おだやかな陽気が続くと、どこかに出かけてみたくなるもの。せっかくの休みだけど、宿泊をともなう外出はまだ控えたほうが良いのでは、という人にオススメなのが日帰りハイキング。


今回ご紹介する5座は、マイカーでも公共交通機関でも登山口まで行くことができ、登山口と山頂を6時間程度で往復できる、初心者向け山を選びました。

【東京・神奈川】大人気の高尾山の隣にある、静かなハイキングが楽しめる穴場の山/草戸山

▲草戸峠から高尾山を望む/写真提供・町田市

▲草戸峠から高尾山を望む/写真提供・町田市

京王線高尾山口駅に着くと、いつ行っても高尾山に向かう観光客でごった返しています。私としてはこの浮かれた雰囲気が少し苦手なのですが、超人気山・高尾山のすぐ近くに、日帰りハイキングにオススメの低山「草戸山(くさとやま/364m)」があるのをご存じでしょうか。


草戸山は、高尾山の南側の山稜にあり、高尾山のある八王子市と、町田市、相模原市の境界に位置しています。草戸山までの登山道を歩いているとときどき高尾山方面が木の間から見えるのですが、大混雑しているであろう高尾山を横目に、こちらの登山道は本当に静か。


自分たちと同じように静かなハイキングを楽しみたい登山者(トレイルランナーも少し)がほとんどなので、自分のペースで山登りを楽しむことができる山です。

▲草戸山山頂から八王子方面を望む/写真提供・町田市

▲草戸山山頂から八王子方面を望む/写真提供・町田市

高尾山口駅の喧騒を離れ、住宅地を登山道に入るとすぐに急登が始まりますが、四辻と呼ばれる分岐点から草戸峠までは緩やかな登りをのんびり歩いていきます。


危険個所はなく、一本道なので迷う心配もほとんどありません。小学校低学年の息子と来たことがありますが往生することはなく、むしろスリルが好きな子どもには物足りないくらいでした。

▲草戸山山頂にある「松見平休憩所」/写真提供・町田市

▲草戸山山頂にある「松見平休憩所」/写真提供・町田市

草戸山の山頂には「松見平休憩所」(※2024年4月現在、使用できません)と呼ばれるあずま屋があります。相模原市街方面の展望が開けており、ベンチもあるので、ここで眺めを楽しみながらランチをするのも良いでしょう。


ちなみに私は、いつもここで長めの休憩をとることにしています。ガスバーナーとクッカー、食材を持参し簡単なランチを作る「山ごはん」の味は格別ですよ。


下山は来た道を帰るのがオススメです。往路では、喧騒を逃れるために駅前を足早に通り過ぎましたが、下山後は駅前の食事処やお土産屋に立ち寄っておでかけ気分を満喫するのが良いでしょう。


また、町田市側に下る道もあり、遠足やキャンプスポットとしても知られる「Nature Factory 東京町田(旧:大地沢青少年センター)」を過ぎて約15分、バス停「ネイチャーファクトリー東京町田」からはJR橋本駅行きのバスに乗れます。

草戸山
  • 所在地

    東京都町田市相原町、東京都八王子市南浅川町、神奈川県相模原市

  • 最寄駅

    高尾山口

草戸山周辺の立ち寄りスポット

1.高尾山口駅周辺


駅前には日帰り温泉「京王高尾温泉 極楽湯」があるほか、高尾周辺の自然・文化に関する展示がある「TAKAO 599 museum」など観光施設が充実しています。お土産屋や食事処も多数あるので、下山後にいろいろ立ち寄ってみてはいかがでしょうか。


2.高尾の蕎麦


高尾山といえば蕎麦、らしいです。以前、取材で高尾山を歩いた下山後に私が立ち寄ったのは「高橋家」という蕎麦屋さん。店内に柿の木が生えていて天井の穴から屋根の上まで伸びている不思議なお店です。特に調べずに入ったのですが、とろろ蕎麦が美味しかったです。

【東京・西多摩】都心からわずか90分なのに、豊かな自然に囲まれた名低山/浅間嶺

▲浅間尾根から見た御前山方面/写真提供・檜原村観光協会

▲浅間尾根から見た御前山方面/写真提供・檜原村観光協会

奥多摩には人気の山はたくさんありますが、その中でもオススメなのが「浅間嶺(せんげんれい/903m)」です。

▲払沢の滝/写真提供・檜原村観光協会

▲払沢の滝/写真提供・檜原村観光協会

JR武蔵五日市駅からバスで22分ほどで「払沢の滝入口」バス停に到着。払沢の滝(ほっさわのたき)は日本の滝百選に選ばれている、日本を代表する滝の一つです。落差、水量ともに申し分なく、これもまた東京都内にこんな立派な滝があったのかと驚くことでしょう。


