名店仕込みのカリカリふんわりな一枚。
まん丸で、こんがり黄金色。中央がふっくらと盛り上がる、絵に描いたようなホットケーキ。
周りのかりかりの香ばしさに、中のふっくら押し返すような弾力は驚くほど。愛すべき、美しくて素朴な1枚に久々に再会した。
前にこのホットケーキを食べたのは、梅ケ丘にあった「ホットケーキパーラー リトルツリー」でのこと。この店を営んでいた冬木透さん・麻依子さんご夫婦が、10/10にオープンさせた新天地がこの「つるばみ舎」。
植樹が趣味のお二人。新たなお店に名づけた「つるばみ」は、万葉集にも歌われているどんぐりの古名なのだそう。「どんぐりのように日常にあって、ほっこり心和ませるような存在になりたくて」と麻依子さん。
目指すは、毎日食べても飽きないホットケーキ。1枚から好きな枚数を注文できるし(1枚310円、2枚570円、3枚830円。4枚以上は260円/1枚)、テイクアウトもできるほか、トッピングも自家製りんごジャム(110円)からクリーミーマッシュポテト(160円)までさまざまに揃うのも、きっとそんな思いから。
透さんのホットケーキのルーツは、以前働いていたフルーツパーラー『万惣』にある。池波正太郎もそのホットケーキに惚れこんだ、今はなき名店の味をベースにしたオリジナル。
生地には茨城の奥久慈卵をふんだんに。その日の気温や湿度でタネの温度も銅板の火加減も調整し、6〜7分じっくり丁寧に焼き上げていく。配合、混ぜ方、焼く温度、焼き方……工程ひとつひとつの細やかな気遣いがあって初めて、表面さっくり中ふわふわエアリーの、幸せな食感が生み出されるのだ。ほっと郷愁誘う昔ながらの味わいでありながら、これはちょっとマネできない。
添えられるのは、ほどよい塩気のよつ葉バターに、黒くてツヤツヤの自家製メイプルソース。こんがり焼きあげた1枚にとろーりかけると、生地のコクをどこまでも深めてくれる。
香ばしい香りが立ち込める店内は、『リトルツリー』の頃より少しだけ広め。テーブルもカウンターも見事な一枚板で、カウンターは昔から日本に自生しているケンポナシの木、テーブルは桂の木だとか。BGMには奄美大島の虫の声や鳥のさえずりが聞こえてきて、経堂にいながら森のホットケーキ屋さんに迷い込んだ気分!
ホットケーキだけでなく、こんなかわいらしいパンケーキも。「フルーツミニパンケーキ」(620円)は、いわゆる、シルバーダラーパンケーキと呼ばれる、(シルバーダラー=1ドル硬貨みたいな)小さなパンケーキをたくさん並べたもの。シロップなどかけないで、バナナ、キウイ、ピンクグレープフルーツ、それに季節の果物を混ぜた「フルーツクリーム」をつけながらいただくのが、つるばみ舎スタイル。このクリーム、ゴロゴロ果物が入っていてとにかくフルーティーで、ホットケーキのトッピングとしても実は人気。
パンケーキとホットケーキの違いというと諸説あるけれど(違わない説まで)、ここでは、分厚くて表面がカリッと弾力ある、甘い生地を楽しむのがホットケーキ。パンケーキは発酵バターミルク入りで薄くて、表面までフワフワもっちり。どちらも同じ銅板で焼くのだけど、配合だけでなく銅板の温度ももちろん変えて。ホットケーキより高温でさっと焼いて、やわらかな食感を叶えていく。
つるばみ舎になってからの新作、フルーツサンドも忘れずに。キウイ、バナナ、パイナップル、黄桃に、季節のフルーツ(今ならイチジク、もうちょっとしたらイチゴ)を、大胆に厚切りで。生クリームは35%と45%をブレンドした、重すぎず、でもコクがちゃんとある絶妙なバランス。特注のパンに規則正しく挟まれた姿は美しく鮮やかだ。フルーツのみずみずしさと、それを包み込むようなまろやかなクリーム、しっとり柔らかなパン、その全てがとろけるよう!
ホットケーキは季節のトッピングも楽しみ。11月は、りんごキャラメリゼやカボチャシナモンが出ているはず。さらには土日祝のモーニングもスタート。卵料理を合わせたホットケーキや、フレンチトーストみたいに焼いたホットケーキなんてのも出すそう。つい、通ってしまう、日々に寄り添うホットケーキがここにある。
text / chico photo / Kayoko Aoki
- ホットケーキ つるばみ舎
- 住所:世田谷区宮坂3-9-4 アルカディア経堂1F
最寄り駅:経堂
まだある!小田急線沿線の注目スイーツショップ
齋藤由季シェフのお菓子は、骨太でクラシックなフランス菓子ながら、女性らしい繊細な感覚が息づく。全体がマリアージュしながら、各素材の味が力強いのも魅力。7層が重なる「ソフィ」なら、ほんのりビターにまとめた味わいのなかでショコラやグレープフルーツが鮮やかに香り、フレッシュな余韻が続く。
- Patisserie PARTAGE(パティスリー・パクタージュ)
- 東京都町田市玉川学園2-18-22
最寄り駅:玉川学園前
千歳烏山の人気パティスリー「ユウササゲ」の2店目は小さなおやつ焼き菓子専門店。カステラやマフィンにドーナツまで、捧雄介シェフがフランス菓子の手法で仕上げた、繊細なおやつ焼き菓子が所狭しと。本店で出している生菓子の一部も楽しめる。
- BeBe de la Patisserie Yu Sasage(ベベ ドゥ ラ パティスリー ユウササゲ)
- 住所:東京都世田谷区砧6-14-12
最寄り駅:祖師ヶ谷大蔵
フランス政府から国家功労章と教育功労章を授与されている、フレデリック マドレーヌシェフ。日本の青リンゴを使ったムースをフランス国土を表す六角形に仕上げた「ポミエ」は日仏を繋ぐよう。犬や干支をモチーフにした、愛らしいエクレールも人気。
- Patisserie Le Pommier(パティスリー ル・ポミエ)
- 住所:東京都世田谷区北沢4-25-11
最寄り駅:東北沢
- 【Vol.1】カカオを香りごと“かじる”感覚!? ひと味違うBean to bar専門店「Minimal」
- 【Vol.2】パリの老舗店「ベッジュマン & バートン」の香り立つ紅茶スイーツ。
- 【Vol.3】新生「ル ショコラ ドゥ アッシュ」でひもとく、カカオの発酵・熟成。
- 【Vol.4】「ドミニクアンセルベーカリートウキョウ」で味わう近未来スイーツ!?
- 【Vol.5】「メゾン・ダーニ」でほおばる、バスク仕込みのガトーバスク。
- 【Vol.6】『アヴランシュ・ゲネー』いよいよ始動、あの実力派シェフの新天地へ。
- 【Vol.7】『ローラズ・カップケーキ東京』でときめく、イギリス発おしゃれカップケーキ。
- 本記事内の情報に関して
-
※本記事内の情報は2015年11月05日時点のものです。掲載情報は現在と異なる場合がありますので、事前にご確認ください。
※本記事中の金額表示は、税抜表記のないものはすべて税込です。