映画館ハシゴで2本立て、銀座の裏路地デート
♥小さな京橋駅を降りて徒歩1分。東京国立近代美術館フィルムセンターという建物があります。博物館のように認知されていますが、実際のところ、昭和の日本の貴重な映画を毎日上映している、ものすごくマニアックな映画館と言っても過言ではありません。
そこに一緒に行くのは当然映画マニアである。日本映画を愛する、3つ年上の男。デートに趣味がからむとき、「私はそんなに詳しくなく、彼の方が圧倒的によく知っていて、そのマニアぶりが少し面倒くさいけれど、夢中で語るさまがかわいくもある」という状態が私にとっては鉄板です。これは映画でも美術でも散歩でも乗り物でもそうです!
あ、でも料理だけは、あんまりうるさい人は面倒くささの方が先に立つので、ナシです!
♥話がそれました。フィルムセンターではその時々で、ある監督や俳優などに焦点をしぼり、特集上映をしています。某女優特集に彼は興味を持ち、ここのところ毎日のように通っている。彼は在宅で仕事をしているので、平日昼が自由になるのだ。
ある日曜、私も時間が取れるので、一緒に映画を見に行くことになりました。朝、一緒に家を出ます。あ、私の中では彼と同棲している設定になっているんです。
彼の解説を聞きながらフィルムセンターまで行き、映画を見て、喫茶店でまた彼の解釈を聞く。ここまではいつもおきまりのコース。
♥そしてここからは私のフィールド。今日はのんびり歩いて、東銀座のシネパトスに行くのです。
晴海通りの三原橋の真下、ちょっと独特なロケーションにあるこの映画館が私は好きです。昭和から全く変わっていない薄暗い地下街に、小料理屋や床屋と並んで映画館の入り口がある。ここはレトロなんて陳腐な言葉で表したくない。ずっと現役ですもの。
彼はもっぱら邦画専門だから、私がシネパトスに来るときは洋画で味わい深い作品を選ぶ。半分埋まるかどうかの客席で、今日2本目の鑑賞。
映画が終わって地下街を出ると、外はもう暗くなっている。実は私たち、銀座の街にはそんなに慣れていないし、知っている店もそんなにない。なんとなく入った、リーズナブルな洋食のお店で晩ご飯を食べることに。
さっきの映画の話や、くだらない雑談をして休日は終わっていく。この平穏さがなにより大事……あんまり落ち着いてしまうと妄想から抜けられなくなるので、残念ながらここで唐突にカットだ。このデートは、本気で実現させたいよ……!
能町 みね子さん
文筆業兼イラストレーター。「オカマだけどOLやってます。」でデビューし、近刊に「『能町みね子のときめきデートスポット』、略して 能スポ」(講談社文庫)「ときめかない日記」(幻冬舎文庫)など。「久保みねヒャダ こじらせナイト」にも出演中。 https://twitter.com/nmcmnc
※この記事は、レッツエンジョイ東京のフリーペーパー「東京トレンドランキング」2012年1月号(12/20発行)に掲載されたものです。
※銀座シネパトスは2013年3月に閉館しています。
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※本記事内の情報は2015年12月07日時点のものです。掲載情報は現在と異なる場合がありますので、事前にご確認ください。
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