リピートせずにはいられない・・・知る人ぞ知る町中華・世田谷「大吉」へ
どんな町にも必ず一軒はある、昔ながらの大衆的な中華料理店。ここ数年、そんな「町中華」がじわじわとブームになっています。
今、なぜ女子が「町中華」に惹かれるのか。町中華を愛する3人の女性とともに個性の光るお店を訪問し、ブームの謎を紐解く連載「シティガールと町中華」。
そのラストを締めくくる第3話はモデルのmiu(みゆ)さん。1日に最高5杯食べたこともあるというラーメン好きとしても知られています。「町中華はラーメンよりも、もっと気軽な存在」と話すmiuさんにその魅力を尋ねました。
訪れたのは、世田谷線世田谷駅近く、世田谷通り沿いにある「上海家庭料理 大吉」。店名の通り、上海家庭料理の専門店。上海料理とは中国料理の中では比較的薄味で、魚介や野菜をたっぷりと使うのが特徴です。
同店でも魚介や野菜を豊富に使ったメニューを中心にそろえ、上海蟹や花ニラ、川七(ツワンチー)など、町中華では珍しい高級食材や中国野菜を扱った本格派メニューも味わえます。
常連さんには芸能人や一流シェフなども名を連ね、「何を食べてもハズレはない」と絶大な信頼を寄せるファンを抱える、知る人ぞ知る名店です。
町中華の楽しみ方(1):お店の味をじわじわと深堀りしていく
————ここ「大吉」さんは、よく来るお店なのだそうですね?
miuさん(以下敬称略):そうなんです。初めて来たのは数年前で、その時は弟と一緒にごはんを食べに来たんですけど、それ以来は昼夜問わず一人でもちょくちょく来ています。最近は来られていなかったから、今日は本当に楽しみで。おなかペッコペコにして来ました!
————では、さっそくメニューを決めちゃいましょうか。今日は何かお目当てのメニューはあるんですか?
miu : 私、このお店の「上海風黒酢酢豚」が大好きなんです。ここへ向かっている途中はそれを食べたいなと思って来たんですけど、メニューを見るとやっぱり悩みますね。えー、どうしよう、どうしよう。
店長 : うちは常時100品以上をそろえているので、どうぞゆっくり選んでください。
miu : え! 多いなとは思っていましたけど100品以上もあるんですか! それは多い! 大吉さんは、メニューが写真付きなのでそこも好きなポイントです。めくる楽しさがありますよね。一人で来たときもずっと見ちゃいます。次は何食べようかなって。
miu : えー、どうしよう。決められない。「春巻」、「五目チャーハン」も美味しいんだよなぁ。
・・・決めました。今日は「かた焼きそば」にします!
ちょっとさっぱりした一品を合わせたいから「シャキシャキのじゃがいもサラダ」に、ずっと前から気になっていた「エビのすり身ライスペーパー揚げ」も。
————無事決まりましたね。いつもメニューはじっくり悩まれる方ですか?
miu : 今日はちょっと時間がかかりましたね(笑)。初めてのお店だとオススメの中からささっと決めちゃうことがほとんどなんですけど、よく行くお店ほど迷うかもしれません。美味しいものを出す店だと知っているからこそ、ほかのメニューが気になっちゃう。
すごい食いしん坊なのがバレる発言ですけど、違う料理にチャレンジしたものの、やっぱりアレが食べたかったなぁとなることもよくあるので(笑)。慎重にリピートメニューと開拓メニューを組み合わせながら、ちょっとずつそのお店の味を掘り下げていく。
その過程も好きなんですよね。好きなメニューが増えると次回はもっと迷っちゃうけど、それはそれで楽しい悩みです。今日は「かた焼きそば」がリピートで、そのほか2品は初挑戦。どれもすごい楽しみ!
町中華の楽しみ方(2):たまにはみんなで大皿を囲み幸せを感じる
miu : 「シャキシャキのじゃがいもサラダ」、いただきます!
