月島でもんじゃよりも長屋探索&下見デート
♥東京近郊に住んでいて月島を知っているなら、月島と言えば何ですか? という問いに、9割以上の人が「もんじゃ焼き」と答えるに違いない。
うん。私ももんじゃ焼きは好きだ。月島に行って食べるもんじゃ焼きは特に好きだ。そこに異論はないさ。
しかし私は月島で、単にもんじゃ焼きを食べるだけのデートなんかしたくない。私はここに住む覚悟で来たい。つまり新居を探しに来たい! 彼氏(妄想)といっしょにね! 一緒に住む長屋を探しに来たい!
♥「月島の長屋に住みたい」なんてことで私と盛り上がれるような彼氏の仕事は、きっと職人だ。職場は家と別だけど、自転車で通える距離にある。橋を渡った鉄砲洲のあたりの、表具屋だよ。
彼は東京郊外の出身だけど江戸っ子気質に憧れていて、縁あってその表具屋に入り、江戸弁丸出しの師匠(と書いてオヤジと読む)に日々怒鳴られたりしながら表具職人として技を磨いてきたのだ。師匠は跡継ぎに恵まれなかったので、私の彼氏は師匠にとっては息子同然。彼もときどきウザがりながらも、師匠を実の父親同然に慕い、尊敬している。
そんな彼だから、もちろん下町風情の残る場所が大好き。今も月島で一人暮らしをしています。私はここから地下鉄で20分くらいの所に住んでいるけれど、いよいよ同棲しようかという話が出てきて、だったら月島の古い長屋を借りようという話になったのです。
だから私たちは休みの日にいそいそと月島の不動産屋に通い、空いてる長屋物件を探して見せてもらうのだ。そして、ふたりで中に入っては、この物件はいまいちかなぁ、いやここをこうすれば広くなるよ、などとあーだこーだ言い合うのだ。
♥帰りにはもちろんもんじゃ焼きを食べてから解散。
早く同居もしたいけど、もし家が決まっちゃったらそれもちょっとつまらない。決めようとしてる過程が楽しいんだよね。いっそのこと結婚しちゃって家を買っちゃえば、堂々と改装もできるしいいよねえ……でもまだそれは時期が早すぎるかな……なんて将来を考えても所詮妄想じゃねーか! だからこのへんでおわり!
ちなみにこれを書くにあたってほんとに長屋物件を検索したけど、やっぱり月島はいいのがホントたくさんある!
能町 みね子さん
文筆業兼イラストレーター。「オカマだけどOLやってます。」でデビューし、近刊に「『能町みね子のときめきデートスポット』、略して 能スポ」(講談社文庫)「ときめかない日記」(幻冬舎文庫)など。「久保みねヒャダ こじらせナイト」にも出演中。 https://twitter.com/nmcmnc
※この記事は、レッツエンジョイ東京のフリーペーパー「東京トレンドランキング」2012年10月号(9/20発行)に掲載されたものです。
>>能町みね子の東京妄想デート 連載記事一覧
- 本記事内の情報に関して
-
※本記事内の情報は2015年12月17日時点のものです。掲載情報は現在と異なる場合がありますので、事前にご確認ください。
※本記事中の金額表示は、税抜表記のないものはすべて税込です。