冬の訪れを感じる今日この頃、ネコ肌恋しい季節になってきましたが、皆さんいかがお過ごしでしょうか? さて、今回お邪魔したのは、阿佐ヶ谷駅から徒歩約15分の場所にある、“広島お好み焼き 猫の助”。
ご夫婦の愛情をいっぱい受けて育っている看板ネコが二匹。お客さんに遠慮なく甘える「営業部長」の“茶たろう”と、警戒心が強いが親分肌で「社長」と呼ばれる“イチロー”。二匹ともオスの保護ネコで、別々のタイミングで引き取られたネコだが、相性はばっちり。性格は違うが、お互いの存在を当たり前に感じているようだ。
基本的にマイペース、エサをもらう時以外、人に媚びない二匹の態度がネコらしくていい。人を同じネコとみなしているか、あるいは自分たちのことを人だと思っているか、垣根のないネコの横柄な態度に喜んでしまうのが我々ネコ偏愛者である。
「ネコを飼っている、誰かのお家のリビングに遊びにきたみたいに過ごして欲しい」という思いがお店のコンセプト。くつろぎ過ぎて、テレビ見ながらウトウト横になってしまいそうになるほどの安心感。実家の食卓のような雰囲気に加え、お店のご夫婦のやさしく気さくな人柄。
テレビ番組を見てツッコミを入れるお父さん、料理の仕度をしながらカウンター越しに答えるお母さん、微笑ましい会話がBGMとして聞こえる。はじめて来たにも関わらず、常連客のような気分になる。きっといつもといっしょな風景、この「変わらなさ」がいい。
テーブル席の周り、壁一面に本家イチローのポスターやカレンダーが貼られていた。そんな野球好きのお父さん曰く「茶たろうは、ランナーだな。積極的に1番か2番で打って走るヤツ。イチローは、塁に人が出てからようやく打席に立つ4番だな」。
印象的だったのは、イチローの性格を動物セラピストに見てもらったときの話。お母さん曰く、「イチローは、私が外に出たりしていなくなると、ヤーヤー鳴いて呼ぶのですが、甘えん坊とは言われたくないんです。私がいない間寂しがっているのかと思って、帰ったらよしよしって可愛がっていたら、逆に男のプライドが傷ついていたみたいで」。
ご夫婦は、道路での車や自転車事故を防ぐためにも、ネコたちを自由に外へ行かせないと決めている。でも外に出たがるイチローにとっては、その理由も知らずに出られなくなったため、「なんでお母さんだけ外に出られるんだ」「俺は寂しがりでも、甘えん坊でもないんだよ」という気持ちで鳴くのだ。
そんなネコなりの気持ちを理解して、ご夫婦はイチローに外に出られない理由を言葉できちんと説明している。そんな姿勢もあってか、二匹は人の言葉をしっかり理解しているように見える。「ご飯」という言葉に二匹とも反応したり、鰹節が乗った冷や奴が注文されたら、走ってカウンターに寄ってきたり。お店のメニューの食材を把握している、なんてデキるネコたち。
「外に出したとしてもネコは生きて行けるかもしれないけれど、この子が原因で人が交通事故を起こしてしまったら、大変だからね」とお父さん。
ネコと一緒に暮らすために、ネコにもネコが生きる周りの環境にも配慮しながら、折り合いをつけてネコを幸せに導いている。
「立派なご両親だなあ、ありがたいなあ」としみじみ、勝手にネコ側の気持ちを代表して妄想していると、なんだか自分が友だち(茶たろうとイチロー)の家に来ているような気がしてきた。遊びに夢中になってすっかり夕飯時、台所から「お好み焼き作ったから食べていきなさい」とお母さんの明るい声が響く、とても懐かしい気分になった。
広島出身のお父さんが作ってくれた渾身のお好み焼きと、秩父の出身のお母さんのソウルフードだという、“みそポテト”をいただいた。
友達の家のご飯って、なんか自分ちよりおいしくて、羨ましくなるんだよな、と懐かしい気持ちになった。ついつい長居してしまったところに、常連のお客さんたちがやってくる。そのお客さんの1人は、先だって19年と長生きした愛ネコを亡くしたそうで、「いまは喪中。ネコがいない冬は寒いね」と言っていた。そんな冬の始まりを感じるソロ活であった。
石井芳征(ネコ偏愛者/クリエイティブディレクター/Cat’s Whiskers編集長)
広島お好み焼き 猫の助
電話:03-5930-1736
住所:東京都杉並区本天沼1-3-4 シリカヒルズ阿佐ヶ谷 1F
最寄り駅:阿佐ヶ谷駅
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