アメリカを代表する絵本作家エリック・カールの回顧展が開催されます。
ページごとに紙のサイズが変わり、あおむしの食べた跡が穴で表現されている絵本『はらぺこあおむし』は、現在でも世界中で愛されています。技術的に難しい印刷・製本は、アメリカでの初版時、実は日本の会社が印刷・製本を引き受け、世に出ることになりました。そこから7年、忘れがたい美しい翻訳によって、日本語版が出版されます。本展は『はらぺこあおむし』日本語版50周年を記念して、アメリカ・マサチューセッツ州にあるエリック・カール絵本美術館とともに開催されます。
『はらぺこあおむし』(1969年)や『パパ、お月さまとって!』(1986年)、『10このちいさなおもちゃのあひる』(2005年)など27冊の絵本の原画にあわせ、最初の構想段階で作られるダミーブック、コラージュに使用する素材(色や模様をつけた紙)など、約180点が展示されます。絵本は、こども一人ひとりの手に直接届けるために作られた小さなアートです。その宝物のような絵本を生み出すには、美しい原画だけではなく、それを絵本という形に落とし込むブックデザインの技術が必要になります。色鮮やかで光あふれる美しい原画は、自然豊かな環境でのびのびと育った幼年時代の思い出、そしてデザインの技術は、グラフィックデザイナーとして活躍してきた経験によるものでしょう。本展は、絵本作家エリック・カールのデザイナーとしての側面にも光をあてます。カールの絵本を今まさに楽しんでいるこどもだけではなく、デザインに関心のある大人にも、改めてこの絵本作家の魅力を紹介します。
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<編集部の体験コメント>
色彩豊かでかわいらしいエリック・カールの世界観を思う存分楽しめました!
本展では原画や絵コンテとなるダミーブックなどがたくさん展示されているのですが、原画ならではの色の滲みや紙の質感などを見ることができて、制作過程を覗き見ている気分でした♪
小さい頃はただただ絵本の色や仕掛けを楽しんでいましたが、改めて見てみると子ども目線に立ったエリック・カールの創意工夫がたくさんあって感動!エリック・カールの作品が世代を超えて愛され続けている理由を実感できる、心温まる展示でした♪
展示室内は基本的に撮影NGなのですが、一部撮影OKのフォトスポットもあるのでお見逃しなく!
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【見どころ】
◆『はらぺこあおむし』全ページが集結!
2026年に日本語版50周年を迎え、今なお世界中で愛される『はらぺこあおむし』。全ページの原画のほか、『はらぺこあおむし』誕生のきっかけとなったダミーブック「みみずのウィリーのいっしゅうかん」、世界中で65言語以上に翻訳されている他言語の『はらぺこあおむし』も紹介し、『はらぺこあおむし』を深掘りします。
◆日本初公開!『いちばんのなかよしさん』の原画を展示
エリック・カールの絵本には、カール自身の思い出による物語が多くあります。アメリカに生まれた彼は、6歳の時に両親の故郷であるドイツに移住します。仲良しの友達に会えなくなってしまった悲しい経験は、川を泳いで渡り、野を越え山を越えて友達に会いにいく『いちばんのなかよしさん』という絵本になりました。
◆グラフィックデザイナーとしてのエリック・カール
エリック・カールはドイツでグラフィックデザインを学び、卒業後はファッション誌のアートディレクターになりました。1952年にニューヨークへ戻り、ニューヨーク・タイムズ紙のデザイナーとなった後、広告代理店のアートディレクター、そしてフリーランスのデザイナーとして活躍します。グラフィックデザイナー時代のポスター作品や、日本では出版されていない、画風の違う絵本なども展示されます。
◆国内展示過去最多!ダミーブックが12点
エリック・カールは絵本を作る時に、まず、物語の流れや構図、デザインのアイデアを練るために「ダミーブック」という絵コンテのようなものを作ります。最終版とは違う物語や異なる構図もあり、試行錯誤のプロセスがよく分かります。本展では、これまで日本で開催されたエリック・カール展では最も多い、12点のダミーブックが展示されます。
◆絵本コーナーや特設ショップも!
