連載 清水美穂子のBread+something good in Tokyo

ブリュッセル、ニューヨーク、パリ、東京。「ル・パン・コティディアン」が提案する日々の糧。

タルティーヌって何?

フランス語圏の人に尋ねたなら、バゲットを上下半分に切って、バターやジャムやハチミツを塗ったものだよ、と教えてくれるだろう。

そもそもタルティーヌというのは「塗る」を意味する”tartiner(タルティネ)”ということばから来ている。それはとくにお洒落な食べものでもなんでもなく、日々のごく普通の朝食として存在する、ということも。

でも、東京のカフェやレストランのタルティーヌは、それとはちょっと違うかもしれない。

おそらく、ル・パン・コティディアンのような店の出現によって、タルティーヌは近年、ただのジャムつきパンにとどまらず、趣向を凝らした食材をのせたオープンサンドまで含むようになってきているから。

ル・パン・コティディアンは1990年、ベルギーの料理人、アラン・クモンさんが創業した。

「何かおいしいものが食べられるベーカリー」として、小さな店内には大きなテーブルがひとつ設けられた。その店が今では世界17ヶ国220軒以上で愛されている。

芝公園の店は日本第一号店で、日々のパンを焼くひろびろとした厨房がガラス越しに見える。ここはレストランである前に、ベーカリーというアイデンティティを持つ。


タルティーヌは現在6種類ほどある。土台となるのは「ウィートパン」と呼ばれるパンで、世界のル・パン・コティディアン共通、オーガニックの全粒粉入りのカンパーニュだ。

粗野な表情の茶色のパンが、ソースやペーストによって、食材と美しく結合している。

「シュリンプ&アボカドタルティーヌ」はレモンをキュっと絞って食べる。レモネードと合わせるといっそう爽やかなテイストになる。

チキン、ベーコン、卵、アボカドなど盛りだくさんな「チキンクラブタルティーヌ」は一度にいろいろ食べられるので、食いしん坊向き。

動物性の食材を使用しない「デトックスタルティーヌ」はフムス(ヒヨコ豆のペースト)、チアシード、ゴマペーストと野菜で構成されている。美容と健康に乾杯!な一皿だ。

「タルティーヌはスシのようなものです」アランさんは言う。自慢のカンパーニュはこだわりのシャリで、その上に新鮮なネタをのせるところなど、握り寿司みたいではないか、と。それはナイフもフォークも使わずに、ちょいとつまんで食べてもいいのだ。

朝11時まで限定の「スモークサーモンブレックファースト」のプレートには自分で”タルティネ”する楽しみがある。カンパーニュにリコッタチーズとサーモンをのせてパクッと食べればスシ感を体感できるだろう。

バゲットにはチョコレートやヘーゼルナッツのペースト、各種ジャム(すべてオーガニック)から好きなものを選んで”タルティネ”する。これはアランさん言うところの、平日の朝のシンプルなタルティーヌだ。


窓の外には目の覚めるような緑。東京にいることを忘れてしまいそうになるが、その向こうには東京タワーがそびえ立つ。ル・パン・コティディアンは芝公園のほか、オペラシティ、表参道、日比谷、東小金井、代官山の6店舗を展開している。


text&photo / Mihoko Shimizu

SHOP DATA

ル・パン・コティディアン
住所:東京都港区芝公園3-3-1
最寄り駅:御成門

他にもおすすめ!タルティーヌが美味しいパン屋さん

作り手の顔が見える旬の素材を活かした料理と国産小麦のパンを提供するエアリーで心地のいい空間。「スモーキーフムスとアボカドのタルティーヌ」はカンパーニュにスパイシーなレンズ豆のフムスが新鮮でヘルシー。

ガーデンハウスクラフツ
住所:東京都渋谷区代官山町13-1 ログロード代官山5号棟
最寄り駅:代官山

ル・プチメックが運営するカフェテリア。ニース風サラダをのせた「タルティーヌ ニソワーズ」や店内で作るローストビーフに葉野菜フンワリの「タルティーヌ ローストビーフ フルムダンベールのソース」がおすすめ。

レフェクトワール
住所:東京都渋谷区神宮前6-25-10 3F
最寄り駅:明治神宮前〈原宿〉

職人の仕事を感じる上質なパンを五感で愉しめる静謐なカフェ。日替わりのタルティーヌのほか、スライスした冷たいバターをのせたパンのプレート(スープとデリ付き)がおすすめ。一杯ずつ淹れてくれるコーヒーも美味。

サンスエサンス
住所:東京都町田市つくし野1-28-6
最寄り駅:つくし野

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※本記事内の情報は2015年07月16日時点のものです。掲載情報は現在と異なる場合がありますので、事前にご確認ください。
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