ふわふわの「カニ玉丼」を求めて…浅草の名店「十八番」へ

シティガールと町中華


どんな町にも必ず一軒はある、昔ながらの大衆的な中華料理店。ここ数年、そんな「町中華」が若い世代の間でじわじわとブームになっています。

そこでレッツエンジョイ東京では「シティガールと町中華」と題し、町中華を愛する3人の女性とともに、個性の光るお店を訪問。今、なぜ女子が「町中華」に惹かれるのか、全3話の連載で紐解きます。

第1話はモデルの村田倫子さん。グルメコラムも執筆する村田さんは、おしゃれなカフェからディープな呑み屋まで幅広く食べ歩く、自他ともに認める食道楽。中でも町中華は「ガチで大好きなジャンル」と話す村田さんにその魅力を聞いてきました。


シティガールと町中華

シティガールと町中華


訪れたのは、村田さんがかねてより気になっていたという1963年創業の浅草の名店「十八番」。かっぱ橋道具街のすぐそばにあります。

観光地のイメージが強い浅草ですが、町中華の発祥の地とも言われ、実は町中華の宝庫。「十八番」はそんな激戦区の中でも抜きん出た存在で、ランチタイムを過ぎても地元の常連さんやサラリーマンがひっきりなしに訪れます。


町中華の楽しみ方(1):自分の本能を信じる

シティガールと町中華


————さっそくですが、今日は何を食べましょう。ふだん町中華で必ず頼むメニューはありますか?

村田さん(以下敬称略) : 私の場合、町中華は“呑み”に行きたい場所。だから、まずはビールですかね(笑)。とくに初めてのお店では、まず餃子とビールを頼んじゃうことが多いかな。

食べたいメニューは決めていかないことがほとんど。町中華ってこういう壁に貼られたメニューがたまらないし、その店のオリジナリティが出ているので、その日その時に目に入ったものでパパッと決めちゃう。目に入るってことは、自分の本能が欲しているってことだと思うんですよね。案外間違いない。それに、じっくり見ちゃうと全部気になってきちゃうじゃないですか(笑)。


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村田 : ただ、今日はこれです。(壁に貼ってある雑誌記事を指して)私が十八番さんに来たかったのは、この「カニ玉丼」を食べたかったからなんです。

町中華ってチャーハンとか餃子ばかりが注目されがちだけど、そこで「カニ玉丼」を推してるってなんか良いなと思ったんですよね。だから、今日は珍しくメニューを決めてきたパターン。楽しみです。


町中華の楽しみ方(2):お酒は料理に合うものを選ぶ

シティガールと町中華


村田 : ほかには「酸辣湯麺」とか「ぶためし」も気になるけど・・・え、あの「カッパばしわり」って何ですか?カッパの絵かわいい!(笑)

料理長 : キュウリを入れた焼酎の水割りです。キュウリだけど、ほんのりメロンの味がします。さっぱりしているので何にでも合いますが、餃子に合うと思いますよ。

村田 : それは美味しそう。よし、決めました!「カッパばしわり」と「おつまみ3点セット」。それと「餃子」にシメは「カニ玉丼」にします。絶対これ食べ過ぎですよね。でも念願だし。うん、決定!

————今日はビールじゃないんですね。

村田 : ふふ(笑)、そうですね。お酒も料理もどっちも楽しみたいんです。だから料理に合ったお酒を飲みたい。ふだん町中華では料理に合うビールを頼むことが多いけど、お店のオススメがあればトライします。そのお酒がどのメニューに合うかもお店の方にちゃんと聞きますね。


シティガールと町中華


村田 : ん~、これ美味しい~!(厨房に顔を向けて小声で)すごく美味しいです!夏にゴクゴク飲みたい感じ。確かにほんのりメロンみたいな味がします。


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村田 : この焼豚、すごいしっとりしてる。このおつまみセット最高すぎませんか。町中華って、実はおつまみ系が充実しているところも好きなんです。味もコスパも最高。ハズレがないんですよね。


シティガールと町中華


————呑み歩きの連載もされていますが、普段はどのくらいのペースで呑みに行きますか?

村田 : コロナ前は週2~3回くらいのペースで行っていました。友達とも行くし、一人でも。お酒が大好きなので、休みの前の日なんかは絶対呑みに行きたい。

コロナ禍になってからは全然行けていません。こういう時期だからしょうがないんですけど、お店で呑めないというのは正直さみしいですね。私、自宅では呑まないんです。人のいるところで呑みたい。

だから、町中華は呑みたい場所ではあるんですけど、最近はごはん目的で行くことが増えました。せめて美味しいものを食べたい。でも、行くと美味しいからやっぱり呑みたくなっちゃう。そのループ(笑)。

昔からごちゃっとしている大衆的なお店が好きなので、早くそういうところでみんなが気兼ねなく呑める日が来てほしいですね。


町中華の楽しみ方(3):マイ定番メニューで店の個性を知る

シティガールと町中華

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村田 : 十八番さんの餃子、皮が肉厚ですごい好み。中のあんもとっても美味しい。美味しさがぶわ~って広がって甘みが残るのがたまらないです。

料理長 : ありがとうございます。皮は特注で、中のあんは肉と野菜が1:3。それにラードを練りこんでます。うま味が広がるのはラードの力だと思います。

村田 : 細部までこだわっているんですね、 美味しいわけだ。

私にとって餃子はお店の個性を知るためのメニュー。餃子は皮、焼き方、具材、タレと推しどころがたくさんあるから、お店のこだわりがすごく出やすい。お店によって全然違うから、とにかく楽しいんですよね。


シティガールと町中華


————町中華は決まったお店に行くことが多いですか?

