた喜びを噛みしめるような贅沢な時間でした。


どこを切り取っても絵になる江之浦測候所。見学が終わるころには、点在している歴史ある杉本博司さんのコレクションに魅了されていることでしょう。

季節を変えて何度も訪れたい、ゆっくり自分と向き合える特別な場所

訪れる前は、その名前から何を観測する場所なんだろう?と未知数だった「江之浦測候所」。観測器なんかは設置されておらず、洗練された芸術庭園が待っています。


見学制限時間の3時間たっぷり館内の竹林エリアなどもあわせて散策し「こんなに自然を眺め感じたのはいつぶりだろう」と、小田原の大自然の中に存在している自分とゆっくり向き合いました。地球と自分の距離を感じることができる特別な場所でした。


ミカンが採れる気候なだけに、ここは東京より少し暖かくゆったりとした時間が流れています。季節を変えて、リフレッシュを兼ねて、何度も訪れたい場所です。

小田原文化財団 江之浦測候所
  • 所在地

    神奈川県小田原市 江之浦 362-1

  • 最寄駅

    根府川

  • 電話番号

    0465-42-9170

本記事内の情報に関して

※本記事内の情報は2022年11月13日時点のものです。掲載情報は現在と異なる場合がありますので、事前にご確認ください。
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