エリック・カールの絵本の魅力は、原画の美しさだけではなく、ページをめくりたくなるしかけや、めくった時の驚きなどにもあります。そのブックデザインを体験するために、展示室とは別に、自由に絵本を閲覧できるコーナーが設けられます。特設ショップには会場限定の展覧会オリジナルグッズも多数用意されています。展覧会の思い出をお持ち帰りください。
〇1章:はらぺこあおむしの誕生
エリック・カールの代表作である『はらぺこあおむし』(1969年)は、グラフィックデザイナーだったカールが、自分で文章を書いた最初の絵本でした。小さなあおむしが、さまざまなものを食べて(おなかも痛くなるけれど)大きくなり、最後に美しいちょうちょになるこの絵本を、カールは「大人になることの希望の物語だ」と語っています。この章では、続いて『くもさん おへんじどうしたの』(1984年)、『だんまりこおろぎ』(1990年)、『さびしがりやのほたる』(1995年)、『パッチン!とんで コメツキくん』(1999年)の4冊を紹介します。これらの絵本は、すべて英語のタイトルが「The Very」からはじまっており、『はらぺこあおむし』とあわせて五重奏となるように作られた、虫が主人公のシリーズです。
〇2章:思い出を絵本に
この章では、エリック・カールが絵本作家になるまでの人生をたどります。1929年にアメリカに生まれたカールは、6歳の時に両親の故郷であるドイツに移住します。友人との別れや、言語の違い。そして明るく自由に過ごしていたアメリカでの幼児期から、戦時に向けて街が色彩を失い、学校教育も規律に厳しいドイツへの移住は、彼の少年時代に暗い影を落としました。そんな中、彼の美術の才能を見いだした学校の美術の先生がこっそり見せてくれたのは、当時「退廃芸術」として弾圧されていたピカソやクレー、マティスなどの絵の複製でした。その色彩の鮮やかさに衝撃をうけた経験が、彼のアーティストとしての原点となりました。その後、シュトゥットガルト州立芸術アカデミーに入学し、グラフィックデザインを学びます。1952年にニューヨークに戻り、当時グラフィックデザイナーとして活躍していたレオ・レオーニとの出会いから、デザイナーとして順調にキャリアを積んでいきます。しかし『くまさん くまさん なに みてるの?』(1967年)がきっかけとなり、絵本作りに情熱を見いだすようになるのです。カールの絵本は、物語にあわせて、時間の経過や、数の概念、物の名前などをやさしくこどもに伝えます。家を離れて学校に通い始めるということは、こどもにとって大きな変化であり、時に痛みをともないます。彼は一人ひとりのこどもに寄り添い、家の世界から学校の世界をつなぐ「かけはし」としての絵本を描き続けました。
〇3章:遊べる本、読めるおもちゃ
エリック・カールの絵本の魅力は、絵の美しさや物語だけではなく、読者が絵本の世界に入り込むための「しかけ」にあります。小さい読者のために、「遊べる本でもあり、読めるおもちゃでもある絵本」を目指していたのです。そのため、グラフィックデザイナーとしての経験は、絵本作りに大いに役立ちました。『たんじょうびのふしぎなてがみ』(1971年)は、丸い大きな穴が開いていたり、階段状になっていたりするページの形自体が、プレゼントを見つけるための不思議な手紙を読み解くヒントです。『ごちゃまぜカメレオン』(1984年)は、こどもたちのリクエストに応えてごちゃまぜの動物を描く遊びが元になっています。ページの端にタブ(見出し)がついていて、それぞれのページでカメレオンが何の動物になろうとしたかが分かります。『とうさんはタツノオトシゴ』(2004年)では、海藻だけが透明シートに印刷されており、それをめくって、海藻に擬態している魚を探します。『できるかな? あたまからつまさきまで』(1997年)は、一緒に体を動かして楽しみながら読む本です。その他にも、さまざまな遊べる工夫がされた絵本をご覧ください。フリップブックやポップアップなど、現在では一般的になったしかけも、カールが使用した当時はまだ珍しく、とても喜ばれました。
〇4章:エリック・カールのアトリエ
展覧会の締めくくりとなる章では、エリック・カールと日本との関わりを紹介します。カールの絵本は、1970年に『1, 2, 3 どうぶつえんへ』(1968年)で、はじめて日本に紹介されました。その後『はらぺこあおむし』で人気を博したカールは、1985年の絵本原画展にあわせて初来日し、講演などを積極的に行いました。日本を愛した彼は、その後も2017年までに何度も来日しています。日本での体験のうち、とりわけ大きな影響を彼に与えたのは、たくさんの絵本専門の美術館を見て回ったことでした。それはやがて、2002年に開館するエリック・カール絵本美術館に結実します。「絵本」をこどもがはじめて出会うアートと位置づけ、世界中の絵本作家の作品を収集する、アメリカで最初の絵本美術館となりました。続くコーナーでは、彼のアトリエでの様子を伝えます。最後の絵本となった『ありえない!』(2015年)は、一見して愉快なナンセンス絵本ですが、ありえない世界を思い描くことができる人間の想像力へのラブレターとも思えます。アトリエにそのまま残されている、コラージュに使用する薄紙や画材、制作する時に着用していたスモックや靴からは、2021年に亡くなる直前まで作品を作っていたというアーティストの気配が伝わってくるようです。一人ひとりのこどものために、絵本を届けたい。その願いが形になったのは、このカールのアトリエなのです。
※内容の詳細は公式サイトをご確認ください。
開催場所・
最寄駅
東京都現代美術館
清澄白河駅(徒歩9分)
所在地
〒135-0022
東京都江東区三好4-1-1
MAP
会場
東京都現代美術館 企画展示室 1F/3F
開催期間
2026/04/25(土) ~ 2026/07/26(日)
休館日:月曜日(5月4日と7月20日をのぞく)、5月7日、7月21日
時間
開始 10:00 / 終了 18:00(展示室入場は閉館の30分前まで)
料金・費用
観覧料:一般 2,300円/大学生・専門学校生・65歳以上 1,600円/中高生 1,000円/小学生以下無料
・本展チケットでMOTコレクションも観覧することができます。
・小学生以下のお客様は保護者の同伴が必要です。
・チケットはオンラインでの事前の購入をおすすめします。
問い合わせ
代表
03-5245-4111
公式サイト
※掲載内容が変更となっている場合があります。最新情報については、会場・主催者の公式サイト等でご確認ください。
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