村田 : 近所はいつも同じお店で、誰かと一緒に行く場合は人によって固定のお店だったり、新しいお店を開拓したり。

仕事柄、現場が毎日違うことも多いから、その行き帰りに町歩きすることが日々の楽しみなんですけど、町中華って何にもない住宅街とかにもいきなり現れたりするじゃないですか。RPGで薬草発見したみたいな気持ちになりますね。やったー!って。もしその時に入れなくても、ちゃんとメモしてストックしておいて後でまた行ったりします。

町中華に限らず、良いお店ってなんか醸してません?味わいが漏れちゃっているというか、通りすがれない雰囲気がある。つい立ち止まっちゃう。

昔から一人飯には抵抗なかったんですけど、私の場合は一人飯=町中華一択。ごはんに集中できる。おしゃれなカフェとかだと女子がたくさんいたりするから逆に緊張しちゃう。一人だからこそ町中華なんです。


町中華の楽しみ方(4):心地よい距離感に身を委ねる

シティガールと町中華


村田 : (カンカンカン・・・と中華鍋を振るう小気味良い音を聞きながら)良い音がしますね。声のかけやすさだけでなく、何より厨房の仕事を最前列で独り占めできるので、一人の時は必ずカウンター席に座っています。

————今日もお店の方とお話されていますが、ふだんもコミュニケーションは積極的に取る方ですか?

村田 : そうですね。初めてのお店ならとくに、オススメとかすぐに聞いちゃう方です。町中華のお店の方ってみんなやさしい。だいたい『うち来たらこれだね』とか教えてくださる。

よく行く町中華もぶっきらぼうなおじいちゃんが店主さんなんですけど、いつもちょっと怒っているように見える感じの(笑)。でも、話すとすごくやさしい。いっぱい会話するわけでもなくて言葉も少ないんですけど、いて良いよって言われているような気持ちになる。居心地が良いんです。


シティガールと町中華

シティガールと町中華


村田 : 私が町中華に行く一番の理由は、そういう人との距離感が心地よいからなんだと思います。人と人との距離がはじめから近い。心の垣根みたいなものが低いというか。かといってぐいぐいも来ない。

良い意味で“来るものは拒まず”感がちょうど良い。初めてでもスッと懐に迎え入れてくれるんですよ。町中華に入ったら自然とその町の住人になれるような感覚。町中華は私にとって実家のような場所なのかもしれません。その町の拠点というか。

町中華が長く愛されているのも、たくさんの人にとって憩いの場所だからなんだろうな。いつでも受け入れてくれる場所。誰に対しても扉が開いている。そろそろ顔見に帰ろうかな、みたいになる感覚も実家に近い。


町中華の楽しみ方(5):ただ、無心で味わう

シティガールと町中華


————ついにお目当ての「カニ玉丼」とご対面ですね。

村田 : これが念願の!ひゃ~ツヤツヤ!すごいきれい。レンゲ入れるの、ちょっと緊張する。・・・ちょっとこれ、フワッフワ!!あぁだめだ。うれしくて顔がにやける。いただきます!


シティガールと町中華

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村田 : ふぅ、美味しい・・・。美味しいもの食べている時って無心になりませんか。言語が必要なくなる。あるのは美味しいっていう感覚だけ。仕事の時は伝えなくちゃいけないから頑張って言葉にしますけど(笑)本当は何も考えずに味わいたい。

————そんな言葉を聞いてからで恐縮ですが(笑)念願の「カニ玉丼」いかがですか。

村田 : (笑)。もう、めちゃくちゃに美味しいです。ごはんとカニ玉とあんの味のバランスが絶妙ですね。黄金比!すごくシンプルなのでするっと食べちゃうけど、このカニ玉がものすごく美味しい。あんのやさしい醤油味の後に、口の中にカニ玉の美味しさがじゅわ~って広がります。


シティガールと町中華


村田 : 本当に数年越しの念願叶って味わえたのでうれしいです。かなり期待値が高かったのに、想像よりはるかに美味しくておなかも胸もいっぱい!もっと早く来ればよかったな。


「町中華は私にとって実家のような場所」。

シティガールと町中華


————村田さんにとって“町中華”とはどんな存在ですか。

村田 : “私の胃袋の実家”です。町中華は私にとって実家のような場所。たまに帰ると安心するし、気負わずいつでもふらりと行けて居心地も良い。ちょっと元気をもらいに行く場所でもあるかな。今日も浅草に新たな実家ができたと思っています。


シティガールと町中華


村田 : 町中華って良い意味で雑なところがあって、私はもちろんそこも含めて好きなんですけど、十八番さんは隅々までこだわりがあって、どのメニューもすごく丁寧に作られている。とても緻密。

「町中華なのに」と言ったら失礼かもしれないけれど、そのギャップの大きさが魅力。こうなるとほかのメニューも俄然気になってきちゃいますよね。家のそばにあったらガチで毎日来ちゃう。とりあえず「酸辣湯麺」と「ぶためし」は絶対に食べたいので、近いうちにまたお邪魔します!


十八番
所在地:東京都台東区西浅草2-18-7
電話番号:03-3844-0108
最寄駅:浅草/田原町



   

村田倫子

雑誌をはじめ、WEBメディア・ラジオ・広告・ファッションショーなど幅広く活動中。グルメに関するコラム連載を行っているほか、2020年からは自身のブランド「idem」を立ち上げた。

[Twitter] @rink0_
[Instagram] @rinco1023



取材・文/君島有紀
撮影/土佐麻理子

※2021年7月7日時点の情報です。掲載情報は現在と異なる場合がありますので、事前にご確認ください。
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