払沢の滝はバス停から遊歩道を15分ほど歩いたところにあり、見学後はバス停方向に戻って登山開始となります。都心から2時間ほどでこれほど自然が豊かな山があるのかと思えるくらい、緑に囲まれた登山道を歩きます。まわりの木々は、冬に一度葉を落とし春にまた新芽を出す落葉広葉樹で、4~5月は特に新緑が美しい季節となります。


檜原村の集落から浅間嶺へと続く尾根上の登山道は、武蔵と甲斐をつなぐ古道だったそうです。国と国をつなぐ交易の道であったともに、周辺の集落をつなぐ生活の道でもありました。


また、登山道のところどころにお地蔵様や馬頭観音などがあり、古くから人々に利用されてきた名残を感じることができます。

▲浅間嶺から見た富士山/写真提供・檜原村観光協会

▲浅間嶺から見た富士山/写真提供・檜原村観光協会

浅間嶺の山頂から少し離れたところには広場があり、休憩に適したあずま屋やベンチが設置されています。週末は必ずといっていいほど定番の休憩スポットになっています。


山頂からはさらに東に向けて気持ち良い登山道が続いていますが、来た道を帰るのが安心でしょう。

浅間嶺
  • 所在地

    東京都西多摩郡檜原村

  • 最寄駅

    武蔵五日市

浅間嶺周辺の立ち寄りスポット

武蔵五日市駅前の「東京裏山ベース」


ここでは、エコツアーやガイドツアー、レンタサイクルなど、さまざまなアクティビティを提供してくれます。山登りだと利用しづらいですが、手軽に自然体験したい人にはいろいろ利用できるのではないでしょうか。

所在地:東京都あきる野市舘谷219−7

【神奈川・秦野】丹沢エリアで大人気!富士山展望と「鍋焼きうどん」が魅力/鍋割山

▲鍋割山山頂(11月上旬)/写真提供・秦野市観光協会

▲鍋割山山頂(11月上旬)/写真提供・秦野市観光協会

登山者に人気の丹沢エリアの中で、多くの登山者を集めているのが鍋割山(なべわりやま/1,272m)です。


深田久弥『日本百名山』に選ばれている丹沢山(著作の中の丹沢山は、1つの山というよりは丹沢の山塊を示しているようですが)、ヤビツ峠や大倉バス停などからアクセスしやすい塔ノ岳など、丹沢山には人気の山が多いですが、鍋割山も負けず劣らずたくさんの登山者に歩かれています。

▲鍋割山登山道/写真提供・秦野市観光協会

▲鍋割山登山道/写真提供・秦野市観光協会

登山口から山頂まで3~4時間とある程度の体力が必要で、登山レベルとしては簡単な中級か難しめの初級といったところ。オススメの山に挙げましたが、決して簡単に登れる山ではありません。しかしその長い登りを終え、山頂に立った時に出迎えてくれる素晴らしい景色が、その苦労を忘れさせてくれます。


山頂からの展望は開け、南側には小田原市街越しに相模湾が見え、西側には日本一の山、富士山がドーンとそびえています。海に近く空気中の水分が多いからか、昼間になると空気がモヤモヤしてきて眺めの冴えがなくなってくるので、展望を楽しみたいのであればなるべく早く出発すると良いでしょう。


山頂は、広場のように開けていてランチ休憩するのにもってこい。ベンチがあり眺めも良いので長い時間過ごしていたくなります。

▲秋の鍋割山稜/写真提供・秦野市観光協会

▲秋の鍋割山稜/写真提供・秦野市観光協会

春から初夏にかけては新緑、秋は紅葉など、四季折々の美しい眺めが堪能できます。

  • ▲鍋割山荘/草野さんインタビュー(ヤマケイch)より

    ▲鍋割山荘/草野さんインタビュー(ヤマケイch)より

  • ▲鍋割山荘/草野さんインタビュー(ヤマケイch)より

    ▲鍋割山荘/草野さんインタビュー(ヤマケイch)より

これは人気の理由というわけではありませんが、「鍋割山荘」のご主人である草野延孝(くさの のぶたか)さんは、知る人ぞ知る有名人です。なぜかというと、かつて100kgを超える荷物を背負って山頂にある山小屋まで登ったという記録をもっているすごい人だからです。5年ほど前に取材で一緒に登らせていただいた際にも、大きな荷物を背負子に載せて、ゆっくりと安定した足取りで山頂まで登っていました。


鍋割山の最大の魅力は、なんといっても山頂にある鍋割山荘で食べられる「鍋焼きうどん」。1杯1,500円と都心で食べるおしゃれランチ並みの値段ですが、1,000mを超える山の上で熱々の鍋焼きうどんが食べられる幸せは代えがたいものです。


ただ、問題は大人気ゆえに売り切れになってしまうことが多いのと、注文が多く待ち時間が長いこと。「昼食はこの鍋焼きうどんにするから」と、昼食を自分で持参せずに山頂まで来てみたら品切れ、という事態となったら悲劇です。また長い待ち時間のために下山する時間が遅くなり、登山道の途中で真っ暗に、なんてことにならないように注意しましょう。