ん~、美味しい! 今日は暑くてさっぱりしたものが食べたかったから大正解!シャキシャキ食感が楽しい。
・・・ん、山椒の香りがしますね。これは、ビールが飲みたくなります(笑)。
————お酒のおつまみとしても人気のメニューだそうです。ふだん町中華へ行くときは、お酒も楽しまれることが多いんですか?
miu : 半々くらいかなぁ。町中華は何にも考えずにふらりと行くことが多いので、一人でも誰かと一緒でも昼でも夜でも、飲める日で飲みたくなったら飲むという感じです。
ただ、兄弟とごはんとか、友達3~4人くらいで飲もうというときには、町中華を選ぶことが多いですね。お店選びを任されることも少なくないので、とりあえず好きな町中華を提案してみます。ふだん一人だと食べきれないメニューをここぞとばかりに頼んでみんなで楽しみます(笑)。
だって、中華の大皿がたくさん並ぶ景色ってそれだけで幸せを感じませんか? それをつまみながらチマチマと飲むのが最高なんです!またみんなで大皿を囲める日が早く来るといいなぁ。
町中華の楽しみ方(3):感覚を研ぎ澄まし自分好みの店を見つける
miu : この「エビのすり身ライスペーパー揚げ」、エビ好きなのでかなり前から気になっていたんですけど、ここの春巻が美味しすぎて開拓できずにいました。
んーー! 周りはパリパリで、中はふんわりつるんとした食感。甘くて美味しい。うわ、これもビールが絶対合いそう!これ、中身はエビだけじゃないですよね。
店長 : はい、間違いないです(笑)。中には、エビのすり身に卵を合わせたものに黄ニラを入れて甘みと食感を添えています。
miu : 美味い料理の裏には、必ず細やかな手仕事がありますよね。だから、無性にあの店のあの味が食べたいってなる。ほかでは代わりがきかない。
————いつもお店はどうやって見つけているんですか?
miu : ふだんからめちゃくちゃグルメリサーチをしてますね(笑)。SNSでも検索しますし、グルメサイトも有料会員になって日々チェックしています。
でも結局、最後は直感かな。ネットの情報や評価って参考にはなるけど絶対ではないから。気になるお店があったら実際に自分の目で見て良さそうだなと思ったら入る。お店探しに限らず、なんかいいなとか、そういうシンプルな自分の感覚を見逃さないようにしてます。
miu : 好きな町中華のお店に関しては、リサーチよりも歩いて偶然見つけたお店が多いかもしれません。自分や友達の家の近所だったり、現場近くだったり、おでかけ先だったり、散歩している途中で気になったケース。
大吉さんもそうです。世田谷通りを歩いていたときに、メニューが書かれた蛍光色の紙がパッと目に飛び込んできて、「ここは素通りできないな」とチェックしたのを覚えています。
その後も何度か店の前を通ったときには、いつもお客さんがいるなとか、客層も幅広いなとか、そういうところも見ちゃう。美味しいお店を見つける目は年々養われていますね(笑)。
町中華の楽しみ方(4):いつでもどこでもマイペースに
miu : あ、来たー! 本当これ、芸術ですよね。これだけたくさん具が入っていると、食べる楽しみが増します。
ん~、うま~! 今、一口が大きすぎて自分でびっくりした(笑)。久しぶりで舞い上がってる。ふぅ、美味しすぎる。
————今日はラーメンじゃないんですね?
miu : はい。ラーメンが食べたいときはラーメン屋さんに行くので、町中華ではラーメン以外のものを選ぶようにしてます。いつも頼むような決まったメニューはないんですけど、かた焼きそばのように中華料理店じゃなければ食べられない料理を頼むことが多いかな。
私の中でラーメンは毎回真剣勝負なんです(笑)。開拓もしたいけど、ラーメンってすごい人気の店でも自分好みじゃないことも珍しくない。仕事休みの前日の週1~2回くらいしか行かないので、絶対に失敗は許されない(笑)。
厳選したお店をめがけてでかけて、堪能して、その周辺を散歩して帰る。ラーメンを食べに行くときは、それが1セットのルーチンワークみたいになっています。その全部が楽しいですね。
miu : そろそろ味変しようかな。お酢をかけよう。かた焼きそばってゆっくり落ち着いて食べられるところも好きなんです。パリパリもヤワヤワもどっちも好きだから、麺の食感が徐々に変わってくるのもまた堪らない。
こうやって自分のペースが乱されない町中華は、ラーメン屋さんとは対極に近い位置付けかもしれない。
おなかがすいたから行くとか、気軽にふらりと行ける場所。たとえ家から遠くても、初めてのお店でも、いつもの生活の一部のような感覚で過ごせる。誰でもいつでもどうぞ的な貫禄が、町中華にはあるんですよね。
町中華の楽しみ方(5):その町の文化や歴史を感じる
————好きなものを、最後に残す派ですか?
