赤坂駅から徒歩5分ほど、フランス国旗、ネコが描かれた看板、「ネコとワインとパリの食卓」を体現する店構えの「Bistro le chat noir」。店内には、ピカソ、フジタ、コクトー…、そして店名の由来でもあるフランス初のキャバレー「シャノワール」の黒ネコが描かれたポスター(スタンラン作)が大きく壁を飾る。
シェフとマダム、ご夫妻で営むこのお店。19世紀、画家・音楽家・思想家様々な人が集い会話に華を咲かせ、当時の文化を生み出していったパリのカフェ(キャバレー)のような場所にしたいという想いで、つくられたお店だけありエスプリの効いた雰囲気がある。
美味しいお酒に料理。エスプリある空間に、あまりに自然に溶け合う黒ネコ。うちのキジトラだと、見た目にも落ち着きのない性格的にも多分この雰囲気台無しになるだろうと思いつつ、お目当ての看板ネコ ノアにアプローチ。
ワインの箱をベッドに、まどろむノアを軽くひとなで、ふたなで。築地の神社の境内で生まれたその日に保護されたノア。だから保護ネコには珍しく誕生日が判明している。誕生日の6月23日には、常連のノアファンのお客さんが、お祝いに訪れていいワインを注文してくれるなど、水商売のおねえちゃんの生誕祭がごとく、しっかりと集客に貢献してくれているという。
マダム自身認める文字通りの「ネコ可愛がり」で育ったノア。家族のヒエラルキーの中では頂点に君臨する女王様だったが、そこに新たに弟分のネコ(アッシュ♂)が迎え入れられたことで状況が変わる。
「ノアは、それまでは、自分のことを人間だと思っていたと思うんです。そこになんだかわからない存在が来て、1週間くらいは混乱状態で、でも次第に弟分を受け入れていって、自分がネコであることを認識していったんだと思います」とマダム。ある日自宅に帰ると、ノアがアッシュを毛繕いしている場面を見て号泣。いい話だ。
家では、甘えん坊の弟アッシュがマダムを占有してしまうことが多くなった分、かつての3人家族の時間をつくってあげようと、ノアをお店に連れてくることに。そういう意味では、このお店はまさしくノア女王様がシェフとマダムを独占できる我が城というわけだ。
お客さんがいるときは、とてもクールな表情を見せるノアだが、お会計の際には決まって、カウンターに飛び乗り、お客さんを見送るサービスをしてくれる。看板ネコのツンデレ営業のお手本のような振る舞い。後ろ髪の引き方がうまい。
営業中はほとんど鳴かないのに、お客さんが帰ったあとは、急にシェフにニャーニャーお喋り、マダムの膝に乗って撫での要求をする甘々のノア、今日もしっかり働き、しっかり甘える。ネコにとっても、家族にとっても幸せな毎日を送ることに貢献する看板ネコであった。
石井芳征(ネコ偏愛者/クリエイティブディレクター/Cat’s Whiskers編集長)
ライター紹介
ネコ偏愛者・クリエイティブディレクター。ネコを偏愛する5人で「ネコ親戚」と自称し、ネコ新聞やポップアップストアCat’s ISSUEなどで、ネコへの偏愛を普及する活動を行う。
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※本記事内の情報は2017年06月22日時点のものです。掲載情報は現在と異なる場合がありますので、事前にご確認ください。
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