>>>草野さんインタビュー(ヤマケイch)(外部サイト) 

鍋割山
  • 所在地

    神奈川県秦野市、足柄上郡松田町・山北町

  • 最寄駅

    渋沢

【埼玉・飯能】近い、簡単、眺め良い!3拍子そろった初心者向けの低山/天覧山・多峯主山

▲天覧山/写真提供:奥むさし飯能観光協会

▲天覧山/写真提供:奥むさし飯能観光協会

飯能駅から歩いてアクセスでき、山頂までの道もきれいに整備されているので、山歩き初心者にオススメしたいのが「天覧山(てんらんざん/197m)」です。


飯能駅から市街地を20分ほど歩くと登山口のある能仁寺に到着。ここから天覧山山頂までも20分ほどで着きます。登山道も途中までは舗装されているので、「がっつり登山をしたい」と思ってキメキメの登山装備で登りに行くと、ちょっと拍子抜けするくらいのお手軽さです。

▲天覧山頂上からの眺め/写真提供
:奥むさし飯能観光協会

▲天覧山頂上からの眺め/写真提供
:奥むさし飯能観光協会

標高が低く、簡単に登れ、麓から見える山容もちょっとした丘という感じですが、山頂からの眺めはとても良く、親子登山で訪れる家族連れもたくさんいます。

▲写真提供:奥むさし飯能観光協会

▲写真提供:奥むさし飯能観光協会

ただ、手軽過ぎて物足りないという面もあるので、そんな人には「多峯主山(とうのすやま/271m)」への縦走を提案します。


多峯主山への道もよく整備され、行き先を示す看板も要所要所に設置されているので迷うことはないでしょう。天覧山から多峯主山への道の途中に、「天覧山入の谷津田」と呼ばれる谷合の湿原があります。こちらはかつては田んぼだったそうで、こんな山奥で稲作が行われていたのかと驚きます。

  • ▲山頂からの眺め/写真提供:奥むさし飯能観光協会

    ▲山頂からの眺め/写真提供:奥むさし飯能観光協会

  • ▲秋の風景/写真提供:奥むさし飯能観光協会

    ▲秋の風景/写真提供:奥むさし飯能観光協会

谷津田があるあたりからは「見返り坂」と呼ばれる、長くダラダラした登り坂が続きます。階段状の道で単調なので山に慣れていないとつらく感じるところです。ただ、この登りが終わるともう山頂はすぐそこ。最後の急登を登り切ると、眺めの良い山頂に到着します。


往路をそのまま戻り下山することも可能ですが、山頂から南に延びる「御嶽八幡神社」方面への道を進んでいくと、バス通りまで下山できます。ここからバスを使えば飯能駅まで戻ることも。

天覧山
  • 所在地

    埼玉県飯能市大字飯能

  • 最寄駅

    飯能

多峯主山
  • 所在地

    埼玉県飯能市大字飯能

  • 最寄駅

    飯能

天覧山・多峯主山周辺の立ち寄りスポット

  • ▲「OH!!! 発酵、健康、食の魔法!!!」外観

    ▲「OH!!! 発酵、健康、食の魔法!!!」外観

  • ▲「OH!!! 発酵、健康、食の魔法!!!」売店

    ▲「OH!!! 発酵、健康、食の魔法!!!」売店

1. OH!!! 発酵、健康、食の魔法!!!


天覧山には何度も登っているのですが、ある年、久しぶりに訪れてみたら登山口周辺にこじゃれたお店がたくさんできていてびっくりしたことがありました。それが発酵のテーマパーク「OH!!! 発酵、健康、食の魔法!!!」です。レストラン、カフェ、ショップなどが隣接しているので、多峯主山へは行かず天覧山だけ登ったら下山し、こちらで食事や買い物をして楽しむのも良いかもしれません。

2.タイムズマート


飯能駅北口すぐにあるソフトクリーム屋。ソフトクリームの種類の多さや美味しさだけでなく、アニメ「ヤマノススメ」の聖地巡礼スポットとして有名です。私が訪れたときはヤマノススメのイラストが描かれたポストカードをいただきました。

所在地:埼玉県飯能市仲町9−1

まとめ

今回は、都心からのアクセスが良く、自然を堪能しながらわりと短時間で登れる山をご紹介しました。山は市街地に比べて気温が低く、天候が変わりやすいため、雨具や防寒着は持って行きましょう。また、帽子、飲み物、非常食(お菓子など)の携帯も忘れずに。山頂で爽快な景色を眺めたり、のんびりと山ごはんを食べたり、大自然や新緑の中でリフレッシュしてみてくださいね。

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本記事内の情報に関して

※本記事内の情報は2024年04月18日時点のものです。掲載情報は現在と異なる場合がありますので、事前にご確認ください。
※本記事は2022年04月21日に公開した内容を一部加筆・修正した上で、2024年04月18日に再公開しております。
※本記事中の金額表示は、税抜表記のないものはすべて税込です。