miu : そうです、バレバレですよね(笑)。名残惜しみながら、最後に幸せ噛み締めたいじゃないですか。
————食べ歩きが好きになったきっかけって何かあるんですか?
miu : 地元のラーメン屋さんでバイトしていたことかな。地元は滋賀なんですけど、滋賀って突出したご当地ラーメンはないけど、ちょっとしたラーメン激戦区なんです。
ラーメン好きって情報をシェアするのが好きな人が多いので、バイトしていると自然と情報が集まってくる。それで食べ歩くようになって。上京したら当たり前だけど、滋賀より選択肢がめっちゃ増えた。行っても行っても行きたいお店が減らないって、うれしすぎる。
ごはんをきっかけに知らない町へ行けるのが楽しくて。上京してからは、時間があるときは遠出して、その町をできる限り歩いてきます。気に入ったら何度も訪れて、通うほどに深く知っていくのが好きなんです。
miu : いろんな町を歩いて思うのは、町中華ってちょっと特別な存在だなということ。町中華は、その町のローカル感を生み出す大きな要素になっていると思うんです。外観やそのお店の方、看板やメニューの文字、料理、味、食器、そこに集う人たち、そういったすべてがその町の雰囲気に影響している。
だから、ちょっとぬるぬるした床や趣きのある店構えだって、その土地で長く続いてきた歴史や文化を感じられるから、むしろ愛おしい。誰でもいつでもの余裕が感じられる“貫禄”は、町と一緒に育ってきたという積み重ねから生まれているのかもしれないですね。
「町中華は私にとって“町の貫禄”を味わえる場所」
————miuさんにとって「町中華」とはどんな存在ですか。
miu : “町の貫禄を味わえる”場所です。正直に言うと「町中華」という言葉にあまりピンときていませんでした。普通にどこにでもあるし、自分の生活にもあまりにも自然に溶け込んでいるから、その言葉で表現したことがなかったんです。
今回、私にとってはそれくらい意識していない当たり前の存在だと認識できたし、どうして好きなのかとちゃんと考えてみたら、自分でも納得のいく答えに行き着きました。
それから、今日、久しぶりに大吉さんにきて、このお店、好きだなとしみじみ思いました。酢豚はちょっと心残りだけど(笑)、今日また新しく好きなメニューが見つかって、店を深堀りできたのはうれしいですね。かた焼きそばもやっぱり美味しかった。
店長 : ありがとうございます。そう言ってもらえてうれしいです。かた焼きそばは、お客さんのリクエストから生まれたメニューなんですよ。昔から出している「中華丼」のあんを揚げた麺にかけてほしいって。すっかり人気メニューになりました。
miu : えー、そうなんだ! そのお客さんって天才!感謝しかないです。そういう歴史を知るともっとお店が好きになります。実は、壁に貼ってある「夏の味 冷やしそば」に途中で気づいて、そちらも気になってます。近いうちに、酢豚と冷やしそば、また食べに来ますね。
上海家庭料理 大吉
所在地:東京都世田谷区世田谷4-7-3
電話番号:03-5450-4557
最寄駅:世田谷/松陰神社前
miu
1996年滋賀県生まれ。ストリートからモードまで幅広くこなし、数々の人気ブランドのビジュアルを務め、モデルから女優まで多岐にわたり活躍中。現在、ファッション雑誌『ViVi』専属モデル。大のラーメン好きとしても知られる。
[Instagram] @_miugram_
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※本記事内の情報は2021年09月01日時点のものです。掲載情報は現在と異なる場合がありますので、事前にご確認ください。
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